棚橋さんは日々の「投資生活」をブログに綴っていた

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   タイでデイトレーダーをしている日本人男性が行方不明になり、男性と特徴が似ている遺体が発見された。この男性は、海外での投資生活についての指南本を出版する一方、投資状況をブログで細かく公開。一部では「著名ブロガー」としても知られていた。

日本と行き来しながらバンコクに引きこもる「外こもり」

   行方不明になっているのは、岐阜県出身でバンコク在住の棚橋貴秀さん(35)で、 2008年8月5日に自宅アパートを出て以来、連絡が取れない状態が続いている。地元警察の調べでは、棚橋さんの外出40分後、不審な男が棚橋さんの部屋に侵入する様子がアパートの防犯カメラに残されており、部屋には荒らされたあとがあったという。さらに、棚橋さんの銀行口座からは、日本円で13万円あまりが引き出されていた。翌8月6日には、中部アユタヤ県のガソリンスタンドで棚橋さんのものとみられる鍵や腕時計が発見されている。警察では、棚橋さんが何らかの事件に巻き込まれたとみて捜査を進めている。

   一方、8月9日には、中部ナコンラチャシマ県の山中で、バナナの葉で覆われたアジア人男性の遺体が、腐乱した状態で発見されている。バンコクの日本大使館の邦人援護担当者は、8月15日午後の時点で

「発見された遺体については、現在身元を確認中です」

と話しており、捜査当局ではDNA鑑定などで棚橋さんとの関連を調べている。

   実は棚橋さんは、単なる「デイトレーダー」にとどまらず、一部では名前の知れた「ブロガー」でもあった。棚橋さんは10年以上前にタイに渡航し、日本と行き来しながらも海外の都市に引きこもる「外こもり」の生活を続けてきた。「外ごもり」については相当な専門家だったようで、08年7月には、「安田誠」のペンネームで、指南書「外こもりのススメ」(幻冬舎コミックス)を出版。投資で利益を上げながら、タイの割安な物価を活用して生計を立てるノウハウなどを披露していた。

ブログに住所や投資成果の記述

   そのノウハウは、棚橋さん自身のブログでも惜しみなく公開されていた。ブログが開設されたのは04年10月で、最初の書き込みでは

「日本で株をやるより物価の安い国でやったほうが、仮に1万円儲けても、その1万円は日本では1万円ですが、物価の安い国では5万円、10万円の価値があるんです」

と、「外こもり」の意義を説明している。さらに、どの銘柄をいくらで買い、いくらで売ったかを、ひんぱんに細かく記載。それ以外にも、

「1ヶ月の生活費が20分で泡と消えた」

といった、喜怒哀楽も綴られているほか、

「私は10年間観光ビザで住んでいますが、観光らしい観光もしないで住んでいますが、これといってトラブルもなく観光ビザの繰り返しでも住めています。これからも住もうと思えばいつまででもいけそうです」

と、かなりきわどい話まで披露されている。

   このブログは、棚橋さんが行方不明になった8月5日を最後に更新が止まっているのだが、記載されていた内容の「オープンさ」についての問題点を指摘する声もあがっている。

   棚橋さんの著書の奥付にも「協力」として名前を連ねる「ふくちゃん」さんは、バンコクの旅行情報サイト「Traveler's Supportasia」のブログで、「沈没組(「外こもり」の一種)」は「タイ人庶民からしたらずっといい暮らしをしています」とした上で、「いつ、どこで金目当ての事件に巻き込まれても全然おかしくはない」と警告。具体的には、棚橋さんのブログの中に、自らの住所や投資成果(いくら儲かったか)が類推できるような記述があったことを問題視している。

   8月15日になって、各紙が「日本国内の銀行でも、棚橋さんの口座から現金が引き出されていたことが分かった」などと報じている。

   捜査は目下進行中だが、「海外生活でも、自分の生活を事細かにブログで披露してはいけない」というモデルケースに発展する可能性もありそうだ。

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