DREAM.5大特集号となった『ゴング格闘技(9月号)』、海外MMAレポート「BeaconSign」も充実の一言

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格闘技専門誌の老舗「ゴング格闘技」と、スポーツ総合サイトlivedoorスポーツによる海外総合格闘技(以下、MMA)配信サービス「MMA PLANET」の提携が始まった。

この機に実現したゴング格闘技編集長・松山郷、MMA PLANETメインライター・高島学、livedoorスポーツ MMA PLANETディレクター・川頭広卓による座談会。後編となる今回は、ネットと雑誌、その役割を考えた――。
【座談会前編はコチラ



松山「サラッと始めるというのは?」

高島「特別なことじゃない。普通に伝えないといけないことを大仰にすると、それはもう特別なことになってしまう。多くの人の入口となるので、格闘技界はいままでやたらとコアと一般という判別がされてきましたが、PRIDEブーム以前はいうなればK-1以外はすべてコアだった。一般かコアかと問われれば、コアであることが普通だったんです。

格闘技が特に好きな者が専門誌を買っていた世界。今や格闘技ファンや業界の人間こそ、MMA PLANETを見て特別視するかもしれないですが、サッカーファンや野球、芸能からリンクしてくる人たちにとって、これが普通にある情景として捉えてほしかったんです」

松山「サラッと始める、特別なことか大げさなことか、どちらにしようが、まずは自分たちが扱うモノに夢がないと誰もお金を払わないし、そこを目指そうとは思わないですよね。以前、PRIDEを観て選手になろうと思った人が少なからず世界にいたように、日本では、例え地上派に乗らなくても、急速に世界で人気を獲得していて、その最高峰を目指せる舞台が本当にあって、そこで日本人も戦っているという事実は夢がある。その強豪ばかりが集まるリング上で何が起きていたのかさえ、伝えられなかったら日本は取り残されてしまいますよ」

高島「PRIDEがある時代から、僕はUFCを伝える立場だった。『ええもんがある』から伝える。これは基本だと思うんですよね。どうしてもPCから伝わる印象だと、淡白に映ってしまうかもしれない。だからこそ、雑誌はディテールがしっかりと残るから一緒にやれるのは、凄く良いことだと思っていました。例えば、MMA PLANETでやったジュカオンのインタビュー写真にしても、きっと印刷物として手に取ったら、また印象が変わると思うんです。ただ、僕はMMA PLANETとやるというお話をいただいたときに、ネットだから軽く捉えるということだけはしないと肝に銘じていました。伝え方は確かに違うけど、クオリティに差はつけないと」

松山「なるほど。時間的な問題、物理的に取り扱えないモノもありますよね。なので、トキーニョの試合やインタビューがMMA PLANETに載って興味を持って貰えて、雑誌を読んでもらえる。そういう考え方もありますよね」

高島「川頭さん的にMMA PLANETの存在意義を再確認したのは、エディ・アルバレスのちょっとしたブレイクだったんですよね?」

川頭「そうですね。これまでにも日本に来てはいるんですけど、アルバレスが出てきて、周囲が騒いだ時に、MMA PLANETでは既に“カリスマ”というキャッチがついて載っていた。しかも、その大会はEliteXCの人材育成大会ShoXCだったんですね。だから、MMA PLANETのユーザには、彼だけでなく、その大会も含めて伝えることが出来ていたんですね。

何か新しい選手なりイベントが出てきた時に、ユーザが一斉に調べ始める。と、ここでもやっぱり考えるのが、その過程でどんなページが引っ掛かってくるのか?実際には、アルバレスであっても我々からすれば、全然遅かった訳なんですが、“無知の強豪”(前編を参照)をどんどん出す意義を感じました」

松山「そもそも、ネットメディアは、そういうところに存在意義がありましたよね。制限が少なく、網を広くかけることができるという」

川頭「ニッチというか、新しい選手を発掘して、情報の土台を作っておくという。ただ、アルバレスの“カリスマ”は定着しませんでしたね(笑)」

高島「定着を狙ったネーミングをMMA PLANETは必要としないです。あくまでも入口として。あとは、雑誌を作る時、そしてテレビの人がそこを考えていけばいい。そういえばもう、大昔の話ですが、格闘技通信でブラジル通信というページを担当したときに、イゴール・ボフチャンチンを“北の最終兵器”という風に紹介して、そのフレーズは使われていたのに、僕はプロモーションから取材拒否を受けていた(笑)」

松山「うちも(戦極に出場したイ・グァンヒを)“韓国の火の玉ボーイ”ってやったら、見事に外しちゃいましたけど(笑)」

高島「僕らの仕事は、知ってもらうこと。外れたら、外れたことを認めてリポートすればいい。そうでないと、後出しじゃんけんの結果論ありき、上から目線の記事ばかりになってしまいます」