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イノベーションの逆襲/猪熊 篤史

それ自体には善も悪もないイノベーションについて考えてみたい。

ダイナマイトは山を壊してダムを作ったり、トンネルを開通させて交通の発達に貢献したが、戦争の悲惨さを増した。自動車の発明は自由な移動を可能にした反面、大気を汚染し、地球温暖化の原因を作った。インターネットの普及は、人々のコミュニケーションを容易で安価にした一方で、新たな犯罪の可能性を生んだ。

総合的に考えるとイノベーション自体は、社会や人類に貢献しないのかも知れない。イノベーションは正と負の効果を持っている。全てを合計すると中長期的にはプラスとマイナスでゼロということも多いだろう。多少プラスだと評価されれば良いのではないか?

郊外への大型ショッピングモールの出店は、商店街から顧客を奪い、人々の生活習慣やライフスタイルを変化させる。情報の氾濫による情報選別の必要性、あるいは、情報へのアクセスの改善が有形資産に基づいた社会から無形の知的資産に基づいた社会を生み出した。労働生産性が高まって、人々が豊かになり、生活が便利になった一方で、将来に対する不安も高まって少子高齢化が進展している。

イノベーション、つまり、モノ、サービス、技術、あるいは、プロセスにおける質の向上、ならびに、それらの提供方法における効率化(低コスト化)、あるいは、質と効率の同時追及には善意も悪意もないし、意志や感情は伴わない。イノベーションに意味をもたせたり、価値を与えるのは、それを活用する人間である。

イノベーションは暴走する。イノベーションの暴走を防ぐのは人間だが、人間も「勢い」や「流れ」に逆らって生きることが出来ない。

製品・サービス・技術に関わるイノベーションも、経営におけるイノベーションも行き着くところまで行かないと、方向転換できないことが多いようである。多くの場合、行き着く先まで行き着くしかないのである。


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