連続14ヵ月間、契約者数を伸ばし続けているソフトバンクモバイルが、「iPhone」で大波に乗ろうとしている。しかも、販売価格は格安だ。彼らのビジネスモデルに弱点はないか。
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 2万3040円――。 メディアがいっせいに破格の安値だと報じたiPhoneの販売価格について、記者団から問われたときだった。

 KDDIの小野寺正社長兼会長は、おもむろにメモ書きを取り出した。「ある米国の調査機関によると、(米国での独占販売権を取得した)通信キャリアのAT&Tは、199ドルのiPhoneを売るために、一台当たり325ドルの販売奨励金を負担している」。

 auの契約者数をジリジリと奪われ、iPhoneの販売権まで手に入れて勢いづくソフトバンクモバイルへの、憤懣やるかたない胸中が透けて見えるようだった。

 なにしろ、昨年秋に総務省が定めたガイドラインによって、「分離モデル」を導入したばかりだ。端末の販売価格と通信料金を切り分けて、それぞれの適正化を図る分離モデルは、販売価格が上昇する割賦販売方式となるためユーザーが敬遠しかねない。渋々、行政に従った途端に、iPhone上陸で「販売奨励金モデル」が堂々と復活したのだ。



iPhoneを開発した米アップルは、7月11日に世界中で3G(2代目端末)を発売するに当たって、2G(初代端末)とはビジネスのやり方を変えた。

 従来は、iPhoneの独占販売権を与えていた各国のキャリアから、それぞれの契約に基づいて、利益の20〜30%を“上納金”として納めさせていた。

 だが、今回は、上納金制度をやめる代わりに、“販売奨励金”をキャリアに負担させることにした。従来にも増して、強気の商売なのである。

 たとえば、米国での199ドルという販売価格は、販売業者であるAT&T(キャリア)ではなく、アップル(メーカー)のスティーブ・ジョブズCEOが決めている。世界で最も早くiPhoneの価格をアナウンスするのは、彼の仕事だからだ。

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