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世代別に個性の違う「男の暴力」。激増した「女の暴力」。

世代別に個性の違う「男の暴力」。激増した「女の暴力」。

強盗、殺人、強姦、暴行……毎日、物騒な記事が新聞紙上をにぎわせ、最近の日本は「暴力大国」になりつつある。かつての慎ましくおとなしい日本人は、どこに行ってしまったのだろうか。ただ、暴力行為が増えているといっても、男性の場合、世代によってニュアンスは異なるという。「“ケンカを買わない少年。ケンカをしかける青年。ひとりでキレる中高年”と、大雑把に呼んでいるんですが……」そう語るのは、社会心理学者の河野浩一先生だ。

「決めつけているわけではないのですが、学校教育の影響か、社会環境のせいか、男性の場合、怒りの表現形態が世代によって大きな違いがあるのです。大きなニュースになるような事件ではなく、日常的な暴力行為、たとえば家庭内暴力や駅員、サービス業の人間に対する暴力行為は年々増えていて、それは20代後半から30代にかけてがもっとも多いんです」と河野先生。多くは酒に酔った上での行為だが、すぐにおさまるような小競り合いも含めると、相当数にのぼるという。

かつては“キレる10代”などといわれたが、今はそれが育って、“キレる30代”になったのだろうか。その反面、最近の10代後半から20代前半は比較的おとなしくなり、売られたケンカは買わないし、ケンカを売ること自体減ったという。河野先生に言わせると「ケンカを含め、他人との関わりを極力避けるようになった」のだという。だから暴力的でなくなったのかというとそうではなく「潜在するようになった」ということらしい。

健康な人間であれば、怒りや暴力衝動を感じるのは当たり前だと河野先生は語る。それらの怒りや暴力衝動は、「スポーツをして昇華する」「泣いて発散する」「グチを言って発散する」のが効果的で、皆意識せずにそういった解消法を行っているのだという。また軽い口ゲンカや、議論を戦わすなどのガス抜きができるからこそ、社会生活ができるのだという。ところが他人と極力関わりを持たない、という生き方はガス抜きできるチャンスがなく、怒りをお腹にためる結果となる。それがある日突然爆発し、極端な「殺意」や「暴力行為」に姿を変えてしまうのだ。

最近の傾向で顕著なのは、女性の暴力行為が激増したことだ。「女性の場合は、世代間の違いはあまりなく、10代〜50代までの女性が、暴力的になっています」。かつては、家庭内暴力といえば、夫が妻を殴るかあるいは、青年が親に暴力を振るう……というのが定番だったが、最近は妻が夫を虐待する、娘が家で暴れる……は、そう珍しくないという。怒りを涙で表すのではなく、暴力で表現する女性が増えたのだそうだ。

居酒屋でアルバイトをしているユカさん(20歳)は、人間観察が趣味。ユカさんの観察によると、40代、50代のおじさんばかりのグループは大声を出して騒ぐけれど、ケンカはしないそうだ。ただし議論好きな年代なので話がヒートアップして、ケンカになりそうな場面は少なくないが、たいていは誰かが、まーまーと仲裁にはいるという。「怖いのは30代のグループですね。理由はよくわからないけど突然取っ組み合いのケンカをしたり、グラスを投げつけたり。私たちにも横柄な態度で、あんまり感じよくないですね。よっぽどストレスがたまってるかも。いちばんおとなしいのは20代前半のグループ。4〜5人で来て静かに……というか、たいして話もしないでビール2〜3本飲んでそそくさと帰っちゃいます」。

ユカさんがいちばん驚いたのは、女性が怒って同席の男性をいきなり殴ったケース。ガシャンという激しい音がして振り向くと、20代後半のキャリアウーマン風美人女性が、向かいに座ったサラリーマン風男性を殴っていたのだという。「どこから見ても恋人同士、という感じだったんですが、たぶん彼の言った何かが気に障って彼女が頭にきたんでしょうね。その後立ち上がって逃げ腰の彼の腕を、ねじり上げるようにして引っ張って、彼女は店から出て行きました」。

「ボクもどっちかというと、彼女に暴力を振るわれるタイプかもしれませんね」と、いうのは不動産会社に勤務する荒木実くん(22歳・仮名)だ。「恥ずかしい話ですけど、僕は今までケンカってしたことがないんです。一人っ子だったので兄弟ゲンカも経験ないし、両親とケンカしたこともないです。小学校のときの運動会は全員で手をつないで徒競走をした年代なんです。みんな仲良く、順位はつけない。その分、競争力もないし、人と争うこともしてこなかった」。

だからといって、荒木くんが怒りや競争意識を感じないかといったらそういうわけでもない。ただ、自己主張をすればそれが何倍にもなって相手から返ってくるんじゃないか、二度と以前のような人間関係は保てないんじゃないか、それが不安で結局自分の中で抑圧してしまうのだと言う。「そりゃ人間ですから、理不尽だなと思うことはよくあります。でもそれをぶつけたからって、気分がすっきりするわけではないし……」。

そんな荒木くんの考え方に、河野先生はこうアドバイスする。「気分をすっきりさせるために自己主張をするのではなく、自分の存在理由を明確に、プライドを守るために自己主張をするのです。一時的に不愉快な思いをしたとしても、自分を認めさせることは、将来のために絶対必要なんです。人は自分を殺し、抑圧し続けて生きることはできません。だからこそ、“ある日突然キレる”ということが起こるんです。それを防ぐためにも、ネガティブな話でも人と会話できる習慣をつけなければいけません。上手に自己主張できるかどうかは、慣れの問題でもあります」。

お腹の中の怒りは生ゴミと同じ、と河野先生は言う。「生ごみは毎日こまめに捨てること。ためると発酵して悪臭を放つ」という。ある日、極端な暴力行為に走らないためにも、適度なグチや自己主張は必要で、周囲の人間やパートナーにそれに慣れてもらうことも生きる知恵なのだそうだ。(取材/XIXOX倉持ケンジ)


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