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【眼光紙背】日本の国際競争力低下にもつながる教員汚職問題

【眼光紙背】日本の国際競争力低下にもつながる教員汚職問題
門倉貴史氏

門倉貴史の眼光紙背:第41回

08年6月、大分県で、小学校教員の採用試験を巡って、汚職が行われていた事実が明るみに出た。親が不出来な息子や娘をなんとかして大学に進学させようと、多額のお金を積んで「裏口入学」をするといった事件は、過去に何度も取り上げられてきたが、教員の世界でも、似たようなことが行われていた。

今回の事件の概要は、08年度の教員採用試験で、地元の小学校校長が、自分の長男と長女を試験に合格させるために、採用試験を管轄する義務教育課の参事に対して400万円相当の現金や商品券を「袖の下」として渡していたというものだ。参事は、賄賂を贈ってきた小学校校長の長男、長女の筆記試験の結果に色をつけて、合格させていた。

金品の授受に際しては、別の義務教育課の参事(男性)と地元小学校教頭(女性)の夫妻が仲介役を果たしていた。仲介役となった夫妻は、自分たちも、07年度の採用試験において、娘を合格させるために大分県教育委員会の幹部に金券などを贈っていたという。

金品を贈った小学校校長と仲介役の夫妻は贈賄容疑で、義務教育課の参事は収賄容疑でそれぞれ6月に逮捕されることとなった。07年度の採用試験で、仲介役の夫妻から金品を受け取っていた県教育委員会の幹部も7月に贈賄容疑で逮捕された。

その後、別の教員3人も昇任の便宜を図ってもらうために参事に贈賄したことを認めて、警察に出頭し、汚職の問題が広がっている。大分県では、国会議員秘書や県議会議員など有力者からの口利きによって教員採用をするケースも頻繁にあったとみられている。

今回の汚職事件の発覚は、氷山の一角と言われており、教育現場における汚職の実態は、私たちが想像する以上にひどいものになっている可能性が高い。

このような教員汚職事件が起こった背景としては、第1に、教員の採用試験が極めて「狭き門」となっており、「袖の下」を使ってでも、合格したいと考える人が出やすいということがある。教員採用試験は地元志向が強く、地方圏の地域ほど倍率が高くなる傾向があり、大分県の場合、08年度の小学校教員採用試験の倍率は11.5倍に達した。

また、採用試験を管轄する教育委員会という組織の透明性が低く、外部機関による監視の目が行き届かないということもある。

さらには、大分県など一部の地方自治体は、これまで教員採用の筆記試験の点数や模範解答を受験者に公開してこなかった。このため、受験者が自己採点することができず、それが筆記試験の結果を操作しやすい状況をつくり出しているという側面もあるだろう。

今回の事件発覚により、お金やコネで教員になっている人が少なからず存在しているということが明らかになったわけで、これは、児童の保護者たちが、学校教育に対する不信感を強めることにもつながりかねない。一部で不正が行われていたことが発覚すると、全体がそうした印象で見られてしまうのだ。

現在、日本の国際競争力は低下傾向にある。それは1人あたりGDP(国内総生産)の国際比較でも明らかだ。93年に米国に次いで世界第2位であった日本の1人あたりGDPは、その後、他の先進諸国にどんどん追い抜かれていき、現在(06年)では世界第18位まで順位が落ちてしまった。この順位は、主要先進国のなかで最下位のグループに入る。

日本の国際競争力の低下には、人材育成の遅れ、国民の教育力の低下という要因も少なからず影響している。
「ゆとり教育」の見直しが始まり、これから教育力を高めていかなくてはならない時期に、このような教員汚職問題が出てくるのでは先が思いやられる。


プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。
著書に、「ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)」、「イスラム金融入門―世界マネーの新潮流 (幻冬舎新書 か 5-2)」など。
オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所

眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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