【竹田聡一郎コラム】「何があってもキックオフには遅れません」
2008年07月14日15時37分 / 提供:FOOTBALL WEEKLY
はじめましてタケダです。ちょっと緊張してます。スギヤマさんやらカベさんやら、そうそうたる方々が寄稿しているライブドアさんに僕の原稿が載るなんて。
先月、サッカーの本を出しました。詳細は後で少し書きますが、それを読んでくれた編集者から、「タケダさん、サッカージャーナリズムっぽくなくて読みやすいっす。アホっぽい空気感が最高です。残念なイラストが秀逸っす。あれをぜひ、ライブドアにも書いてください」という、(たぶん)お褒めの連絡をいただき、こうして氷水を飲みながらパタパタと文字を綴ってるわけです。
あんまりね、堅苦しいサッカーの話が好きじゃないんですよ。ぶっちゃけ。
新聞や雑誌の「フォーメーションは4−3−3ですねえ」なんていう記事にはあんまり興味が持てないし、個人的にはどうでもいいと思う。右のサイドバックだけど、セルヒオ・ラモスはいきなりゴール前でヘディングシュートをかますし、ロッベンだってキーパーの後ろまでチームを救うクリアをしに走る。
スターのバックボーン、育った環境とかどこで才能が開化したとか、そういうことにもある程度の関心は抱くけれど、「結局、ピッチで何をするかだろ」と思っている。メッシは難病で大変だったんだろうし、それを含めて契約したバルサはカッコいい思うし先見の明に長けていると思う。いい話として読んだけども、それは結果論。メッシの才能が開化しなかったら単なる買い物の失敗だ。
アオシマ刑事も似たようなことを言っていたけれど、すげえプレーは机上や誌上で起きているのではなく、ピッチで起きている。
僕は一応、サッカーライターのはしくれなので、こういうコトを原稿にすると「あんたプロならそんなコト、書いちゃいけんよ」という苦言というかアドバイスをいただくし、それは事実だと思うけど、僕が感じていることだって真理だからどうしようもない。ちょっとした葛藤や逡巡でもある。
でも、サッカーは大好きで、スタジアムやグラウンドにはしょっちゅう行く。原稿の〆切に間に合わない事態は腐るほどあるけど、キックオフには絶対に遅れない。
じゃあ僕がそこで何に揺さぶられるか、というと「そう来たか」というやられた感を覚える時だ。こっちの期待をいい意味で裏切ってくれる刹那に、恍惚というか絶頂というか高揚というか、とにかく僕はたぎる。
アーリクロスをピンポイントでクラウチの頭に合わせるより、キーパーを小馬鹿にしたループシュートに感銘を受ける。クロスは僕でも練習すればできそうだけど、ループはひらめきそうにない。
サイドに空いたスペースをブチ抜くドリブルに「はええな。すげえな」とは思うけど、ディフェンスを背負ったまま突然、股を抜いてターンと突破。そんなプレーには苦笑いをするしかない。
たとえ失敗しても、
「そんなとこ狙うとは」
「すげえ狭いとこ抜こうとするなんて」
に驚き、声をあげてしまう。たとえボールロストしても「一体、何しようとしたんだ!?」とテンションが上がる。それはプロの選手でなくても同様だ。真剣勝負につきまとうスーパープレーが観たくて僕は外に出る。
プロとしては失格なのかもしれないけど、そういう目線で本を書いた。サッカージャーナリズムとはちょっと違った話が何本か収録されている。精緻な戦術論とか名将の頭の中とかスターのインタビューとか、そういうものには一切、触れていない、あなたの隣にありそうなサッカーを書いた麦酒蹴球清貧紀行です。行間とか伏線とかダヴィンチ・コードとか、そんな難しいものも隠されてません。
「BBB(ビーサン!!) 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅」(講談社刊)、興味があったらぜひ読んでください。
さて、無事に本が出てゆるゆるとだけど、売れている。「1冊、本を出してからが勝負だ」と多くの編集者が忠告してくれるので「ヨシ、オレも『Number』に出てくるような薫り高い文章、書いちゃうもんね」と、先週、前のめりに「浦和対FC東京」を観に出かけた。埼玉スタジアムは4万9千人を飲み込んだ。ご存じのとおり、赤い悪魔は騒々しくうごめき続ける。
そもそも記者やカメラマンというのは不幸な職業だ。と僕は思っている。かなりいい場所でお金も払わずに観戦してはいるけど、超絶プレーにもゴールに対しても、突き上げたくなる拳をぐっと諌めて経過をこと細かにメモしなくては(カメラマンはシャッターを押し続けなくては)ならない。ビールだって飲めない。
僕は恥ずかしいことに取材者というより観戦者のスタンスに近い。記者席に座っていてゴールが入る。ほかの記者さんは一心不乱に手元の手帳を小さな文字で埋める作業に没頭しているけど、僕だけは「わ」と「お」の間くらいの発音で叫び、「YAH YAH YAH」の飛鳥のように宙を殴ってしまう。周囲の記者からは訝しげな目線をいただく。
話を戻す。それが良くないと思ったので、今回はポンテのフィジカルにも驚かず、羽生の飛び出しに声を上げることなく静かにプロっぽく観戦しようと決めていた。
でもたったの開始3分。田中達也がエジミウソンにつなぎ早い先制点が生まれた。
「出るのか!? あるぞあるぞあるぞ! あっ! 取った! はえ〜」
この意味のわからない一文は、僕が記者席で絶叫した実況である。もちろん手元の取材ノートは真っ白。プロフェッショナルとは対極にある。
これでいい、とは絶対に思わないけれど、こういう感じの自分がどうしても嫌いになれなかったりもする。
僕のサッカーライター生命はどうなるんだろうか。とっても不安だ。(了)
竹田聡一郎 Soichiro Takeda
黄金世代と同じ1979年生まれ、神奈川県出身。湘南ユースでプロを目指した元DF。04年にフリーランス宣言以来、情報誌、グルメ誌、トラベル誌などに寄稿している。
BBB―15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅
講談社から絶賛発売中!
先月、サッカーの本を出しました。詳細は後で少し書きますが、それを読んでくれた編集者から、「タケダさん、サッカージャーナリズムっぽくなくて読みやすいっす。アホっぽい空気感が最高です。残念なイラストが秀逸っす。あれをぜひ、ライブドアにも書いてください」という、(たぶん)お褒めの連絡をいただき、こうして氷水を飲みながらパタパタと文字を綴ってるわけです。
あんまりね、堅苦しいサッカーの話が好きじゃないんですよ。ぶっちゃけ。
新聞や雑誌の「フォーメーションは4−3−3ですねえ」なんていう記事にはあんまり興味が持てないし、個人的にはどうでもいいと思う。右のサイドバックだけど、セルヒオ・ラモスはいきなりゴール前でヘディングシュートをかますし、ロッベンだってキーパーの後ろまでチームを救うクリアをしに走る。
スターのバックボーン、育った環境とかどこで才能が開化したとか、そういうことにもある程度の関心は抱くけれど、「結局、ピッチで何をするかだろ」と思っている。メッシは難病で大変だったんだろうし、それを含めて契約したバルサはカッコいい思うし先見の明に長けていると思う。いい話として読んだけども、それは結果論。メッシの才能が開化しなかったら単なる買い物の失敗だ。
アオシマ刑事も似たようなことを言っていたけれど、すげえプレーは机上や誌上で起きているのではなく、ピッチで起きている。
僕は一応、サッカーライターのはしくれなので、こういうコトを原稿にすると「あんたプロならそんなコト、書いちゃいけんよ」という苦言というかアドバイスをいただくし、それは事実だと思うけど、僕が感じていることだって真理だからどうしようもない。ちょっとした葛藤や逡巡でもある。
でも、サッカーは大好きで、スタジアムやグラウンドにはしょっちゅう行く。原稿の〆切に間に合わない事態は腐るほどあるけど、キックオフには絶対に遅れない。
じゃあ僕がそこで何に揺さぶられるか、というと「そう来たか」というやられた感を覚える時だ。こっちの期待をいい意味で裏切ってくれる刹那に、恍惚というか絶頂というか高揚というか、とにかく僕はたぎる。
アーリクロスをピンポイントでクラウチの頭に合わせるより、キーパーを小馬鹿にしたループシュートに感銘を受ける。クロスは僕でも練習すればできそうだけど、ループはひらめきそうにない。
サイドに空いたスペースをブチ抜くドリブルに「はええな。すげえな」とは思うけど、ディフェンスを背負ったまま突然、股を抜いてターンと突破。そんなプレーには苦笑いをするしかない。
たとえ失敗しても、
「そんなとこ狙うとは」
「すげえ狭いとこ抜こうとするなんて」
に驚き、声をあげてしまう。たとえボールロストしても「一体、何しようとしたんだ!?」とテンションが上がる。それはプロの選手でなくても同様だ。真剣勝負につきまとうスーパープレーが観たくて僕は外に出る。
プロとしては失格なのかもしれないけど、そういう目線で本を書いた。サッカージャーナリズムとはちょっと違った話が何本か収録されている。精緻な戦術論とか名将の頭の中とかスターのインタビューとか、そういうものには一切、触れていない、あなたの隣にありそうなサッカーを書いた麦酒蹴球清貧紀行です。行間とか伏線とかダヴィンチ・コードとか、そんな難しいものも隠されてません。
「BBB(ビーサン!!) 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅」(講談社刊)、興味があったらぜひ読んでください。
さて、無事に本が出てゆるゆるとだけど、売れている。「1冊、本を出してからが勝負だ」と多くの編集者が忠告してくれるので「ヨシ、オレも『Number』に出てくるような薫り高い文章、書いちゃうもんね」と、先週、前のめりに「浦和対FC東京」を観に出かけた。埼玉スタジアムは4万9千人を飲み込んだ。ご存じのとおり、赤い悪魔は騒々しくうごめき続ける。
そもそも記者やカメラマンというのは不幸な職業だ。と僕は思っている。かなりいい場所でお金も払わずに観戦してはいるけど、超絶プレーにもゴールに対しても、突き上げたくなる拳をぐっと諌めて経過をこと細かにメモしなくては(カメラマンはシャッターを押し続けなくては)ならない。ビールだって飲めない。
僕は恥ずかしいことに取材者というより観戦者のスタンスに近い。記者席に座っていてゴールが入る。ほかの記者さんは一心不乱に手元の手帳を小さな文字で埋める作業に没頭しているけど、僕だけは「わ」と「お」の間くらいの発音で叫び、「YAH YAH YAH」の飛鳥のように宙を殴ってしまう。周囲の記者からは訝しげな目線をいただく。
話を戻す。それが良くないと思ったので、今回はポンテのフィジカルにも驚かず、羽生の飛び出しに声を上げることなく静かにプロっぽく観戦しようと決めていた。
でもたったの開始3分。田中達也がエジミウソンにつなぎ早い先制点が生まれた。
「出るのか!? あるぞあるぞあるぞ! あっ! 取った! はえ〜」
この意味のわからない一文は、僕が記者席で絶叫した実況である。もちろん手元の取材ノートは真っ白。プロフェッショナルとは対極にある。
これでいい、とは絶対に思わないけれど、こういう感じの自分がどうしても嫌いになれなかったりもする。
僕のサッカーライター生命はどうなるんだろうか。とっても不安だ。(了)
竹田聡一郎 Soichiro Takeda
黄金世代と同じ1979年生まれ、神奈川県出身。湘南ユースでプロを目指した元DF。04年にフリーランス宣言以来、情報誌、グルメ誌、トラベル誌などに寄稿している。
BBB―15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅講談社から絶賛発売中!
コメントするにはログインが必要です
Ads by Google
前後の記事
- プレミアクラブがアグエロ獲得へ? 欧州通信 14日20時50分
- 【竹田聡一郎コラム】「何があってもキックオフには遅れません」 FOOTBALL WEEKLY 14日15時37分
- ユーベの欧州CL出場にサリハミジッチ「まずは予選に集中」 Gazzetta.it. 14日09時00分
- 五輪問題にリバウド苦言「ロナウジーニョはバルサで結果を」 Gazzetta.it. 14日09時03分
(4) - 【Sports Watch】川淵氏、ジーコ監督就任秘話明かした Sports Watch 14日11時51分
(7)
サッカーアクセスランキング
- 1

- イタリアサッカーは老人ホーム? 欧州通信 29日12時38分
(4)
- 2

- [サッカー]バーレーン戦へ大黒ら3人追加…代表は23人に 毎日新聞 29日18時11分
- 3

- インテル、ついにクアレスマ獲得に成功 Gazzetta.it. 29日23時35分
- 4

- モウリーニョ激白「チェルシー退団時期を誤った」 欧州通信 29日23時00分
- 5

- フランスW杯予選メンバー、“サプライズ”なし 欧州通信 29日00時28分
- 6

- 中村俊輔が望むチャンピオンズリーグ対戦相手は? 欧州通信 28日23時08分
(2)
- 7

- 迎えの専用機がカラ...リヨン、オッドの“ドタキャン”に困惑 欧州通信 30日00時48分
- 8

- ピレス「マンUとセルティックは強敵」 欧州通信 30日01時02分
- 9

- ついに後がなくなった「不人気」岡田監督 ゲンダイネット 29日10時00分
(16)
- 10

- 犬飼会長 監督進退は「今は考えてない」 スポニチ 30日06時02分
注目の情報
カードローンの決定版
オリックスVIPローンカードなら安心の低金利 ⇒ 年率5.9%でご契
約の場合、10万円を30日間ご利用で利息はなんと『484円!』年率15.0
%でご契約の場合、利息は『1,232円』
お申し込みはこちら









