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「風評被害」についてのメディア・リテラシー=岩手・宮城内陸地震を事例に(下)
2008年07月11日14時54分 / 提供:PJ
【PJ 2008年07月11日】−
(上)からのつづき。大規模災害でのマスメディアの局地的、集中的、そして短期的な報道の手法はマスメディアが持つニュース価値が原因になり、それが風評被害につながっている側面がある。これらに加え、マスメディア全体の集団心理、マスメディア同士の報道競争、ジャーナリスト自身の功名心、被災者感情を意識した被害がない・少ないと報道することへの抵抗感、などが考えられる。
では、ニュース価値を原因とする風評被害への予防策や対抗策はあり得るのだろうか。マスメディア自身にこの対策を求めるのは難しいであろう。ニュース価値の考え方からすると、「被害がない・少ない」ことはニュース価値が低い、つまり報道する価値が無いということになってしまうからだ。マスメディアの報道から読者・視聴者が風評被害の可能性をうかがい知ることの一つの現れとして、例えば、同じ場所の画像・映像が繰り返し報道されている場合がある。他の場所には被害が及んでいない場合が多い。そこしか「絵になる」ところが無いということだ。
例えば、05年8月の宮城県南部を襲った大地震では被害がほとんど無かった。ただ、1箇所、仙台市の健康複合施設「スポパーク松森」で、プールのつり天井が落下し26人のけが人が出た。わたしを含め報道陣はここに殺到し、天井が落ちて散乱している光景に焦点を当ててシャッターを切った。PJニュースを含め、メディアはこの様子を一斉に報道した。この施設から一歩外に出ると地震の被害など全くないのどかな田園風景が広がっていたのだったが、もちろん、この平和な風景は新聞に写真が掲載されたり、テレビに映し出されることはなかった。このように一点集中的な災害報道には注意が必要だ。
また、被害があった土地になじみのないジャーナリストが取材した報道にも要注意だ。被害の規模を過大・過小評価している可能性がある。06年1月、中越地震被災地の旧山古志村(現・長岡市)を記録的な大雪が襲った。わたしはこの取材で日中、地元の人の「雪掘り」を手伝った。取材先のおじいさんの家にその夜泊めてもらい、大雪の笑い話をさかなに、山古志村特産のうまい米と酒をごちそうになっていた。そのお茶の間に、東京のテレビ局が取材した村の映像が映し出されると、わたし自身すら村中が危機的状況にあるかのような印象を受けたものだった。
実はこの大雪、例年は2月に降るようなものが、1月に前倒しでで降ったという程度のものだった。大雪を見たこともないレポーターが取材したのだろう。ヘリで被災地に飛んで、カメラを向けられているときだけヘルメットをかぶり、マイク片手に「大変な状況です」と叫ぶ日テレ系報道番組のキャリア官僚出身の某キャスターなどがその典型例である。
はたして被災地全体から一部を切り取った画像・映像が読者・視聴者に誤った印象を与え、被災地の「風評被害」が生まれてくるのであるが、読者・視聴者がそれら画像・映像を注意深く観察することで風評被害はある程度防げる。とはいえ、これが「風評被害」の特効薬とはなり得ないのが実情だ。
では、どうすればいいのか。パブリック・メディア「PJニュース」の編集長として、ありきたりな言葉ではあるが、多くの人々が目にするパブリック・メディアで被災地の被害が無いこと・少ないこと、あるいは「風評被害」が出ていることを報じていくのが一つの手である。【了】
■関連情報
PJニュース.net
『言論江湖』 PJ小田の視点
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康【 東京都 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
では、ニュース価値を原因とする風評被害への予防策や対抗策はあり得るのだろうか。マスメディア自身にこの対策を求めるのは難しいであろう。ニュース価値の考え方からすると、「被害がない・少ない」ことはニュース価値が低い、つまり報道する価値が無いということになってしまうからだ。マスメディアの報道から読者・視聴者が風評被害の可能性をうかがい知ることの一つの現れとして、例えば、同じ場所の画像・映像が繰り返し報道されている場合がある。他の場所には被害が及んでいない場合が多い。そこしか「絵になる」ところが無いということだ。
例えば、05年8月の宮城県南部を襲った大地震では被害がほとんど無かった。ただ、1箇所、仙台市の健康複合施設「スポパーク松森」で、プールのつり天井が落下し26人のけが人が出た。わたしを含め報道陣はここに殺到し、天井が落ちて散乱している光景に焦点を当ててシャッターを切った。PJニュースを含め、メディアはこの様子を一斉に報道した。この施設から一歩外に出ると地震の被害など全くないのどかな田園風景が広がっていたのだったが、もちろん、この平和な風景は新聞に写真が掲載されたり、テレビに映し出されることはなかった。このように一点集中的な災害報道には注意が必要だ。
また、被害があった土地になじみのないジャーナリストが取材した報道にも要注意だ。被害の規模を過大・過小評価している可能性がある。06年1月、中越地震被災地の旧山古志村(現・長岡市)を記録的な大雪が襲った。わたしはこの取材で日中、地元の人の「雪掘り」を手伝った。取材先のおじいさんの家にその夜泊めてもらい、大雪の笑い話をさかなに、山古志村特産のうまい米と酒をごちそうになっていた。そのお茶の間に、東京のテレビ局が取材した村の映像が映し出されると、わたし自身すら村中が危機的状況にあるかのような印象を受けたものだった。
実はこの大雪、例年は2月に降るようなものが、1月に前倒しでで降ったという程度のものだった。大雪を見たこともないレポーターが取材したのだろう。ヘリで被災地に飛んで、カメラを向けられているときだけヘルメットをかぶり、マイク片手に「大変な状況です」と叫ぶ日テレ系報道番組のキャリア官僚出身の某キャスターなどがその典型例である。
はたして被災地全体から一部を切り取った画像・映像が読者・視聴者に誤った印象を与え、被災地の「風評被害」が生まれてくるのであるが、読者・視聴者がそれら画像・映像を注意深く観察することで風評被害はある程度防げる。とはいえ、これが「風評被害」の特効薬とはなり得ないのが実情だ。
では、どうすればいいのか。パブリック・メディア「PJニュース」の編集長として、ありきたりな言葉ではあるが、多くの人々が目にするパブリック・メディアで被災地の被害が無いこと・少ないこと、あるいは「風評被害」が出ていることを報じていくのが一つの手である。【了】
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