今週のお役立ち情報
「風評被害」についてのメディア・リテラシー=岩手・宮城内陸地震を事例に(上)
2008年07月09日16時11分 / 提供:PJ
大規模な災害があったとされる栗駒山山中を通る国道398号線。通行止めの区間のほとんどはこんな感じだった。ところどころちょっとした地割れがある。これでは「インパクト」が無いためにニュース価値が低く、報道写真にならない。(撮影:小田光康、6月21日)
わたしはこの地震発生1週間後、被災地の中心部にあたる栗駒山に登頂した。被害はこの山の南側斜面に広がっていたものの、山の北側に位置する岩手県の須川温泉や秋田県の大湯温泉での被害はほとんど無かった。この様子に関しては連載「被災地報道、もう一つの事実」(上)、(中)、(下)を参照していただきたい。
大崎市長は風評被害の一義的な原因を気象庁に求めるが、わたしはこれと異なった考えを持っている。風評被害の原因をよくよく観察するとマスメディアの局地的、集中的、そして短期的な災害報道の手法にあるといえる。この手法の背景に、ジャーナリズムの世界で共有される価値観として「ニュースバリュー(価値)」と呼ばれるものがある。
ニュース価値の是非は別にして話を進めよう。定義は各国で若干の差異があるが、代表するものとして米コロンビア大学ジャーナリズム大学院で利用されているジャーナリズムの教科書に準拠したもので説明したい。岩手・宮城内陸地震の災害報道に関していえば、ニュース価値を決めた要因として、「インパクト」「異常性・非日常性」そして「近接性」が挙げられよう。
まず「インパクト」について。これはより多くの人々に対して、より大きな影響を与える出来事ほど、ニュース価値が高くなり、つまり読者・視聴者にとって関連性が高く、有用な情報であればあるほど、大きく報道されるということである。岩手・宮城内陸地震の最大震度は6強、宮城・岩手・秋田の3県にまたがる被害が発生し、死者・行方不明者は20人以上を数えた。しかも、大規模な土石流もあり、人々に与えた感覚的・視覚的なインパクトは大きく報道するに十分であった。
また「異常性・非日常性」に関しては、最大震度6強の大地震は「異常性・非日常性」が高く、大きく報道する条件が揃っていたといえよう。「近接性」は地理的な要因と、心理的な要因に分けられるが、岩手・宮城内陸地震は日本国民にとっては四川大地震よりも地理的に近接性が高いし、国内での震災被害が相次いでいることから心理的にも近接性が高いと言えた。だから報道機関はこの地震を大きく取り上げたのだ。
これらのニュース価値も時間的な経過によって変化する。岩手・宮城内陸地震から時間がたち、そのニュースを繰り返し報道していれば「インパクト」や「異常性・非日常性」といったニュース価値は薄れてくる。被災地の困難な状況が継続しているのにもかかわらず、マスメディア報道が少なくなるのはこのためだ。
また、ニュース価値は絶対的なものでなく、相対的なものであるという点にも注意が必要だ。新聞やテレビは、それぞれ紙面という物理的な制約と放映枠という時間的な制約がある。これを前提として、すべての出来事から相対的に大きなニュース価値があるものを選別して報道しているのである。別の場所で新たな大きな事件が起こると、これまでの事件の報道が紙面やテレビ画面から消えてしまうのはこのためだ。岩手・宮城内陸地震後、四川大地震の報道が極端に減ったのが一例である。【つづく】
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康【 東京都 】
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