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大手マスコミが「記者クラブ」で“報道の自由”を蹂躙!(後編)

大手マスコミが「記者クラブ」で“報道の自由”を蹂躙!(後編)
談合体質を生む記者クラブ制度

 新規参入といえば、05年、報道部門を立ち上げていたライブドアが、気象庁記者クラブに加盟を申請したものの、堀江貴文元社長が刑事事件で“起訴”されたことを理由に、加盟を拒否されたことが有名だ。

 ライブドアの報道部門はその後解体されたが、PJニュース(PJはパブリック・ジャーナリストのこと)という、ジャーナリストである小田光康氏が主宰する別会社として、今も引き継がれている。PJニュースもまた、記者クラブによる排除を経験した。

 PJニュースは、昨年1月、フジテレビ系列制作の番組『発掘!あるある大事典II』で起きた納豆のダイエット効果ねつ造問題について、フジテレビ社長の定例会見に出席して質問しようとしたところ、放送各社でつくる記者クラブ「ラジオ・テレビ記者会」に拒否された。

 そこでPJニュースは、クラブの面々が、フジテレビから豪勢な接待を受けていることを報道、クラブとのやりとりから逐一、記事にしていった。小田氏は、なぜ取材を妨害するのかクラブ側に執拗に迫ったが、クラブ側はPJニュースを、会見を開放すべき対象とは見なさなかった。同氏は日本新聞協会にも質問状を送ったが、約3カ月後、取材の進展には実りのない回答が送られてきただけだったという。

 小田氏は、この時の経験から、「排斥的な動きがあれば、自分のメディアで市民社会に訴えていくことが重要」と話す。

 そもそも記者クラブは、どうしてこんなに横並びで、閉鎖的で、特権意識に満ちているのだろうか。その発祥は、明治時代、議会取材を記者が団結して要求した「議会出入記者団」に遡る。戦時中、それらが大本営発表の装置と化した反省からか、1949年、日本新聞協会はクラブを親睦団体であると発表。しかし時をへて90年代になると、外国報道機関がクラブの存在によって不利益を被っていると主張し、外圧がかかると、97年、日本新聞協会は一転して、クラブを取材のための拠点であると見解を変えた。親睦の場か、取材拠点か、その場しのぎの理由づけが、記者クラブの体質を決定してきた。

 前出の小田氏は言う。「記者クラブは、結局、談合体質になってしまう。歴史的に見て、一度たりとも権力に対抗できたことはないんです」

 しかしマスコミは、記者クラブこそ権力の監視に役立つと主張してきた。本当に、両者になれ合いはないのか?

 ジャーナリストの今井一氏は、大阪市職員の厚遇問題が物議を醸していた05年、大阪市議会の財政総務委員会を傍聴しようとして不許可とされ、取材と市政参加の機会が奪われたとして、大阪市に慰謝料120万円を求める訴訟を起こした。

 今井氏は「東京23区ほか26の市議会では、誰でも委員会傍聴が自由です。しかし、大阪市議会は先例があって、市政記者クラブの人間だけしか入れないというんです」と訴える。

 この裁判は、昨年2月、大阪地裁にて今井氏敗訴の判決が下りた。判決は、クラブ所属の人間には、「報道に係わる一定の行為規範、価値基準が共有され、正確な報道が担保される」として、市議会の先例に合理性があると判断した。今井氏は控訴するも、高裁でも敗訴、現在、最高裁に上告中だ。

 記者クラブの人間だけしか傍聴が許されない現状をどう考えるのか、今井氏は、クラブ所属の23社に質問状を送った。「(現行ルールは)改善しなければならないと回答した社もあったけれど、まったく回答してこない社もある。実際に正そうとする動きが起きない以上、欺瞞的だ」(今井氏)


脱「記者クラブ」へのさまざまな試み    

 ジャーナリストの寺澤有氏は、記者クラブの閉鎖性をめぐって、99〜05年にかけて計3回、裁判を起こした。前2回は、裁判所が司法記者クラブ加盟社に対して、優先的に傍聴席を与えたりすることで、自らの取材の機会が損なわれたとして、国を相手に。3度目は、警察庁内などでの会見取材を妨害されたとして、国と関係クラブ各社を対象とした(その後、いずれも訴えは棄却されている)。

 今井・寺澤両氏の例が示すのは、組織に属さない個人が公権力を取材しようと試みると、“敵”は公権力だけでなく、記者クラブでもある、ということだ。

 寺澤氏が3度目の裁判を起こすヒントになったのが、01年、新興のインターネットメディアだった「オーマイニュース」が、韓国の記者クラブ制度を崩壊させたことだった。当時から記者クラブは、日本と韓国ぐらいにしかない取材慣行であったが、韓国では先に記者クラブの解体が実現したのだ。

 オーマイニュースが記者クラブを解体させる原動力となったのが、記者クラブの存在を盾に、新興メディアに対して、強引な取材妨害を行う守旧派メディアの対応ぶりをネット上で動画中継したことだったといわれている。それを目にした市民が、記者クラブの存在を許さなかったわけだ。

 インターネットの登場以来、情報発信の手段は、ますます安価で簡単になっている。独自にメディアを立ち上げる試みは増えていくばかりで、旧来のマスコミが報道の担い手だとは限らない時代が来ている。

 マスコミ界のご意見番的存在で、すでに80歳を超えた元共同通信編集主幹・原寿雄氏は、「僕も最近は、記者クラブ廃止論者になってきたよ」と今年、筆者に語った。

 4月に『マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか』(現代人文社)を出版した日隅一雄弁護士は、「記者クラブはなくすよりも、開放する方向で考えるべきだ」との意見だが、マスコミとは違う情報発信を目指そうと、弁護士らで独自の市民メディア・NPJを立ち上げている。

 今後こうしたニュースの当事者に近い人々による情報発信は、記者クラブを中抜きしていくはずだ。当事者に近い情報発信とはどういうものか? たとえば、裁判の内容にまつわるような司法記者クラブでの会見は、原則として生中継が許されない。すでに中継できる技術は整っているのに、新聞やテレビの都合でルールが決められているのだ。だが、これを会見に出席する弁護士たち自身がネット中継を試み、誰もが見られる状態にしたらどうなるだろう? また、前出の寺澤氏の目線は、はるか先を行く。

「もう、記者クラブをなくすっていうよりも、ストレートに、新聞・テレビを、読まない・見ないようにして、大手マスコミをなくしてしまったほうがいい。一社抜け、二社抜けしていけば、記者クラブなんて意味がなくなる」

 日本新聞協会に問い合わせると、記者クラブをめぐるトラブルを集計したこともないし、トラブルが増えているとも思わない、と回答するなど問題意識は低い。しかし、クラブでの会見の動画生中継を実行する者が出てきたとき、記者クラブ解体への突破口が開かれるのではないだろうか。その技術的手段は、すでにある。記者クラブが、国民にとって、「むしろ邪魔」な存在でしかないのが、暴かれる日は近いかもしれない。
(岡崎智/「サイゾー」6月号より)

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