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「放送と通信の融合」はメディアの階級化を促すのか(7)

「放送と通信の融合」はメディアの階級化を促すのか(7)
東京・霞が関にある総務省の庁舎 (撮影:小田光康)
【PJ 2008年07月03日】− 情報通信法(仮称)はネットのジャーナリズム状況に即しているのか
(6)からのつづき。ネット界のジャーナリズム状況を見渡すと、ポータルサイトや検索サイトがネット上の報道言論の中心地となっている 。そこでは提供元の新聞・雑誌メディアやパブリック・メディアからのコンテンツがメディアによる序列なく、並べられていることは周知である。他方、情報通信法(仮称)では、特別メディアサービス、一般メディアサービス、そしてオープンメディアコンテンツと、メディアの階層化によるメディア規制を敷く方針である。ネット上ではメディアそのものよりも、コンテンツ自体による影響力のほうがある場合が多く、メディアをひとくくりにして規制することが実態に即しているか否かは議論の余地がある。

 また、ネットメディアは状況によってテキスト媒体から動画媒体へと臨機応変にその表現形態を変換することが可能であるため、動画配信を主軸にしたメディアの階層化が有効であるか否かにも議論の余地がある。これまで、マスメディアはメディアとジャーナリズムが外形的には一体化されて、その受け手側もそう認識されていたと思われる。ネット時代を迎えた現在、「ヤフーニュースで事件を知った」という例を挙げるべくもなく、情報の受け手側である人々はヤフーというポータルサイトを報道メディアとして認識していることが多々ある。

 実際、ヤフーは自前の報道コンテンツは持たず、これらはすべて外部から提供されたものである。ネット世界ではジャーナリズムのコンテンツを伝えるのはポータルサイトというプラットフォームであり、情報提供元のマスメディアは情報ベンダーとしての認識が広がっている。ネット上では報道言論というソフトウエアが報道メディアというハードウエアが分離されて人々に認識されているのである。

 情報通信法(仮称)では通信と放送といったこれまでの縦割り型法体系を改め、実際のメディア状況に即したとされるレイヤー(階層)型法体系を作り、その階層別の規制を加えようとするものである。このメディアの階層化がメディアの階級化として機能し、パブリック・メディアを含めた新たなメディアが報道言論の舞台から排除され、ジャーナリズム全体の硬直化につながるのではないかという懸念がある。

 問題は情報通信法制そのものというよりも、記者クラブといった周辺にあるジャーナリズムの制度と結びついたときに起こりえる。例えば、記者クラブの加盟条件が特別メディアサービスといった特定階層のメディアに限定されるといった事態である。つまりは公権力が指定したメディア以外は記者クラブに加盟できない、あるいは記者クラブ既存加盟のメディアがそれを盾に新規参入希望メディアを排除するという事態が発生してしまう危険性があるのである。

 メディアの階層化が、その法制以外の制度と連動した際にはメディアが「階級化」することを意味し、また、公権力が暴走しメディアがそのジャーナリズム機能を失うきっかけになることは歴史が証明している。戦前の日本政府が一県一紙体制を敷き、同時に記者クラブを特権化させたことでマスメディアを階層化・階級化させつつ、言論統制を強めていった構図が、いままさに進められている情報通信法策定の過程と重なり合って見える。

 戦前の日本を振り返るべくもなく、これまで日本国内のジャーナリズムのあり方として記者クラブ制度による、制度外部にあるメディアやジャーナリストへの差別がことあるごとに問題化してきた。国内において記者クラブに加盟しているか否かで、取材報道の幅や奥行きに大きな差が付いてしまうのが実情である。記者クラブという特権組織がその外部にあるメディアやジャーナリストの取材報道の自由を奪い、一般市民の知る権利を阻害してきたという議論は今なお続いているのである。

 記者クラブへの加入条件というと、報道実績や所属メディアといったものがあるが、実際の運用は属人的でかなりあいまいなものであり、定式化された条件というのは存在しない。すなわち、情報通信法(仮称)が他の制度と結びついたとき、この法制自体が掲げる「情報の自由な流通」という基本理念や「公正競争促進・利用者保護」「事業、業務運営の適正性の確保」といった保護法益が毀損してしまう危険性が無いとは言えない。【つづく】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小田 光康【 東京都 】
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