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【眼光紙背】現代社会の病理を象徴する「呪い屋」

2008年07月02日11時00分 / 提供:眼光紙背

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【眼光紙背】現代社会の病理を象徴する「呪い屋」
門倉貴史氏

門倉貴史の眼光紙背:第39回

猫の手も借りたいほどに多忙を極める現代人。そのような人たちを手助けするために、近年、様々な代行ビジネスが登場するようになった。具体的な事例を挙げれば、家事代行ビジネス、電話代行(電話番)ビジネス、自動車運転代行ビジネス、墓参り代行ビジネスなどだ。

ただ、百花繚乱となって繁盛する代行ビジネスの中には、穏やかではないものもある。たとえば、人間が持つ「憎しみ」や「恨み」といった感情と「時間の節約」をうまく組み合わせて、それをビジネスにして利益を上げている業者がある。読者のみなさんは、「呪い屋」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

人間なら誰しも、世の中に殺してやりたいほどに憎い相手が1人や2人はいるものだ。とくに「格差社会」が到来して、収入の多寡によって「勝ち組」とか「負け組」といった言葉でレッテルを貼られるようになってからは、人々の心の中にストレスが蓄積されたり、特定の個人や集団に対する嫉妬や恨みなどの感情が芽生えやすくなっている。

そうした現代社会に特徴的な病理現象をうまく利用しているのが「呪い屋」である。「呪い屋」というのは、呪術師と呼ばれる「呪い」のプロを自認する人が、「丑の刻参り」、「呪いのわら人形」、「黒魔術」など各種の呪いを代行するサービスのことを指す。

様々な呪術の存在が知られているが、とくに日本に昔からある「丑の刻参り」の人気が高い。「丑の刻参り」とは、白装束で丑の刻(午前1時から午前3時までの間)に神社に行き、その御神木に、憎い相手に見立てたわら人形を五寸釘で打ち込むというものだ。

わら人形には、呪いたい相手の髪の毛などを埋め込む。呪っているところは誰にもみられないようにしなくてはらない。ただ、実際に丑の刻に、毎晩神社に通って呪術を行うというのは時間的にかなり厳しい。

そこで、「呪い屋」に「丑の刻参り」の代行を頼むというわけだ。「呪い屋」は、インターネットのサイトなどで依頼主を募集している。サイト内で料金などを検索してみると、呪いの代行はかなりの高額で引き受けているところが多い。1回の呪い代行の平均的な価格は、3万円から6万円程度となっている。また、通信販売でわら人形などの呪いグッズを販売しているところもある。

人に呪いをかける「呪い屋」は、刑法上の罪に問われることはないのだろうか。実は、明治時代には「呪い」を取り締まる法律があったのだが、現在の刑法では、人に呪いをかけること自体は罪に問われない。呪いは単なる迷信にすぎず、呪いの効果によって人が苦しんだり、死んだりすることは、科学的に考えてあり得ないとされているためだ。ただし、呪いをかけていることを、相手に伝えた場合には、刑法上の「脅迫罪」に問われる可能性がある。

「呪い屋」のビジネスは、非合理的な呪いを信じる依頼主がいることによって成立する。客観的には非合理的なことであっても、主観的に依頼主が呪いの効果を信じているのであれば、結果としてその呪いが実現しようとしまいと、「呪い屋」のビジネスは成り立つということだ。

成功報酬ではない(呪いの効果は料金とは無関係になっている)ため、「呪い屋」を謳っている業者のなかには、相手の信頼を悪用するかたちで、前金で高額の料金を受け取って、実際には、呪いを行わない悪質な業者もある。
呪いの効果があったかどうかは客観的・科学的に検証できないので、業者にとっては、依頼主から料金を受け取ってしまえば、あとはどうにでもなるという側面がある。



プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。
著書に、「ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る (宝島社新書)」、「イスラム金融入門―世界マネーの新潮流 (幻冬舎新書 か 5-2)」など。
オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所

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「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
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