【番長・杉山茂樹の観戦記】見えない決勝戦
2008年06月30日03時40分 / 提供:livedoor スポーツ
スペインが勝つか。ドイツが勝つか。この原稿は、決勝戦を数時間後に控えたスタジアムのメディアセンターで書いているのだが、正直言って、僕にはこの決勝戦が見えてこない。どちらが勝つかという以前に、両者が交わる戦いの絵が想像できないのだ。
ふくらはぎを怪我したといわれるバラックの出場が危ぶまれていることも理由の一つだが、その大部分はスペイン側に原因がある。
良いサッカーと悪いサッカーとの両面を、このチームは持ち合わせている。ここまで差のある戦い方をするチームも珍しい。良いサッカーをした時間は、決して多くない。準決勝のロシア戦だけといっても言い過ぎではない。良いサッカーをして決勝に勝ち上がったという意味では期待が持てるが、その時間の短さを考えると、良いサッカーは偶然の産物との見方もできる。継続性があるか否かは謎なのだ。
つまりスペインは、決して良くないサッカーで準決勝まで勝ち上がってきた。このコラムでもこの点について何度か触れているが、もう一度改めて言えば、攻撃に幅が足りないのだ。先発する4人(チャビ、セナ、イニエスタ、シルバ)が、中央に偏る傾向がある。イニエスタとシルバは、いわばサイドハーフだ。試合当初は、与えられたポジションを意識したプレイを見せるが、時間の経過とともに、自分がプレイしやすい場所に、移動してしまう癖がある。よってピッチの真ん中に4人の中盤選手が乱立。それぞれが狭いスペースで、濃い関係に陥ってしまうのだ。これではパスの長さは短くなり、流動性も、躍動感も生まれにくい。相手にボールが移れば、両サイドのスペースががら空きなので、逆襲も食いやすい。
細かいパスを狭いスペースで繋いでは、守備の網に引っかかり逆襲を食う。そうした図が、容易に想像できるサッカーを繰り広げてきた。
スペインは言ってみれば中盤王国だ。セスク・ファブレガス、シャビ・アロンソといった大物も、ベンチに控えている。レベルに大きな違いはあるが、我が国と抱えている症状は似ている。エスパニョールのリエラ、バレンシアのホアキンら、サイドアタッカーをメンバーから外したことで、それはいっそう加速した。
ゲームメイカータープの中盤選手を、どう効率的に並べるか。スペインは、大会前から想像できた問題に、何も手をつけないまま、何とか準決勝まで勝ち上がり、好調ロシアと対戦した。
立ち上がりのスペインは、いつもと同じように4−2−2−2的な症状に陥った。フェルナンド・トーレスト2トップを形成するビジャも、相変わらず引き気味で構えたので、ピッチには4−2−2−1−1的な絵が描かれた。
それが一転したのは、前半37分。ビジャが故障で退場したことがきっかけだった。代わって投入されたのはセスク・ファブレガス。中盤が4人から5人に増え、中盤乱立の傾向に、いっそう拍車が掛かるものと思われた。
驚いたのは、それがそうならなかったことだ。中盤はむしろワイドに広がった。
セスク・ファブレガスが交代する相手は、これまで決まってチャビだった。4人という中盤の人数には変更がなかった。それが、ロシア戦では5人になった。両サイドハーフのイニエスタとシルバは、中盤選手が3人もいる真ん中に入っては、さすがに具合が悪いとのだろうか、それまでとは異なり、サイドのポジションを維持しようとした。サイドハーフ同士でポジションチェンジは行ったが、真ん中に入ることを避けるようになった。
つまり、5人の中盤はピッチに綺麗に広がった。必然、幅が保てるようになったので、中にもスペースが生まれた。ロシア選手の間隙を突く流動性も生まれた。
自由に動くことと、流動的なサッカーとは、ともすると同義語に捉えられがちだが、幅が十分に設定されていないと、逆に行き場は限られることになり、流動性は失われる。スペインの攻撃は、以前とは比べものにならないほど、ダイナミックになった。
チャビに代わり、シャビ・アロンソが投入され4-2-3-1の形が明確になると、スペインの攻守はいっそう充実した。視野の広いシャビ・アロンソの長いパスが決まると、展開には美しささえ伴うことになった。
このサッカーで決勝を戦えば面白いと思ったのは僕だけではないはずだ。それは偶然の産物だったのか、意図的なものだったのか。決勝を見れば、一目瞭然になるのだが。
さて結末はいかに。
ふくらはぎを怪我したといわれるバラックの出場が危ぶまれていることも理由の一つだが、その大部分はスペイン側に原因がある。
良いサッカーと悪いサッカーとの両面を、このチームは持ち合わせている。ここまで差のある戦い方をするチームも珍しい。良いサッカーをした時間は、決して多くない。準決勝のロシア戦だけといっても言い過ぎではない。良いサッカーをして決勝に勝ち上がったという意味では期待が持てるが、その時間の短さを考えると、良いサッカーは偶然の産物との見方もできる。継続性があるか否かは謎なのだ。
つまりスペインは、決して良くないサッカーで準決勝まで勝ち上がってきた。このコラムでもこの点について何度か触れているが、もう一度改めて言えば、攻撃に幅が足りないのだ。先発する4人(チャビ、セナ、イニエスタ、シルバ)が、中央に偏る傾向がある。イニエスタとシルバは、いわばサイドハーフだ。試合当初は、与えられたポジションを意識したプレイを見せるが、時間の経過とともに、自分がプレイしやすい場所に、移動してしまう癖がある。よってピッチの真ん中に4人の中盤選手が乱立。それぞれが狭いスペースで、濃い関係に陥ってしまうのだ。これではパスの長さは短くなり、流動性も、躍動感も生まれにくい。相手にボールが移れば、両サイドのスペースががら空きなので、逆襲も食いやすい。
細かいパスを狭いスペースで繋いでは、守備の網に引っかかり逆襲を食う。そうした図が、容易に想像できるサッカーを繰り広げてきた。
スペインは言ってみれば中盤王国だ。セスク・ファブレガス、シャビ・アロンソといった大物も、ベンチに控えている。レベルに大きな違いはあるが、我が国と抱えている症状は似ている。エスパニョールのリエラ、バレンシアのホアキンら、サイドアタッカーをメンバーから外したことで、それはいっそう加速した。
ゲームメイカータープの中盤選手を、どう効率的に並べるか。スペインは、大会前から想像できた問題に、何も手をつけないまま、何とか準決勝まで勝ち上がり、好調ロシアと対戦した。
立ち上がりのスペインは、いつもと同じように4−2−2−2的な症状に陥った。フェルナンド・トーレスト2トップを形成するビジャも、相変わらず引き気味で構えたので、ピッチには4−2−2−1−1的な絵が描かれた。
それが一転したのは、前半37分。ビジャが故障で退場したことがきっかけだった。代わって投入されたのはセスク・ファブレガス。中盤が4人から5人に増え、中盤乱立の傾向に、いっそう拍車が掛かるものと思われた。
驚いたのは、それがそうならなかったことだ。中盤はむしろワイドに広がった。
セスク・ファブレガスが交代する相手は、これまで決まってチャビだった。4人という中盤の人数には変更がなかった。それが、ロシア戦では5人になった。両サイドハーフのイニエスタとシルバは、中盤選手が3人もいる真ん中に入っては、さすがに具合が悪いとのだろうか、それまでとは異なり、サイドのポジションを維持しようとした。サイドハーフ同士でポジションチェンジは行ったが、真ん中に入ることを避けるようになった。
つまり、5人の中盤はピッチに綺麗に広がった。必然、幅が保てるようになったので、中にもスペースが生まれた。ロシア選手の間隙を突く流動性も生まれた。
自由に動くことと、流動的なサッカーとは、ともすると同義語に捉えられがちだが、幅が十分に設定されていないと、逆に行き場は限られることになり、流動性は失われる。スペインの攻撃は、以前とは比べものにならないほど、ダイナミックになった。
チャビに代わり、シャビ・アロンソが投入され4-2-3-1の形が明確になると、スペインの攻守はいっそう充実した。視野の広いシャビ・アロンソの長いパスが決まると、展開には美しささえ伴うことになった。
このサッカーで決勝を戦えば面白いと思ったのは僕だけではないはずだ。それは偶然の産物だったのか、意図的なものだったのか。決勝を見れば、一目瞭然になるのだが。
さて結末はいかに。
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