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「児童虐待報道」が子供たちを檻へと導く(上)

【PJ 2008年06月29日】− 近年、家庭内での暴力をめぐる報道が活発だ。親子間、夫婦間、兄妹間の暴力に加え、恋人間の「デートDV」なる言葉も出回る。特にうるさく伝えられるのが、親が子供に与える暴力である。同情を誘う虐待報道の影に、子供たちを冷酷な檻(おり)へ追い込もうとする思惑が見える。

虐待事件の大報道と法整備
 今年4月、青森県八戸市で母親が長男を紋殺した容疑で逮捕された。長男は「おかあさん」の詩で入賞歴もあった。翌日には埼玉県越谷市で、同居する女性の一歳の長女に熱湯をかけたとして21歳の男が逮捕。やけどをしただけの事件が、NHKと全紙で扱われている。5月には宮城県石巻市で生後2カ月の女児を母親が海に投げ殺害、6月には千葉県成田市で父親が生後1カ月の乳児を殴ったとして逮捕された。

 最近、この手の事件はやむことなく報じられるが、犯行の経緯は釈然としないものばかり。2006年に秋田で畠山鈴香被告が子供2人を殺したとされる事件も、起訴前から大々的に取り上げられた。子供たちを「保護」しようとするキャンペーンが展開されていることは間違いない。

 警察庁の統計によれば、2007年の児童虐待事件は過去最多の300件。児童数とともに、2003年の倍近くに増えた。しかし、養父母を含む親によって殺害された児童数は昭和後半から減少傾向にあり、2001年の45人に対し2007年は37人と増えてはいない。取り扱い件数の増加は、児童福祉法改正と児童虐待防止法施行によって対応が強化された結果と考えられる。

 全国の児童相談所が2007年度に児童虐待の相談を受けて対応した件数も4万618件で過去最多と発表されたが、2004年の児童虐待防止法改正で通報を義務化したことが急増の契機となっている。

 子供への虐待が報じられるようになったのは、10年ほど前のこと。1999年、横浜市都筑区の北川直貴ちゃん(1)が市内の病院で死亡したのは父親が階段下の廊下に数回たたきつけられたためと報道された。このころから、パチンコに興じる親が子供を車に放置して死なせる事件が頻繁に報道されるようになった。これらを受ける形で、児童虐待防止法は2000年に成立した。

 同法はそれまで児童福祉法が規定していた子供の虐待に関する通告の義務や、立ち入り調査、一時保護、裁判所の承認を経ての施設入所などの運用を促すとともに、虐待の種類や早期発見の努力義務、立ち入り調査の際の警察官の援助要請、親の同意のない入所の場合に親との面会・通信を制限できるなどを定めた。

 2004年1月、大阪府岸和田市の中学校3年生の男児の虐待事件が報道された。父親と内縁の妻による放置は餓死寸前まできていたとして、通告対象の拡大を促した。その結果、改正児童虐待防止法が同年10月から施行されることになった。

 この改正では、同居人による虐待もネグレクト(育児放棄)の一類型とし、児童の目の前でのドメスティック・バイオレンスも虐待に含めた。虐待を受けたと「思われる」だけで通告義務が生じることとし、親の同意に基づく施設入所でも、児童との面会・通信を制限できるとした。

 2006年10月、京都府長岡京市で児童相談所に4度通報がありながら3歳の男児が餓死した。同年5月に福島県泉崎村で3歳児が虐待死した事件では、両親が鍵を開けず、児童相談員が立ち入れなかった。

 これを受け2008年4月施行の改正法では、虐待の恐れのある親への出頭要求の制度化や、解錠を伴う立ち入り調査も可能になった。保護者への通信・面会の制限を強化し、児童へのつきまといや居場所付近でのはいかいも禁止できるとし、罰則まで設けることを定めた。これは国家による人さらいを認めるものではあるまいか。

子供を収容する施設続々と
 4月の改正法施行を機に、全国の大部分の児童相談所では通報から48時間以内に子供を確認する「時間ルール」が設けられた。強制立ち入りと48時間ルールは、2004年の改正時に見送られた項目である。一連の児童虐待報道は、あらかじめ用意されていた法整備に、口実を与えたと見るべきではないか。

 では、国家によって取り上げられた子供は、どこに収容されるのだろう。現在、主たる受け皿になっているのが児童養護施設である。孤児院が名称変更されたもので、2005年10月時点で全国558カ所に3万830人が暮らす。ほかに乳児院117施設に、3077人が生活する。

 さらに厚生労働省は「ファミリーホーム」と呼ぶ新たな養育事業を検討している。自治体の委託を受けた「養育者」が自宅で6人程度の子供を育てるもので、児童養護施設で虐待を受けた児童の行き先として想定している。

 厚労省はこれらと別に、里親制度の充実に取り組む。1月10万円あまりの委託費を支給された家庭が、他人の子供を育てるというもの。現在、「社会的擁護に必要な子供」4万人のうち、里親利用者は9%。オーストラリア92%、アメリカ77%などと比べ低いとし、平成21年度までに15%に増やす目標を掲げる。

 他方、政府は待機児童の解消にも積極的だ。共働きや子供を巻き込んだ犯罪の増加などで、子供を施設に預けておこうとする親が増えている。全国の待機児童は2007年4月現在、約1万8000人。政府が2月にまとめた「新待機児童ゼロ作戦」で受け皿として支援推進しているのが、「保育ママ」制度と「放課後児童クラブ」の拡充である。「保育ママ」は保育士や看護士が自宅で乳幼児を預かる。「放課後児童クラブ」は保育所や小学校が放課後も児童を管理するもの。

 2004年の虐待防止法改正を機に、生後4カ月までの赤ちゃんのいる全家庭を保健師が訪問する事業が全国7割の市町村ですでに始まっている。虐待の早期発見が理由である。虐待が疑われれば、保護の対象になる。【つづく】

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パブリック・ジャーナリスト 高橋 清隆【 神奈川県 】
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