ユーチューブ投稿のグーグルアース動画

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   地球上の衛星画像が無料で見られるサービス「グーグルアース」の活用例が増えている。岩手・宮城内陸地震では土砂崩れが起きる以前の姿が紹介され、現在と比べて被害の大きさを実感することができた。一方で、女性の裸の写真がネットで出回ったりするなど、悪用も問題になっている。

グーグルアース上に「京都観光」メニューを開設

   2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震では、ユーチューブに関連の動画が次々に投稿された。その中には、グーグルアースの衛星画像を紹介する動画もいくつかあった。例えば、16日投稿の「荒砥沢ダム付近の土砂崩れ 最大規模」。山の大規模な崩落の前の姿を、様々な角度から見られるようになっている。

   これだけでは、インパクトのない画像だ。しかし、ITジャーナリストの井上トシユキさんは、こう明かす。

「『昔は、秘湯だったんだ』。マスコミに出た無残な温泉旅館の写真、映像とグーグルアースの画像を比べて、そんな話をする人がいました。見比べると実感を深め、『大変だな』と思うようです。それで、ボランティアに行こうという人もいると思います」

   検索最大手の米グーグルが始めたこのサービスは、日本でも次第に利用が増えつつある。テレビのバラエティ番組や新聞が、目的地や現場などの紹介に取り上げるのがその一例。さらに、観光情報を発信するケースも出ている。

   京都市では5月26日から、グーグルアース上に「京都観光」のメニューを開設した。グーグルから働きかけがあったといい、「都市単位では世界初」という。清水寺などの名所94か所にある舞妓アイコンをクリックすると、寺などの写真や解説が表示される。

   日本以外でも、米ディズニー・ワールドなどが同様な案内サービスをしている。グーグルアースでネットサーフィンを楽しみながら、同時に観光情報が得られるメリットがあるようだ。

「肖像権などめぐって、これから大きな問題になる可能性がある」

   さらに威力的なのが、住所からその建物を突き止める地図検索機能だ。

   井上トシユキさんによると、この機能を使ってビジネスの正体が暴かれたことがあった。06年に、ある人がブログを使って、「こうやれば儲かる」とうたった株取引指南の高価なDVDなどを売りつけていた。ネットでは、このビジネスが疑わしいと話題になり、有志たちがこの人物は本当に儲けているか調べることにした。そして、DVDにあった販売元の住所から、グーグルアースを使って、販売元の建物はビルではなく小さな一軒家だと突き止めたのだ。この人物は、儲けたとウソをついて、高価なDVDを売っていたというわけだ。

   もっとも、この建物を割り出すという機能は、悪用もされうる。

   新華社ロンドンの2008年6月19日付日本語訳記事によると、イギリスでは、若者たちが、グーグルアースを使って大きなプールを持つ家を見つけ、夜中に侵入。そこで泳いだり、パーティーをしたりする行為が相次いでいる。夜中に騒ぎで起こされたり、ビール缶をまき散らされたりする被害が報告されているという。

   このほかに、屋上で日光浴をするトップレス姿のオランダ人の若い女性の姿がネットに出回り、話題になったことがある。あるテレビ局は現地まで行って、この場所の住人にインタビューまで試みようとしたとの情報まで出た。

   前出の井上トシユキさんは、日本でも、グーグルアースが悪用される危険性を指摘する。

「ストーカーが相手の住所を把握すれば、建物についても調べられてしまいます。自分の持ち家を公開されたくない人は、『グーグルに写してくれと言った覚えはない』と怒るでしょう。これから大きな問題になる可能性があり、著作権や肖像権を確認する訴訟を起こす人も出て来るのではないでしょうか。いい面と悪い面が先鋭化しており、グーグルアースの利用は諸刃の剣と言えます」

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