リヨンの攻撃的MF、ハテム・ベン・アルファのマルセイユ移籍が25日、正式に決まった。レキップ紙などが報じている。

 ベン・アルファは、ユーロ2008のフランス代表からは最終選考で外れたが、W杯に向けた新世代の核のひとりとして期待がかかる21歳の若手。この世代では、ユーロに出場したベンゼマやナスリに比べて、まだ評価がやや低いが、テクニックではこの二人を上回るという指摘もある。

 12歳のときに、アネルカ、アンリ、サアらを輩出したフランス・フットボール連盟運営のエリート養成機関、国立クレールフォンテーヌ・サッカー学院(INF)に入り、14歳でリヨンの育成センターに移った。17歳でプロデビューして4シーズン目の今季、30試合に出場して6ゴールをあげる活躍が認められ、07-08年度のリーグ・アン最優秀新人に選ばれている。

 今季は開幕当初から、チェルシーに移籍したマルダの穴を埋める左サイドのMFとして期待を受けた。それに応えて序盤の10試合で5得点と華々しいスタートを切ったものの、次第にかねてから“欠点”と指摘されてきた個人プレーが目立つようになり、ライバルだったケイタの復調もあって出番が減り、尻すぼみなシーズンとなった。

 INF時代から「アイドルはマラドーナ」と言ってきたベン・アルファ。天才ドリブラーの名をほしいままにしているが、テクニックに頼りすぎて周りが見えず、試合中継で解説者から「またハテムのひとり旅がはじまった」などと指摘されることもある。本人もこのことを自覚しているようで、「成長していきたい」と批判を謙虚に受けとめているが、「自分のプレースタイルと個性は守りたい」(レキップ紙)とプライドも強い。

 妥協を許さない性格のためか、チームメイトとの衝突もたびたび伝えられる。将来有望な逸材であるにもかかわらず、今回リヨンが比較的簡単に手放したのも、同世代のベンゼマとウマが合わないことなどが少なからず背景にあるようだ。

 今回、国外のクラブも獲得に意欲を示したが、プレーの成熟度がまだ足りない現状でいきなり国外に出るよりはマルセイユという選択は賢明、とする指摘が多い。名将と評価の高いゲレツ監督のもとでさらなる飛躍に期待がかかる。ゲレツ監督の就任後、代表入りの一歩手前まで躍進したバルブエナの例もある。昨シーズンは、バイエルンに移籍したリベリの穴が大きかったマルセイユの“1.5列目”だが、ベン・アルファ、バルブエナのコンビはスペクタクルとしても非常に楽しみだ。