言論が危ない! 『少年は殺人者でなかった』(3)
2008年06月26日06時13分 / 提供:PJ
(2)からのつづき。語り手は奈良地検に逮捕、起訴された鑑定医の崎濱盛三さん、聞き手は吉岡忍さん(作家)です。
崎濱 父親の暴力から逃げたい、逃げるためには火をつけようと、少年は決めた。実行の段階で、父親が自宅に居ないとわかった。計画に固執し、なかなか変更できないのが、広汎性発達障害の特徴です。少年はお父さん居ないし、ずいぶん迷った。「まあ、つけてしまえ」と火をつけてしまったのです。
周りにも気がまわらないのも、この発達障害の特徴です。継母(ままはは)や弟妹への危険が及ぶ、という意識がなく、少年は逃げてしまった。
吉岡 鑑定医として、少年にはこれこれの傾向、病状、症状がみられる、と鑑定書に書かれて、それを奈良の裁判所に提出された。ふつうはそこで鑑定医の仕事は終わるわけですよね。
崎濱 はい
吉岡 鑑定書が裁判所に出される前後して、講談社の書き手(草薙厚子さん)や編集者から、取材されたわけですね。警察や検察の供述調書を見せるに至った経緯はどんなものだったのでしょうか。
崎濱 端的に言えば、『少年が殺人者でない』ということを何とか伝えないといけない、という気持ちです。週刊誌とか、メディアとかの情報を読むと、全然、話がちがう。センセーショナルに報道されている。とくにICU(集中治療室)となると、そんなものはどこから出てきたんや、と思いました。
吉岡 ICUというのは、少年の勉強部屋が、父親が激しい暴力を振るう、治療室みたいな部屋だった、という表現でしたよね。
崎濱 いまだに、ICUがどこから出たのか、まったく分からない。父親が事件当日に、女性のところにいったような、思わせぶりな表現が載っていた。ずいぶん事実と違うことが報じられていた。
それよりも、一番気になったのは、友だちが生の声で、「やっぱり、人を殺したらあかんやろう」という声を耳にした。むろん、私が鑑定していると、友人たちは知らない。身近な友だちから、そういう声を聞いたのが、非常につらかった。
『少年はそんな人殺しじゃない』。それなのに、少年が殺人者として、一生背負う、人生の重みを考えました。なんとかならないかな、と思っていました。(世のなかに)、少年には殺意がなかったという、客観的事実を伝えたかった。
いろいろタイミングよくというか、悪くというか、ジャーナリストの方(講談社の書き手や編集者)と接点があって、結局、こちらから伝えたいこともありまして、(供述調書や鑑定書を)お見せすることになりました。
吉岡 そこのところが微妙で、大事なところだと思います。鑑定医として、鑑定書を書いて裁判所に提示する。崎濱さん自身は、それだけで、この事件が終わらなかった。少年は社会的に、こいつは人殺しだ、という一生背負って生きていく。(それは酷だ)。なんとかならないか、と思われた。その切実さが強かったのでしょうね。 【つづく】
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記者HP:穂高健一ワールド
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崎濱 父親の暴力から逃げたい、逃げるためには火をつけようと、少年は決めた。実行の段階で、父親が自宅に居ないとわかった。計画に固執し、なかなか変更できないのが、広汎性発達障害の特徴です。少年はお父さん居ないし、ずいぶん迷った。「まあ、つけてしまえ」と火をつけてしまったのです。
周りにも気がまわらないのも、この発達障害の特徴です。継母(ままはは)や弟妹への危険が及ぶ、という意識がなく、少年は逃げてしまった。
吉岡 鑑定医として、少年にはこれこれの傾向、病状、症状がみられる、と鑑定書に書かれて、それを奈良の裁判所に提出された。ふつうはそこで鑑定医の仕事は終わるわけですよね。
崎濱 はい
吉岡 鑑定書が裁判所に出される前後して、講談社の書き手(草薙厚子さん)や編集者から、取材されたわけですね。警察や検察の供述調書を見せるに至った経緯はどんなものだったのでしょうか。
崎濱 端的に言えば、『少年が殺人者でない』ということを何とか伝えないといけない、という気持ちです。週刊誌とか、メディアとかの情報を読むと、全然、話がちがう。センセーショナルに報道されている。とくにICU(集中治療室)となると、そんなものはどこから出てきたんや、と思いました。
吉岡 ICUというのは、少年の勉強部屋が、父親が激しい暴力を振るう、治療室みたいな部屋だった、という表現でしたよね。
崎濱 いまだに、ICUがどこから出たのか、まったく分からない。父親が事件当日に、女性のところにいったような、思わせぶりな表現が載っていた。ずいぶん事実と違うことが報じられていた。
それよりも、一番気になったのは、友だちが生の声で、「やっぱり、人を殺したらあかんやろう」という声を耳にした。むろん、私が鑑定していると、友人たちは知らない。身近な友だちから、そういう声を聞いたのが、非常につらかった。
『少年はそんな人殺しじゃない』。それなのに、少年が殺人者として、一生背負う、人生の重みを考えました。なんとかならないかな、と思っていました。(世のなかに)、少年には殺意がなかったという、客観的事実を伝えたかった。
いろいろタイミングよくというか、悪くというか、ジャーナリストの方(講談社の書き手や編集者)と接点があって、結局、こちらから伝えたいこともありまして、(供述調書や鑑定書を)お見せすることになりました。
吉岡 そこのところが微妙で、大事なところだと思います。鑑定医として、鑑定書を書いて裁判所に提示する。崎濱さん自身は、それだけで、この事件が終わらなかった。少年は社会的に、こいつは人殺しだ、という一生背負って生きていく。(それは酷だ)。なんとかならないか、と思われた。その切実さが強かったのでしょうね。 【つづく】
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