買わない、贈らない、もらわない……団塊ジュニアたちの超常識
2008年06月25日21時18分 / 提供:都市伝説探偵団
ネットカフェにも泊まることができず、マックの1杯100 円のコーヒーで夜明かしをする人たちたちがいる一方、お金はあるのに使おうとしない人たちがいる。といって節約をしているわけでもない。モノを買わない、人にモノを贈らない、人からモノをもらわない。この3つのキーワードが、20代後半から30代半ばの、いわゆる団塊ジュニアたちの生活の基本だという。
開業医の池田さんは、この春まで池田さんの医院で看護師として勤務していた千絵さんの結婚披露宴に招待された。招待状には気楽なパーティなので平服で来てくださいとあったが、池田さんは普通の礼服を着て出席した。また、招待状には会費5000円以外は不要ですともあったが、まさか手ぶらというわけにもいかず、会費とは別にご祝儀3万円を包んだ。ところが、会場に着いた池田さんは愕然とした。50歳の池田さんと同年輩の人以外はみなラフな格好をしていた。ジーンズの人もいれば、アロハシャツの人もいた。花嫁はなんと看護師の白衣だった。
「いやー、びっくりしました。もう僕らの常識は通用しないんですよ。受付で芳名録に名前を書いてご祝儀を出したら、これは受け取れませんってきっぱり拒否されました。今の若い人は形式ばったことが嫌いですから、僕もそれに従って会費だけ払いました。親族の人はちらほらいましたけど、ほとんどが友達関係なのか同年輩の人たちばかり。笑ってしまったのが食事で、スープ、サラダのあとハンバーグとライスが出てきて、最後にコーヒーと、まるでファミレスのメニューみたいでした。それと、帰りにもらった引き出物が新郎新婦のサイン入りTシャツ1枚だけというのも愉快でした。へんに重たい鍋とか皿より気がきいてるし、会費5000円ポッキリだけどお土産はユニクロのシャツという発想が今時の若い人たちらしい」と池田さんはいう。
お金は持っているが、必要なもの以外には使わない、というのが団塊ジュニアと呼ばれる30代の人たちのポリシーだ。薄型テレビやブルーレイをせっせと購入して内需拡大に貢献しているのは、実は彼らの父親、母親いわゆる団塊の世代なのだ。団塊ジュニアは生まれたときからモノがあふれている環境で、何不自由なく生きてきた人がほとんどだ。父親世代のように、「今度ボーナスが入ったらエアコンを買おう」とか「向かいのお宅が新車を買ったからうちも買おう」という発想はない。
「他人は他人、自分は自分ですね。僕らは結婚したときほとんど何も買わなかった。家具や生活用品はふたりで持ち寄ったし、新居も僕の賃貸マンションをそのまま借りてます。だからといって、ケチケチした貧乏くさい生活はしたくないです。預金もふたり合わせればかなりの額になりますけど、家を買う予定もないし、車を買う予定もないです」というのは、去年結婚した30代の塩谷さん夫婦。2DKの部屋は家具もばらばらで、小型のブラウン管テレビが2台、シングルベッドが一台ある。ベッドは妻の葉子さんが持ち込んだもので、夫のタカシさんは床にふとんを敷いて寝るそうだ。
「僕らはこれで全然問題ないです。僕も妻もこれで快適なんです。僕らのモットーはモノを買わない。他人にモノをあげない、もらわないの3つ。だからお中元なんてどこにも贈らないし、どこからも届きません。年賀状だって僕個人はずいぶん前に止めました。面倒くさいっていうのもありますけど、お中元やお歳暮っていったい何の意味があるのか考えた結果、毎日職場で顔を合わせている上司にビールやコーヒーをあげる必要性はないという結論に達したんです。昔はそれで上司の覚えめでたく昇進、なんてこともあったんでしょうが、今時、モノをあげたあげないで昇進には関係ないし、もしそういう贈り物とかで昇進が決まるなら僕は一生ヒラ社員でもいいです」と塩谷さん。
では彼ら団塊ジュニアたちは何も欲しいものはないのか、貯めた預金は使わないのか。もう少し取材を進めてみた。会社を定年退職後、関連会社に再就職。毎朝同じバスで父親と出勤する松野秀則さんは32歳。「親父は仕事が趣味みたいな人だから、今は楽しいんじゃないですか。ひとつずつ出世の階段を昇って、終点は営業部長。マンガの『島耕作』みたいに、課長、部長、重役、社長……と出世したかったのかもしれないですね。でも僕はそういう欲求はないですね。係長か課長で十分です。会社のことで悩むなら自分のことや家族のことで悩みたいです」。
「小学生の息子には好きなことをさせたいし、僕自身も好きなことをやってみたい」という松野さんに賛同する友人は多い。同世代の人間は、お金をかけるならモノを買うのではなく、自分磨きにお金をかける傾向があるという。「学生のころ熱中したバンド活動を復活させるとか、英会話に磨きをかけるとか。お金って形に残るモノだけに使うのではなく、無形でも自分を豊かにしてくれることに使っているみたいですね」と松野さん。
団塊の世代にとって、車や電化製品は豊かさの象徴だった。目標を据え金を蓄え、ひとつクリアするたびに幸せを感じた。車も車検のたびに買い換え、年中クレジットの支払いに追われていた。ところが、「車の免許は持ってますけど身分証明書代わり。運転することもないから車も欲しいと思わないです。父親や母親の世代は3ドアの冷蔵庫や全自動洗濯機が家に来るととても嬉しかったそうです。でも僕らは冷蔵庫は2ドアでもいいし、洗濯機は洗えればいいと思ってるし、テレビだって映ればいいんです」と松野さん。
日本自動車販売協会連合会によると、新車の販売台数はここ数年減少する一方だという。最も新車が売れた1990年の777 万台に対して、去年は535 万台。およそ242 万台も減少している。原油の高騰をはじめ、維持費や税金が高い、車の必要性を感じない、など原因はいろいろと考えられるが、団塊ジュニアを中心とした若者の車離れも、車が売れないひとつの要因だとされている。
地球温暖化や環境問題には関心があり自分なりのエコを実践しているが、声高に地球を救えとはいわない。『自分なりにできること』が団塊ジュニアたちを理解するキーワードかもしれない。政治や経済の動向は気になるが、積極的に係わりたくはないともいう。海外旅行には興味がないという今時の学生とは違い、海外旅行には何度も出かけている。だが、ニューヨークやパリ、ロンドンなどの大都会には行かない。「海外にいってまで人込みの中に入りたくない」し「ブランド品を買う予定もない」からだ。東南アジアの小さな島や、沖縄の名もない島でのんびりするのが最高の贅沢だという。
タバコは吸わない、アルコールも付き合い程度、賭け事はまったく関心がない。団塊世代の人たちには「何が楽しいのかわからない」(50代男性)が、こうしたライフスタイルで十分満足なのが団塊ジュニアたちなのだ。(取材/XIXOX倉持ケンジ)
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