言論が危ない! 『少年は殺人者でなかった』(1)
2008年06月24日11時54分 / 提供:PJ
「殺す」という殺意(動機)がなければ、相手が死んでも、殺人とはいえない。裁判では、それぞれの証言、供述調書、鑑定書などから、被告人の動機が追及され、殺意があったか否かが問われる。その上で、司法の判断がなされる。
奈良県田原本町で06年6月20日、16歳の少年が自宅に火を放ち、3人を焼死させた事件が発生した。犠牲となったのは継母(父の後妻)、異母弟妹の2人である。放火した少年が殺意、敵意をむけた父親は事件の当日、勤務先に宿泊し、不在であった。不在だと知りながらも、少年は火をつけたのだ。
奈良家庭裁判所は、少年の行動に疑問を持ち、精神鑑定を行った。担当したのが精神科医の崎濱盛三さんで、放火した少年は広汎性(こうはんせい)発達障害をもつと診断した。
翌07年9月には、奈良地検が刑法134条の秘密漏洩罪で、崎濱盛三さんを逮捕し、11月2日に起訴した。逮捕のきっかけとなったのが、草薙(くさなぎ)厚子著『ぼくはパパを殺すことに決めた』(講談社)への取材協力だった。
各団体からは、言論・表現の自由を侵すものだ、不当逮捕だ、と抗議声明が出された。他方で、ジャーナリストの草薙厚子さんと講談社の編集者に対しても、取材の良心を問う、厳しい目が向けられた。
少年は殺人者ではなかった。それを世に伝えてもらいたくて、鑑定医の崎濱盛三さんは、ジャーナリストに警察や検察の供述調書などをみせた。このときの約束事が、見せるだけです、コピーはダメです、供述調書の直接引用はしないだった。
崎濱盛三さんが外出中に住まいの鍵を預かり、筆者、記者、カメラマンなど関係者4人が調書や鑑定書をデジカメで撮影したのである。『ぼくはパパを殺すことに決めた』では、その警察と検察の調書がかなり引用された。むしろ、調書が本の柱になっている、という指摘や批判がなされた。他方で、出版前に、崎濱さんへの原稿の最終チェックの約束も果たされていなかったのだ。
鑑定医の崎濱盛三さんは逮捕・起訴された後、初めてシンポジウムに参加し、自らのことばで事件を語った。そのシンポジウムは、日本ペンクラブと(社)自由人権協会の共催で6月13日、東京・大手町サンケイプラザで開催された。
民主主義の根幹である「言論の自由」が脅かされつつあるなかで、当事者たちの生の声を届けたいという趣旨からである。メイン・テーマは、言論がアブナイ!「伝えるべきことを伝える大切さ」である。定員200名の会場が満員だった。 【つづく】
■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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奈良県田原本町で06年6月20日、16歳の少年が自宅に火を放ち、3人を焼死させた事件が発生した。犠牲となったのは継母(父の後妻)、異母弟妹の2人である。放火した少年が殺意、敵意をむけた父親は事件の当日、勤務先に宿泊し、不在であった。不在だと知りながらも、少年は火をつけたのだ。
奈良家庭裁判所は、少年の行動に疑問を持ち、精神鑑定を行った。担当したのが精神科医の崎濱盛三さんで、放火した少年は広汎性(こうはんせい)発達障害をもつと診断した。
翌07年9月には、奈良地検が刑法134条の秘密漏洩罪で、崎濱盛三さんを逮捕し、11月2日に起訴した。逮捕のきっかけとなったのが、草薙(くさなぎ)厚子著『ぼくはパパを殺すことに決めた』(講談社)への取材協力だった。
各団体からは、言論・表現の自由を侵すものだ、不当逮捕だ、と抗議声明が出された。他方で、ジャーナリストの草薙厚子さんと講談社の編集者に対しても、取材の良心を問う、厳しい目が向けられた。
少年は殺人者ではなかった。それを世に伝えてもらいたくて、鑑定医の崎濱盛三さんは、ジャーナリストに警察や検察の供述調書などをみせた。このときの約束事が、見せるだけです、コピーはダメです、供述調書の直接引用はしないだった。
崎濱盛三さんが外出中に住まいの鍵を預かり、筆者、記者、カメラマンなど関係者4人が調書や鑑定書をデジカメで撮影したのである。『ぼくはパパを殺すことに決めた』では、その警察と検察の調書がかなり引用された。むしろ、調書が本の柱になっている、という指摘や批判がなされた。他方で、出版前に、崎濱さんへの原稿の最終チェックの約束も果たされていなかったのだ。
鑑定医の崎濱盛三さんは逮捕・起訴された後、初めてシンポジウムに参加し、自らのことばで事件を語った。そのシンポジウムは、日本ペンクラブと(社)自由人権協会の共催で6月13日、東京・大手町サンケイプラザで開催された。
民主主義の根幹である「言論の自由」が脅かされつつあるなかで、当事者たちの生の声を届けたいという趣旨からである。メイン・テーマは、言論がアブナイ!「伝えるべきことを伝える大切さ」である。定員200名の会場が満員だった。 【つづく】
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パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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