【赤木智弘の眼光紙背】深夜営業の自粛を求める人たちの目的は、CO2削減などではない
2008年06月26日11時00分 / 提供:眼光紙背
赤木智弘の眼光紙背:第38回
埼玉県がCO2の排出を削減するためとして、コンビニやスーパーなどに対して、深夜営業の自粛を要請する方針をまとめたそうだ。(*1)私はコンビニの深夜営業自粛に断固として反対する。
まずは深夜営業を自粛したところで、冷凍庫や冷蔵庫は止めるわけにも行かず、常温商品に関しても、チョコレートなどの変質しやすい商品はもちろん、多くの賞味期限が定められた食品も、店内が高温になってしまえば賞味期限の範囲であっても、変質することがある。ゆえに、店内のエアコンも切ることができない。
そこで削減できるのは蛍光灯ぐらいだという話になるのだが、これがまたくせ者である。
私たちが「深夜営業のムダ」としてイメージするのは、深夜にも関わらずこうこうと明かりを放つコンビニの姿だろう。この報道に関するイメージ写真を見ても、その多くが深夜に光り輝くコンビニの写真である。
しかし、私たちが勘違いをしている。
コンビニはなにも、深夜だから蛍光灯をともしているのではない。それを理解するには、昼間のコンビニに行ってちょっと天井を見上げてみればいい。そこにはこうこうと輝く蛍光灯があるはずだ。コンビニは基本的には24時間蛍光灯をともしているのである。それに気付かないのは単に外が明るければ中の明かりに気がつきにくいが、暗ければ気がつきやすい。それだけのことである。コンビニでは昼間も蛍光灯をともして「明るく入りやすいお店」であるために、蛍光灯を供し続けている。
電気事業連合会のサイトに「電力需要に合わせた電源の組み合わせ」という図表がある。(*2)
これをみると、夜間電力の多くは原子力や水力といったベース電力で賄われているのに対し、昼間電力は石油による火力発電で賄われていることがわかる。
もう一つ、エネルギー総合工学研究所のまとめによる「各種電源別のCO2排出量」という図表を見ていただきたい。(*3)
これをみれば、石炭、石油、ガス、いわゆる「化石燃料」を燃焼させることによる発電方式がCO2を多く発生させることは明らかだ。
これと先の図表を組み合わせて考えれば、CO2のあまり出ないベース電力中心の深夜の電気の利用を抑えることにあまり意味はなく、むしろ昼間の電力を抑制するほうが合理的であることは明白である。
ならば、それが実現するかどうかはともかく、コンビニやスーパーに対して、昼間の蛍光灯の利用を抑えることを要請するほうが、CO2を削減することができそうなものだと思う。しかし、実際は昼間ではなく夜間営業の自粛を要請した。それはなぜだろうか?
私はコンビニが支えるような「夜型のライフスタイル」が、昼間にしか仕事をしない人たちにとって「望ましくないもの」と思えるからこそ、CO2削減を錦の御旗として、夜型のライフスタイルをおくる人たちに規制を加えることを企んだのだと考えている。
夜型の人たちに対してコンビニやスーパーの供給を止めることにより、昼型のライフスタイルに転換せざるを得なくなることを狙っているとしか考えられないのだ。
実際、ロイターの記事(*4)では、京都市は夜型のライフスタイルの見直しの観点からも、コンビニの深夜営業を見直すことを考えているようだ。
だが考えてみれば、「夜型のライフスタイルのなにが悪いというのか」ということについて、論理的な総意など存在しない。
「夜に仕事をすると、蛍光灯などが点けっぱなしになるから、エネルギーのムダである」というなら、昼間に働いている人は、蛍光灯をつけずに仕事をしているのだろうか? 在宅勤務ならともかく、オフィスビルでは昼間でも蛍光灯が点いている。それはコンビニと全く同じである。
そうではなく、そこにあるのは「人は朝起きて、夜には寝るものだ」とか「夜に出歩く人は怪しい」とか「夜に働く職業はまともじゃない」といった、道徳や偏見ばかりであるように、私には思える。
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