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【書評】『五輪ボイコット 幻のモスクワ、28年目の証言』松瀬学著

【書評】『五輪ボイコット 幻のモスクワ、28年目の証言』松瀬学著
『五輪ボイコット 幻のモスクワ、28年目の証言』 松瀬学著
【PJ 2008年06月19日】− 28年前のモスクワ五輪、日本はボイコットした。ソ連によるアフガニスタン侵攻への抗議というのがその理由だという。その裏には再選を目指すジミー・カーター米大統領からの強い圧力があったという。大統領がオリンピックを政治に利用したというわけだ。金メダルが確実視されていた柔道の山下泰裕選手やマラソンの瀬古利彦選手はこのボイコットをどんな思いでかみしめていたのだろう。選手や競技団体役員、そして政府関係者らボイコットで喜怒哀楽を味わった17人のいまだからこそ話せる証言がこの本には満載されている。

 2008年4月、北京五輪の聖火リレーを取材するため、わたしは雨天の長野市内で自転車をこいでいた。JR長野駅前でこの本の著者、松瀬学さんに偶然会った。「またオリンピック取材かよ、小田さんも好きだね」。わたしは内心、(よく言うよ、オリンピック取材狂いは松瀬さんご本人でしょ)と反発していた。語弊があるかも知れないが、松瀬さんは日本を代表するオリンピック・パパラッチなのである。

 フリーの立場でこれほどのオリンピック取材ができるジャーナリストは、世界を見回しても数少ない。わたしが知る限り、「アラウンド・ザ・リングス」のエド・フーラさんと松瀬さんくらいだろう。松瀬さんは今夏開かれる北京五輪も何年も前から取材を重ねている。わたしがオリンピック取材のおもしろさを教わったのもこの人からである。

 よく思い出せないが、1−2年前、松瀬さんから「モスクワ五輪ボイコットを総括するような本を出したい」と話しかけられた。「それ、PJニュースでもうやってしまいましたよ。100回以上の連載で」とその場でわたしは答えた。連載記事を書いた元JOC職員でオリンピック評論家、そしてPJでもある伊藤公さんとわたしの出会いや、連載のいきさつを松瀬さんに話した。モスクワ五輪ボイコットの縦の糸を綴(つづ)ったのが伊藤さんの連載だとすると、それよより克明に肉付けする横の糸が松瀬さんの著書だとわたしは考えている。

 本著はモスクワ五輪ボイコット事件を通して、オリンピックへの政治介入を阻止することの難しさを表現している。そこで、松瀬さんは選手や競技団体、そしてJOCの自立と自律を訴える。役所みたいなマスコミ組織から飛び出したこの人らしい。いま、石原慎太郎都知事や森喜朗JOC委員ら、日本のオリンピック界には名誉やカネに目がくらんだ薄汚れた政治家がまん延しつつある。モスクワの轍(てつ)を踏まないためにも、松瀬さんには批判的なオリンピック取材を続けて欲しい。【了】

■関連情報
ライブドア・ブックス:松瀬学著『五輪ボイコット 幻のモスクワ、28年目の証言』新潮社、1500円(税別)
伊藤公(いとう・いさお)の『モスクワ五輪ボイコットの真相』
『言論江湖』モスクワ五輪ボイコットの真相
PJニュース.net
『言論江湖』 PJ小田の視点
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小田 光康【 東京都 】
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