今週のお役立ち情報
「放送と通信の融合」はメディアの階級化を促すのか(3)
2008年06月18日08時10分 / 提供:PJ
【PJ 2008年06月18日】−
(2)からのつづき。
通信と放送の融合へ。情報通信法(仮称)の特徴
放送と通信の融合がうたわれる以前の1990年代前半、いわゆるICT革命前の日本国内においては、通信分野では家族や企業といった共通の社会的背景に基づく関係者間の情報活動として通信の秘密保護が求められ、現行法制のインターネットについての規制は、一部の違法情報に対する削除対応などにとどまる。一方、概念的には通信の「部分概念」と位置づけられる放送に関しては、公衆を対象とした情報受信者を個別に認識しない情報活動だとして、「放送法」をはじめとする放送法制において包括的に規律されている。
しかしながら、従来の通信・放送の垣根を越えてコンテンツビジネスや情報伝送ビジネスが発展し、通信法規と放送法規が混合的に適用され得るようなサービスが増加している中で、双方の規制を峻別したままでは、新たなサービスの拡大・発展に支障が生じかねないとして、総務省は2004年、通信と放送を融合させ、包括的に規制を加える法体系が必要との考えを打ち出したのであった。
総務省は、インターネットを介した情報流通が社会に与えるインパクトは、情報が公然性を有するのであれば、放送と通信では本質的な違いはなく、ユビキタスネット社会では、情報通信ネットワークでの情報流通を担う当事者は、放送・通信の区別なく、等しく「安全・安心なネットワーク社会」を構築するための責任を果たすべきであるとの立場を取っている。そのための規律の在り方についても、一元的に検討することが適切であるとした。
その法制である情報通信法(仮称)の基本理念には、1)情報の自由な流通、2)情報通信技術のあまねく享受するユニバーサルサービスの保障、3)情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保−の3点を掲げた。この基本理念を体現するための保護法益として「公正競争促進・利用者保護」「事業、業務運営の適正性の確保」「ICTイノベーションの促進」を位置づけた。
「通信と放送の総合的な法体系に関する研究会」では法体系構築に当たってレイヤー型法体系への転換を主張した。すなわち、1)他者間の通信を疎通させることを業とするのか、自己の作成した情報を送信することを業とするのかという事業者の果たす機能による区分と、2)伝送される情報が秘匿性を有するのか、公然性を有するものかという区分の2つを基本にした。
そのうえで、自己作成のコンテンツを送信する地上テレビ放送といったコンテンツレイヤーに属する産業に対しては、表現の自由を保障すると共に、伝送される情報が公然性を有するが故に公共の福祉との適合の観点から規律されることが検討されるべきとした。一方、他者間の情報を疎通させる電話会社などの伝送インフラレイヤーに属する産業については、その情報内容については秘匿性を有するべきものであるが故に、通信の秘密確保の観点から規律の適用が検討されるべきとした。
また、コンテンツを効率的・効果的に伝送インフラで配信する機能を持つポータルサイトなどのプラットフォームについては、今後の法体系のあり方を検討する上で無視できない存在であるが、これら2つのレイヤーにも当てはまらないことから、いったん独立したレイヤーとして捉え、情報の自由な流通の観点からあり方について検討すべしとした。その際、規制緩和と集約化と包括的な利用者規定の整備を念頭に置くこととした。
メディアを階級化する意図とは・・・
研究会報告では、情報通信ネットワークを流通するコンテンツについて、コンテンツが公然性を有するものと公然性を有しないものに区分した。まず、公然性を有するコンテンツに関して、1)現行の放送及び今後登場することが期待される放送に類比可能なコンテンツ配信サービス(「メディアサービス(仮称)」)については、「特別な社会的影響力」の程度によって、「特別メディアサービス」と「一般メディアサービス」に細分するとした。
これらの区分については判断指標として、1)映像/音声/データといったコンテンツの種別、2)画面の精細度といった当該サービスの品質、3)端末によるアクセスの容易性、4)視聴者数、5)有料・無料の区別――などを示した。その際、恣意的な運用を排除するため、指標は可能な限り外形的に判断可能なものとする必要があると補足した。
いずれの「メディアサービス」については放送法制の「必要最低限のルールを自律原則とともに整備し表現の自由を確保する」という理念を堅持しつつ、情報の自由な流通を確保する観点から、技術中立的・一元的にコンテンツ規律を適用することが適当であるとした。さらに、特別メディアサービスに関しては、既存の放送法制を踏襲することとした。一方、「メディアサービス」以外の公然性を有する情報通信コンテンツ(「オープンメディアコンテンツ(仮称)」)については、表現の自由の保障を最大限確保することとした。その上で、表現の自由と公共の福祉を調整する規律として、「違法コンテンツ」の最低限の流通対策を講ずるとともに、「有害コンテンツ」についても規律の可能性について検討すべきであると回答した。
また、公然性を有しないコンテンツについては、引き続き通信の秘密を最大限保障することとするとした。さて、情報通信法(仮称)の理念については、もっともであり、異論を挟む余地は無いように思える。一方、この理念を実現させるためのレイヤー化法制についてはどうだろうか。これらメディアのレイヤー(階層)化は階級化、つまりメディアの身分制度につながるのではないか。次回では各階層について見ていくことにしよう。【つづく】
■関連情報
PJニュース.net
『言論江湖』 PJ小田の視点
「放送と通信の融合」はメディアの階級化を促すのか
第1回
第2回
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 小田 光康【 東京都 】
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通信と放送の融合へ。情報通信法(仮称)の特徴
放送と通信の融合がうたわれる以前の1990年代前半、いわゆるICT革命前の日本国内においては、通信分野では家族や企業といった共通の社会的背景に基づく関係者間の情報活動として通信の秘密保護が求められ、現行法制のインターネットについての規制は、一部の違法情報に対する削除対応などにとどまる。一方、概念的には通信の「部分概念」と位置づけられる放送に関しては、公衆を対象とした情報受信者を個別に認識しない情報活動だとして、「放送法」をはじめとする放送法制において包括的に規律されている。
しかしながら、従来の通信・放送の垣根を越えてコンテンツビジネスや情報伝送ビジネスが発展し、通信法規と放送法規が混合的に適用され得るようなサービスが増加している中で、双方の規制を峻別したままでは、新たなサービスの拡大・発展に支障が生じかねないとして、総務省は2004年、通信と放送を融合させ、包括的に規制を加える法体系が必要との考えを打ち出したのであった。
総務省は、インターネットを介した情報流通が社会に与えるインパクトは、情報が公然性を有するのであれば、放送と通信では本質的な違いはなく、ユビキタスネット社会では、情報通信ネットワークでの情報流通を担う当事者は、放送・通信の区別なく、等しく「安全・安心なネットワーク社会」を構築するための責任を果たすべきであるとの立場を取っている。そのための規律の在り方についても、一元的に検討することが適切であるとした。
その法制である情報通信法(仮称)の基本理念には、1)情報の自由な流通、2)情報通信技術のあまねく享受するユニバーサルサービスの保障、3)情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保−の3点を掲げた。この基本理念を体現するための保護法益として「公正競争促進・利用者保護」「事業、業務運営の適正性の確保」「ICTイノベーションの促進」を位置づけた。
「通信と放送の総合的な法体系に関する研究会」では法体系構築に当たってレイヤー型法体系への転換を主張した。すなわち、1)他者間の通信を疎通させることを業とするのか、自己の作成した情報を送信することを業とするのかという事業者の果たす機能による区分と、2)伝送される情報が秘匿性を有するのか、公然性を有するものかという区分の2つを基本にした。
そのうえで、自己作成のコンテンツを送信する地上テレビ放送といったコンテンツレイヤーに属する産業に対しては、表現の自由を保障すると共に、伝送される情報が公然性を有するが故に公共の福祉との適合の観点から規律されることが検討されるべきとした。一方、他者間の情報を疎通させる電話会社などの伝送インフラレイヤーに属する産業については、その情報内容については秘匿性を有するべきものであるが故に、通信の秘密確保の観点から規律の適用が検討されるべきとした。
また、コンテンツを効率的・効果的に伝送インフラで配信する機能を持つポータルサイトなどのプラットフォームについては、今後の法体系のあり方を検討する上で無視できない存在であるが、これら2つのレイヤーにも当てはまらないことから、いったん独立したレイヤーとして捉え、情報の自由な流通の観点からあり方について検討すべしとした。その際、規制緩和と集約化と包括的な利用者規定の整備を念頭に置くこととした。
メディアを階級化する意図とは・・・
研究会報告では、情報通信ネットワークを流通するコンテンツについて、コンテンツが公然性を有するものと公然性を有しないものに区分した。まず、公然性を有するコンテンツに関して、1)現行の放送及び今後登場することが期待される放送に類比可能なコンテンツ配信サービス(「メディアサービス(仮称)」)については、「特別な社会的影響力」の程度によって、「特別メディアサービス」と「一般メディアサービス」に細分するとした。
これらの区分については判断指標として、1)映像/音声/データといったコンテンツの種別、2)画面の精細度といった当該サービスの品質、3)端末によるアクセスの容易性、4)視聴者数、5)有料・無料の区別――などを示した。その際、恣意的な運用を排除するため、指標は可能な限り外形的に判断可能なものとする必要があると補足した。
いずれの「メディアサービス」については放送法制の「必要最低限のルールを自律原則とともに整備し表現の自由を確保する」という理念を堅持しつつ、情報の自由な流通を確保する観点から、技術中立的・一元的にコンテンツ規律を適用することが適当であるとした。さらに、特別メディアサービスに関しては、既存の放送法制を踏襲することとした。一方、「メディアサービス」以外の公然性を有する情報通信コンテンツ(「オープンメディアコンテンツ(仮称)」)については、表現の自由の保障を最大限確保することとした。その上で、表現の自由と公共の福祉を調整する規律として、「違法コンテンツ」の最低限の流通対策を講ずるとともに、「有害コンテンツ」についても規律の可能性について検討すべきであると回答した。
また、公然性を有しないコンテンツについては、引き続き通信の秘密を最大限保障することとするとした。さて、情報通信法(仮称)の理念については、もっともであり、異論を挟む余地は無いように思える。一方、この理念を実現させるためのレイヤー化法制についてはどうだろうか。これらメディアのレイヤー(階層)化は階級化、つまりメディアの身分制度につながるのではないか。次回では各階層について見ていくことにしよう。【つづく】
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第2回
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