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【番長・杉山茂樹の観戦記】非効率なサッカーを続ける優勝候補スペイン

【番長・杉山茂樹の観戦記】非効率なサッカーを続ける優勝候補スペイン
先制点をあげたフェルナンド・トーレス
【Photo by Witters/PHOTO KISHIMOTO】
 どうも人から、スペインファンであり、オランダファンであるように僕は見られているようだ。EUROの現場にいると、色んな人と出会う機会がある。中には、初対面の人もいれば、面識はあっても、細かい話をしたことがなかった人もいる。スペインやオランダが勝つと、主に活字を通して僕の存在を知っていた人に限って「おめでとうございます」などと、挨拶代わりのような声をかけてくる。

 しかし僕には、贔屓のチームは一つもないと記したことはあっても、●●のファンであると記した記憶はない。近著の「4-2-3-1」でも、両国のサッカーを概ね肯定する形で記してはいるものの、ファンだとか、ご贔屓のチームだとかは一言も書いていない。お門違いもいいところだ。

 万が一、スペイン万歳、オランダ万歳と記したとしても、それはその時に限った話だ。次回も万歳と言うつもりはない。次回は白紙。翌日には、まったく別のチームを好きになる自分でいたいと思っているくらいだ。

 クラブサッカーについても同じだ。シーズンが変われば、監督が交代すれば、いったんすべてを白紙に戻す。過去を消去するつもりで臨もうとしている。

 そもそも僕は、不偏不党をモットーにするジャーナリストだ(!)。思い込みや変な入れ込みを持つべきではない立場の人間だ。ファンが高じた末に、この職業に就いたことは確かだが、いまやファンではない。ましてや、スペイン人でもなければオランダ人でもない。スペイン在住者でも、オランダ在住者でもない。

 前置きが少々長くなってしまったのは、いまいちど、今回のスペインのサッカーはよろしくないと、声を大にして言いたいからだ。初戦の対ロシア戦でも、その兆候は見られたが、続く第2戦の対スウェーデン戦で、その思いは決定的になっている。メンバーには、いつになく好選手が名を連ねているというのに、サッカーの質は限りなく悪い。それこそ、嫌いになりそうなぐらい……。ガツンと言いたくなる理由だ。

 布陣は一言でいえば4−4−2。前線でフェルナンド・トーレスとコンビを組むビジャが、やや下がり目に位置するので4−4−1−1、あるいは4−2−3−1と言っても良いだろう。しかし世の中に存在する一般的な4−4−1−1(4−2−3−1)との違いは、ピッチを俯瞰で眺めれば一目瞭然になる。攻撃に絶対的な幅が足りないのだ。4−「4」−1−1の「4」の左右(4−2−「3」−1の「3」の左右)に構えるイニエスタとシルバは、気がつけば中に絞っている。

 例えば、右のイニエスタは試合当初は、外に開いていたが「縦勝負」に失敗するたびに、良いところを見せたいという願望からか、自分のプレイしやすい場所にポジションに移していった。

 その結果、中盤の底を務めるセナがボールを持った瞬間、4人のスペイン人選手がそこからゴールを結ぶ線上に重なっていることも珍しくなかった。ピッチに描かれるこの時の絵を数字で表せば、4−2−2−1−1になる。これではサイドバックが攻め上がらない限り、サイド攻撃は行えない。サイドチェンジも利かない。ピッチに美しい絵が描けないのだ。ビジャかフェルナンド・トーレスのどちらかが、左右に流れた場合も、サイドを深くえぐることはできたが、すると中央が人数不足に陥る。巧い中盤選手たちがゴール前に突っ込んでくることはないのだ。パスやボール操作は巧くても彼らには決定力がない。

 難易度の高い、巧そうに見えるパス回しも、最後の段階では確実にカットされる。どう考えても通りそうもないパスを通そうとしては、失敗の山を築くことになる。そしてボールを奪われるや、途端に混乱する。ボールと相手を追いかけ回す事ができにくい態勢で、攻守が入れ替わるからだ。

 スウェーデンのエース、ズラタン・イブラヒモビッチが、最後までピッチに立っていれば、スペインが2−1で勝利したこの試合の結果は、逆になっていたと僕は見ているが、ともかく、こんな非効率的なサッカーを90分間延々、見続けさせられると、彼らが、頭の悪い集団にさえ見えてくる。

 だが、前回も触れたとおり、これは日本代表が陥りがちな症状とそっくりなのだ。巧い中盤選手が中央に乱立する傾向である。スペインの不甲斐ないサッカーを嘆く権利は、本来、我々にはない。スペインの方が、日本より中盤選手の技術的に高いわけだし、同様にFWの決定力にも決定的な違いがある。スウェーデンのように華はないけれど、カチッとした4−4−2で迫ってこられると、日本はスペイン以上に哀れな姿をさらけ出すに違いない。W杯でベスト16を狙うなら、スウェーデンは勝っておきたいチームになるのだが……。

 もう一つ、僕の贔屓チームだとされているオランダには、スペイン以上の可能性を抱かせる。このチームのマックス値はおそらく大会随一。交代選手を含め、ここまでFW陣に破壊力を備えた選手を揃えたチームも珍しい。オランダとまともに打ち合って勝てるチームは見当たらない。しかしその一方で、オランダに穴がある事もまた確かな事実だ。パンチは強烈だがガードは甘い。

 とても大味なサッカーだが、高級感も兼ね備える。フリット、ファン・バステンを擁した88年のチームと似た特徴がある。今回も当時のように、打ち勝ち続けることができるのか。それともいつものように(?)コケるのか。ただ、オランダ絡みの試合は面白いという定説は、 今回もしっかり受け継がれている。エンターテインメント性はどの試合よりも高い。そういう意味で言えば、僕はオランダのファンだといえる。どこよりも外れの少ない試合をしてくれるチームは、第3者的な立場でこのユーロを観戦している僕には、とてもありがたい存在なのである。


<関連リンク>
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