携帯撮影を批判的に取り上げた各週刊誌の記事

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   秋葉原通り魔事件の被害者を携帯などで撮影した人たちが、「不謹慎」などと叩かれ、論議になっている。市民がネットで次々に情報発信したこの事件では、マスコミと同じようなモラルが問われているようだ。

「不謹慎だから止めて下さい!」

   通り魔事件では、週刊誌各誌が、凄惨な現場にレンズを向けた人たちにも矛先を向けている。

   週刊新潮2008年6月19日号では、亡くなった2人の友人である東京電機大学生の怒りを紹介した。この学生は、応急処置のできる人がすぐに集まったものの、倒れた2人を携帯電話やデジカメで撮っている野次馬が周りにたくさんいたと告白。

「不謹慎だから止めて下さい!」

   こう叫んだが、みな止めようとはしなかったという。学生は、ミクシィの日記でも、このことを書き、「なんなんだよお前ら、馬鹿ばっか・・・ カメラぶっ壊してやろうかと、携帯逆折りしてやろうかと そう思った」「・・・なんで? 悔しくて涙が止まらなかった」と打ち明けている。

   被害者をケータイで撮りまくるアキバ系のイヤな感じ。こんな刺激的な見出しをつけたのが、週刊文春6月19日号。記事では、「すぐメールで送る」と興奮して携帯で被害者を撮ったり、駅前の歩道橋上や交差点で携帯をかざしたりする若者たちに言及した。そして、「非常にイヤな感じ」とぼやく現場の記者の声を伝えている。

   また、女性セブン6月26日号では、文春と同様な見出しを掲げ、「不気味な光景」と指摘した。「写真なんか撮るな!」。こう怒る警察官もいたが、みなソッポを向き、写真を見せ合っていたとしている。

   こうして撮られた写真や動画は、友人などの間で私的に見られたらしい。その一方で、ネット上の掲示板や動画サイトなどに投稿する人も多かった。惨劇の現場にいた人が発信しただけに、テレビよりも情報が早く、しかも、書き込みや画像に直接体験者ならではの迫力があった。

「私は不謹慎なのでしょうか?」

   しかし、人としてのモラルを考え、複雑な心境を漏らす投稿者もいた。

   動画配信サイト「UstreamTV」で実況中継したあるプログラマー。自らのブログ「Recently」の日記で、こう悩みを打ち明けた。

「これはただの報道ごっこであり、そんなの撮るんじゃない。不謹慎だ。とか思われるだろうし、警官の人にも『人の不幸を撮って楽しいか?』とか言われました」

   現場では、映像のネタになると思って撮り始め、視聴者が1000人を超えるとかなり興奮したという。投稿は反響を呼んで、2ちゃんねるにもリンクが張られた。「もしかしたら報道のカメラマンはこういう気持ちになってる人もいるんだろうなぁ〜」とも漏らしている。

   同様に、UstreamTVで中継した化学関係の仕事の人は、ブログ「ぐんにょりくもりぞら」の日記で、「野次馬根性がなかったとは言い切れません。ustの閲覧者が増えていき数百人を超えた辺りである種の高揚感があったのも認めます。そんな私は不謹慎なのでしょうか?」と揺れる心の内を明かした。中継したのは、「その場での出来事を、あの場の空気を中継したかったからした。ただそれだけでした」という。

   一方で、投稿の意義も感じているようだ。前出のプログラマーは、「それでも、野次馬(一般市民)の人たちが2次的被害にあってないとか、警察・救急の方々の仕事ぶり、犯人の逮捕状況(このときは逃走中)などリアルタイムで伝えることができただろうし、事件を知ってから現場に急行したテレビ局の報道の人達よりは多くの情報を伝えられたと思う」と日記につづっている。

   「ガ島通信」で知られるブロガーの藤代裕之さんは、日経ネットの6月10日付コラムで、投稿者モラルの問題を取り上げた。そこで、藤代さんは、「誰もが発信できるとなると、『野次馬』と『報道』の違い、そしてマスメディアの正当性も揺らいでくる」として、「これまでマスメディアの人たちが経験した葛藤が誰にも起き得る」と指摘している。

   ライブドアでは、世論調査サイトで、事件現場の撮影がモラルに反すると思うかどうかのアンケートをした。その結果、「思う」が66.89%で、「思わない」が33.1%だった。面白半分の撮影には否定的な一方、撮影の社会的意義も認めざるをえないとの声のようだ。

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