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水郷初夏の風情(中)=京にも劣らぬ潮来の古刹

2008年06月10日06時48分 / 提供:PJ

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水郷初夏の風情(中)=京にも劣らぬ潮来の古刹
潮来には「あやめ祭」に出かけた人が、必ず立ち寄る寺がある。臨済宗の古刹で、源頼朝が建立、水戸光圀が再建したと伝えられる雲海山長勝寺である。(撮影:今藤泰資) 写真一覧(6件)
(上)からのつづき。潮来には「あやめ祭」に出掛けた人が必ず立ち寄る寺がある。臨済宗の古刹(こさつ)で、源頼朝が建立、水戸光圀が再建したと伝えられる雲海山長勝寺である。800有余年の歳月を重ねた寺の境内には、松尾芭蕉の句牌があり、頼朝の菩提(ぼだい)に寄進したといわれている銅鐘は国指定重要文化財だという。水ぎわばかりが潮来風景ではなかったのだ。思いがけず潮来の歴史の深さを感じることになる。

 人ごみの混雑から逃れたわたしは、躊躇(ちゅうちょ)することなく長勝寺に向かった。光圀によって再建された唐様建築の本堂が来訪者を荘厳(そうごん)に迎える。鎌倉の円覚寺舎利殿とよく似た茅葺(かやぶ)き造りは想像以上に分厚い。年配のボランティアガイドが「見事でしょう。京都や鎌倉の人さえ驚くのですよ」と、得意げに解説する。境内にはまた、潮来の最盛期に地元の芸者衆が寄進した山門がある。なぜか仁王像がない。本来あるべきすざまじい形相の仁王様のなさが、特異な印象を残している。松尾芭蕉の句碑には、「たび人と 我名よばれむ はつしぐれ」とあるらしいが、文字はほとんど判読不能だ。そのことがかえって興味をそそられる。

 本堂の斜め向かい、市指定天然記念物の菩提樹は、幹周が一抱えほどの巨木で、隣には創建の年号にちなんだ「文治梅(ぶんじばい)」と名付けられた梅の古木もあった。頼朝公手植えの梅のあたりから、突然、静寂を切り裂く鋭いウグイスの声。「梅にウグイス」などという悠長な音色ではない。同行の一人が、「ハッキリし過ぎている。どこかにスピーカーがあるのかも」と酔狂な話題を持ち出して笑わせる。

 頼朝と潮来の関係は不明だが、天下の副将軍水戸黄門の「漫遊記」は有名だ。常陸国太田の里で隠居生活を送った光圀が、水利のよい潮来に来訪したことは想像にかたくない。仙台や山形の米を江戸に送るルート上に潮来が位置するからだ。仙台港から海路那珂湊に上がった米などは、水戸の備前掘から涸沼、北浦、霞ヶ浦へと出、利根川を遡航。関宿から江戸川を下ったのである。潮来は往時のいわばジャンクション、「交通の要」という意味がこの寺の由来に見え隠れしている。

 寺内には、サクラやウメやモミジの木が多い。それぞれの季節にはさぞ見事であろうと思わせる。新緑の道をさらに「奥の院に進めば、抹茶の用意がある」と先刻のボランティア。人気のない奥の部屋には先客が二組。床の間には三つ葉葵の紋章が入った「御朱印箱」がでんと安置され、格子細工の小窓から明かりがもれてくる。つくばいには、ガマの置物があり、周囲を睥睨(へいげい)している。あたりは静寂。ヤブ蚊が多いと見えて、蚊取り線香がたかれている。住職の娘さんであろうか、小柄な女性がかいがいしく注文を受ける。出された抹茶セットには、アジサイ色の和菓子が添えられ、さらにアジサイ模様の砂糖菓子まであって500円。とめどない話題を友人らと話し合い、時にスズメバチの巣を発見して家人に伝えたりする2時間。

 京都はわが庭、鎌倉も縁者がいることから、幾度となく訪れたが、茨城でかような静寂は初体験であった。寺を辞去したわたしの眼前に「和泉屋本店」の大看板が突然現れた。漬物屋だ。早速この地方の名産「鉄砲漬け」を買い求めた。「茨城は、なかなか奥が深い土地」、往路の高速船の黒田船長の言葉を思い出す。帰路もまた、「霞ヶ浦秘話」を聞けるかもしれないな。知っているようで知らない茨城…、淡い期待が彷彿(ほうふつ)と湧(わ)きあがった。【つづく】

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パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資

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円覚寺  頼朝  重要文化財  芸者  長勝寺  
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