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韓流時代劇にハマる中高年オヤジの心理とは?

韓流時代劇にハマる中高年オヤジの心理とは?

韓流スターのヨン様ことペ・ヨンジュンをひと目見たさに、関西空港にものすごい数のファンが出迎えたとか、ヨン様が出演するイベントが全国の映画館にライブ中継され、これまた大勢の日本人ファンが押しかけたとか、相変わらず韓流スターの人気は高い。もちろん空港にやってきたのは女性ファンがほとんどだが、実は中高年の男性にも隠れたヨン様ファンがいる。韓流時代劇にはまったオヤジたちは“ヨン様命”の女房以上に韓流スターに詳しい。今、日本のオヤジたちは韓流時代劇に夢中なのだ。

日本で韓流ドラマのブームをつくったのは、いうまでもなくチェ・ジウとペ・ヨンジュンの恋愛ドラマ『冬のソナタ』だ。妻や恋人はては年老いた母親までもが“ヨン様”のとりこになってしまい、オヤジたちは「なーにがヨン様だ、ケッ」と羨望半分、嫉妬半分で馬鹿にしていた。ところが一過性と思われた韓流ドラマがその後も次々と日本のテレビで放映されたり、レンタルビデオ店に並ぶにつれ、少しずつオヤジたちの韓流ドラマを見る目が変わってきた。   

会社員の神谷一朗さんは課長として多忙な日々を送っているが、会社の帰りには必ず近所のレンタルビデオ店に寄り道をするのが日課となっている。韓流ドラマの続きを借りたり新作を探すのが目的だ。「私はもともと韓流ドラマなんて全然興味なかったんです。ヨン様や『冬のソナタ』という名前ぐらいは知ってましたけど……」。ところが、ある土曜の夜、神谷さんが接待ゴルフから帰ると女房や子どもたちが一心不乱にテレビ画面を食い入るように見ていた。頭に座布団みたいなものを乗せて韓国風の衣装を着た女優さんが一生懸命何かを訴えているシーン。そう、韓国の美人女優イ・ヨンエが主役の『宮廷女官チャングムの誓い』の1シーンである。

「私はそのままリビングに突っ立ったまま見ていました。ドラマの展開、テンポ、大道具、小道具すべてが見ていて新鮮でした。それに役者さんたちの熱演もよかった」。神谷さんはその日以来、韓流ドラマのとりことなり、近所のレンタルビデオ店に通うようになった。「今は、百済、新羅、高句麗の三国時代を舞台にした『薯童謡(ソドンヨ)』という時代劇にはまっています。ただし、時代劇以外はまったく韓流ドラマには興味がありませんが……」と神谷さんはいう。

韓流時代劇は『宮廷女官チャングムの誓い』以後、さまざまなものが日本に入ってきている。主な作品に『薯童謡(ソドンヨ)』、『ホジュン』『海神(ヘソン)』、『商道(サンド)』、『朱蒙(チュモン)』、そしてペ・ヨンジュン主演の『太王四神記』などがある。作品の時代背景は『宮廷女官チャングム』のころと同じ朝鮮王朝時代のほか、百済や新羅などの古い時代から近世までさまざまだ。

自営業の柳田修二さんは韓流時代劇の魅力をこんなふうに言う。「韓流時代劇はとにかく長いんです。日本のドラマみたいに12〜13回で終わりなんてほとんどなくて、50回とか55回とか見るほうも疲れるほど長い。でも、それだけ見応えもあるんです。特に韓流の時代劇は殺陣が素晴らしい。刀を持ったままくるくる回ったり空中を飛んだり。普通はあり得ないと思うんだけど、すごく新鮮です。あと衣装のデザインや色が斬新でいいですね」。

そう、最近作られる韓流ドラマは、とにかく古代には絶対染められないだろうビビットな赤や黄色、青の衣装を着て悪と戦う。実際、歴史研究家から時代考証に問題ありというクレームがついたと聞くが、そこは大目に見てもよいのではないか。確かに『海神』を見てると、ヒーローはロン毛だし、ヒロインも眉毛の細い今風メイクのアガシ(お嬢さん)で、絶対に新羅のころにはいなかったはずだが、韓流ドラマだと不思議と違和感がない。

「正直、韓流ドラマは突っ込みどころがたくさんあります。でもそれ以上に、脚本がいい。ストーリーの基本は勧善懲悪だけど、悪人の描き方に愛情があって、血も涙もある人間として演じる。だからつい悪人側にも肩入れしてしまうんですね。また含蓄のあるいいセリフもたくさん出てきます。今の日本の脚本家だと、気恥ずかしくて書けないようなセリフを、ぬけぬけと、そして堂々と語ってしまうところがツボにハマるんです」……と解説するのは、カルチャーセンターの講師で心理診断の達人、前川みやこ先生だ。

ご自身も韓流時代劇フアンだという前川先生は、「韓流時代劇が好きな中高年の方は、自分の姿をドラマの中に投影しているのではないでしょうか」と、語る。「最近の日本のドラマは、キャラクターやシチュエーションに凝るあまり、“あり得ない設定”や“極端な人物描写”が多い。それだけドラマの中の登場人物に感情移入しにくいんです。その点、韓流時代劇は設定がシンプル。それでいながら、人物像の描き方は複雑。単純な善人、単純な悪人の描写ではなく、ひとりの人間の中に悪も善もあり、葛藤がある。そこが等身大の自分に近く、感情移入しやすいのだと思います」。

韓流時代劇のヒーローはたいてい身分の低い家に生まれ、さまざまな苦労を経てのし上がるのだが、その過程での苦労が半端ではないのも特徴だ。どのドラマにも必ずといっていいほど登場するのが牢獄のシーン。理不尽な罪で投獄され権力者に死の淵まで追いやられるが、必ず助けが現れ自由の身となる。だが次の回ではまた権力者に追われ,いじめられる。延々とこうしたシーンが繰り返される。いったいいつになったら平穏な日が来るのか。

「あげく韓流時代劇はこうした苦労を経てヒーロー、ヒロインが必ずしも幸せで終わるとは限らないんですよね。ハッピーエンドではなく、見ているほうとしては“それはないだろう”という終わり方をするドラマも少なくないんです」。正直、韓流時代劇には、今の日本のドラマにはない“誰もが理解でき、感情移入しやすいドラマの基本”があると、前川先生は語る。日本の国技、大相撲が外国人力士によって支えられているように、日本のドラマ市場もやがては韓流ドラマに支えられるようになるのかもしれない。(取材/XIXOX中林晃子)


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