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登山事故の体験者が現地を検証し、安全策を考える=雪峰の八ヶ岳・硫黄岳(3)

2008年05月22日06時12分 / 提供:PJ

pj
登山事故の体験者が現地を検証し、安全策を考える=雪峰の八ヶ岳・硫黄岳(3)
硫黄岳(長野県)の噴火口跡は荒々しい断崖絶壁だ。昨年の4月4日に、写真中央の稜線から転落してしまった。(撮影:穂高健一、15日) 写真一覧(5件)
(2)からのつづき。昨年の硫黄岳登山の目的は、PJの肥田野さんにピッケルの制動技術を教えることだった。練習に入った。雪上で後ろ向きに滑ったり、横向きに滑ったりしながら、ピッケルで身体を止める。慣れてくると、緩斜面から、角度のある面に移る。

 『人間の頭は重い。多くの事故は頭から滑り落ちる。練習ではあえて頭から滑りながら、ピッケルで身体を止める。そこまでマスターする必要がある。同時に、身体で覚える』それは次回の課題とし、40分間ほどで切り上げた。そして、硫黄岳山頂に向かった。

 山頂は流雲からの強風で、ガスもかかる。寒いし、昼食は後回しにして下山を開始した。数分後、2つ目のケルン(石を積み上げた道標)にさしかかった。そこは硬いアイスバーンだった。「稜線のギリギリで、危険だ。トラバース(横移動)しよう」と、肥田野さんに指示した。

 身体のムキを変えた瞬間、登山靴の靴先に重心が移り、爪がないので転倒した。ピッケルを突き刺す。その間合いが取れないまま、滑って稜線から切り立つ断崖に落ちていったのだ。

 今年の5月15日。八ヶ岳・硫黄岳(2760メートル)北面の雪面を登りつめた。第2ケルン(2700メートル)までやってきた。昨年の滑落地点だ。あえて噴火跡の荒々しい断崖絶壁をのぞいてみた。ダム湖の堤防上から眼下をみる、そんな感覚に似ている。

 垂直に切り立った断崖は目測で、約15メートル。落下していく、宙に浮いた身体が、左肩寄りの背中から、急斜面の雪面に落ちた。たたき付けられたが、頭はまったく打たなかった。『ザックがクッションになった。よかった』。この思いが脳裏を横切った。

 もしも頭部打撲で、脳震盪(のうしんとう)を起していたならば、雪面にピッケルを打ち込む次の動作に移れなかったはずだ。

 硫黄岳の滑落現場に来て、気づいたことがある。雨降る登山道では、枯葉、木の根、岩の上では何度も転倒する。身体が浮いた瞬間、足を投げだし、背中のザックから地面に落ちるように心がけている。それがわたしの身体を最も痛めない方法だから。ムリに腕を突いたり、足で踏ん張ったり、着衣を汚さないようにしたりすると、不自然で捻挫とか、骨折とか起こりやすい。

 過去から単独行が多かった。一度登山計画を立てると、多少の悪天候でも出掛けるのが常だ。他方で、捻挫、骨折は生命を脅かされる、という意識がある。長年、転倒すれば、背中のザックから落ちる癖というか、その方法が身についていた。被害はザック・カバーの破れだけですむ。

 硫黄岳の切り立つ約15メートルの断崖から落下するとき、無意識の意識で背中から落ちたのかもしれない。【つづく】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一

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PJ  登山  強風  噴火  
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