【眼光紙背】どうしてもセックスがやめられない人たち
2008年05月28日11時00分 / 提供:眼光紙背
門倉貴史の眼光紙背:第34回
07年9月に「ブラックスネークモーン」という米国映画が日本で公開されて、話題を集めた。この映画は、「セックス依存症」(Sexual addictions)で自暴自棄となった白人少女(クリスティーナ・リッチ)と妻に逃げられた黒人男性(サミュエル・L・ジャクソン)の交流をテーマにしている。米国では、1980年代から「セックス依存症」にかかる人が増えるようになったと言われる。米俳優のマイケル・ダグラスも、かつて「セックス依存症」にかかり、92年に治療のために入院した経験がある(英女優キャサリン・ゼタジョーンズと結婚する前)。
では、「セックス依存症」とはどのような症状なのか。「セックス依存症」というのは、誰かとセックスをしたいという気持ちを自分自身の意志では抑えられなくなり、不特定多数のパートナーとセックスを繰り返す一種の病気である(性嗜好障害)。そこには、本当の意味での恋愛感情は存在しない。セックスをした後に自責の念にかられることが多いが、それでもセックスをやめることができない。
医学博士のパトリック・カーンズ(Carnes, Patrick)が92年に発表した著作『Don’t Call it Love』によると、米国人男性の8%、米国人女性の3%、人数にして約1500万人もの人が「セックス依存症」にかかっていると報告されている。
「セックス依存症」になるきっかけは、多種多様であるが、パトリック・カーンズ博士の研究では、「セックス依存症」を患っている人の6割は、思春期に虐待を受けるなどの経験があり、そうした精神的なショックが、セックスの快楽に逃避する要因になっていると指摘されている。
「セックス依存症」の人は、セックスをすることで、一時的にではあるが、不安や孤独感から開放される。冒頭で紹介した米国映画「ブラックスネークモーン」に登場する少女も、幼少期の虐待が原因で「セックス依存症」になったという設定になっている。
「セックス依存症」は「アルコール依存症」や「ギャンブル依存症」と同様、ストレス社会に生きる現代人に特有の病気で、近年では米国だけではなく、日本においても「セックス依存症」になる人が増えていると言われる。
「セックス依存症」になっても、自分の生活や周囲の人の生活に大きなダメージはないないと考える人がいるかもしれないが、「セックス依存症」は、副次的に様々な問題を引き起こす非常に危険な病気で、軽く考えるのは禁物だ。
たとえば、借金をしてまでもソープランドやファッションヘルス、イメージクラブ、ピンクサロン、キャバクラ、ホストクラブといった風俗店に通いつめるようになり、最終的に資金繰りができなくなって自己破産することがある。結婚している人の場合には、不倫などを繰り返すようになるため、それが原因で配偶者と離婚することもある。
また、「セックス依存症」にかかると、寝ても覚めてもセックスのことで頭がいっぱいになるため、仕事に集中できなくなってくる。その結果、仕事の能率が著しく低下して、会社から解雇されてしまうケースもある。
さらに、一番恐ろしいのは、不特定多数のパートナーと次々にセックスをするため、性感染症やHIVに感染するリスクが高まるという点だ。日本で性感染症をわずらう若者が急増しているが、その背景のひとつには「セックス依存症」になっている人たちが増えていることがあると考えられる。
セックスに対する欲望がうまくコントロールできず、自分が「セックス依存症」かもしれないと思ったら、カウンセラーに相談したり、専門医による精神療法を受けたほうがいいだろう。1992年には、「セックス依存症」からの回復を目的として自助グループの「無名の性依存症者の集まり」(SA)という回復プログラムが日本でも誕生している(米国では1978年にカリフォルニアで誕生している)。
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