この4月より特定健診・特定保険指導(いわゆるメタボ健診)がスタートした。検査にあたって「ウェストサイズ」「脂肪」「血糖値」などの改善が指針となっていることを考えれば、これはもう国民総ダイエットが法の下で推進されているといってもいいだろう。
  メタボ対策は「適度な運動」「カロリーを抑えた栄養バランスのとれた食事」「十分な睡眠」「禁煙」「ストレスの少ない生活」を送ることに尽きる。

 しかし、現代人にとって、この5つの対策を全て満たすように取り組むことは容易なことではない。なかでも、メタボリック症候群を克服する上で、効果を上げることがわかっていながら、なかなか続かないのが、食生活の管理であり、それを維持するためのダイエットだ。ところが、このダイエットが曲者で、途中で挫折した経験をお持ちの方も少なくないだろう。

 アサヒビールグループが行った消費者調査によれば、ダイエットに挫折する理由として「空腹に耐えられないとき」56%、「口寂しさに耐えられないとき」46%と、ダイエットの成否は、いかに「空腹感」を克服できるかにかかっているといってもいいだろう。

  そんな折、この3月にアサヒビールが発表した、たんぱく質成分に期待が集まっている。その名も「満腹たんぱく 」だ。大豆たんぱく質成分の一種には、胃への残留時間が長く、満腹感を持続させる効果があるらしい。つまり、たんぱく質成分の中でも“腹持ち”の違いがあり、「満腹たんぱく」を使った商品を食べると、結果として口にする食べ物の総量が減ることにつながるというのだ。

 同社では、この「満腹たんぱく」を加えたダイエット食品を次々と発売していく予定だという。これはまさに「飲めばやせる」夢の食品であり、運動する時間も気力もないという人々には吉報といえよう。

 この効能が事実なら、筆者も間違いなく購入するはずだ。いっそ「満腹たんぱく」を量産し「国民食」にしてしまえば、健康問題と食糧問題を一挙に改善に導くことができるのでは? と、半ば真剣に考えもする。

 だがしかし……。ダイエットの余裕のない人、疲れ果てた人が溢れかえり、一方では絶え間ない食の誘惑に晒されている。このような現状を何とかできないものなのか――。

 なぜ国民の生活習慣が崩れがちなのか、根本的な原因はこちらにあるのではないか。「満腹たんぱく」の発見を朗報として受け止めつつも、嘆息せずにはいられないのだ。

(工藤渉)

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