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激変する国際石油事情=迫られる消費者の認識と対応(上)

激変する国際石油事情=迫られる消費者の認識と対応(上)
レトロになった箱型自動車と古びた給油装置。現代文明の象徴であるクルマ社会も、いずれはレトロとなって次世代博物館の呼び物になるだろう。(江戸東京博物館にて撮影:今藤泰資)
【PJ 2008年05月20日】− このところ、国際石油事情が激変している。17日午前零時配信の時事通信は、「ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、ディーゼル燃料の需給逼迫(ひっぱく)懸念を背景に、米国産標準油種が一時バーレル当たり127.82ドルまで上伸、史上最高値を3日ぶりに更新し128ドル台に迫った」と伝えた。原油市場の中心限月が127ドル台に乗せるのは石油史上初めての事態。省エネ・脱炭素資源のうねりはますます激しくなる様相を呈してきたようだ。

 さらに同日、この事態を踏まえて、米エネルギー省は、「戦略石油備蓄(SPR)の積み出しを一時停止すると発表。積み増し用の原油7万6000バーレル/日を国内市場に放出し、原油とガソリン価格高騰鎮静化につなげる狙い」(18日読売新聞)だという。ところが、現在米国のガソリン平均価格はガロン当たり3.78ドル(円換算リッター当たり約100円)と、日本や欧州諸国と比して極めて安価だ。にもかかわらず、米政府は国内経済への悪影響を恐れての措置を講じたのだ。

 折しも中東歴訪中のジョージ・ブッシュ米大統領の主たる目的は、こうした一連の国際石油事情と連動するもので、石油資源の確保と安定供給、さらには低価格路線への期待を示したものと見るべきだ。一方、わが国のテロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊による洋上給油は、アフガンにおける「不朽の自由作戦」に対する国際平和貢献の一環としての支援と理解されているが、そこには世界各国の焦眉(しょうび)の急である「資源確保」という視座が欠如している。

 ややもすれば忘れがちだが、わが国の原油、液化天然ガス、石炭などの化石資源や、原発燃料としてのウランなど、日本で供給される一次エネルギーの96%が海外からの輸入に依拠し、昨今話題になりがちな食糧自給率の39%をはるかに凌駕(りょうが)するものである。資源小国の日本が供給不安を抱えながら、資源大国の艦船に洋上給油を継続するとは、お人よしもいいところ。米国の戦費と省資源を肩代わりし、洋上給油リスクを分散するなど、ドチラを向いてもブッシュ大統領が絶賛して当然のことだ。わが国の政府与党には危機意識が欠如し、野党政治家には事の本質が見えていない。となりの韓国では、李明博(イ・ミョンパク)大統領が、現代(ヒュンデ)建設勤務当時の世界歴訪の経験と、人脈を活かした資源外交に熱心なのだ。

 今回、原油市場の相場を押し上げた要因は、環境対策と経済効果への期待から、世界的規模でのディーゼル燃料の需要が高まったことを意味している。ここでいうディーゼル燃料は、食糧からの転換エネルギーのバイオ燃料(BDF)ではない。すでに昨年4月、PJニュースではBDF過信への警告を発した。また今年2月、石油連盟の渡文明会長は、私的な座談の中で非食糧系バイオ燃料と、ディーゼル軽油の需要増大について熱く語って頂いたものだった。過去数年間、投機に敏感な金融筋と、技術改革に走り過ぎた一部の学者によって混乱を招いたバイオ燃料への期待は、もはや薄らいだと見るべきだ。リスクの多い「食資源」を原油に代わる燃料に転換することなど、「悪い冗談」だといっても過言ではあるまい。

 急上昇を続けるわが国の石油市場も、今月後半からさらに一部元売りが再値上げを発表。6月初めには、レギュラーガソリンは、リッター当たり170円台に突入すると予想されている。ここで気になるのが、末端市場を形成する消費者の認識と対応だ。世界規模での原油価格の逼迫(ひっぱく)と価格の上昇を知ってか知らずか、「ガソリン高騰で生活の不安が増した」という主婦らの意見はともかく、深夜や早朝、高級車で走り回る若者と、無知蒙昧(もうまい)なその親たちの姿を想像するにつけ、違和感を覚えてならないのはわたしだけではあるまい。

 最盛期には6万超あった全国のガソリンスタンドは、現在フルサービス4万3000店、セルフサービス4900店(2005年)となっており、全国のコンビニエンスストア・約4万2000店(2004年)に拮抗する店数以上に激減している。業界では異業種進出にやっきだが、そうそう簡単に事業が転換できるものではない。石油販売業者に限らず、末端消費者も現状をシッカリ認識せねばなるまい。今や、第3次石油危機がだと思ってかかって問題になることなど一片もない。往年の石油危機当時には話題にならなかったロシア、中国、インドなどの巨大新興国の台頭が、石油情勢をいやが上にも複雑にしているのだ。現代文明は、「砂上の楼閣」ならぬ「油上の楼閣」。現代文明の象徴であるクルマ社会も、いずれはレトロとなって次世代の博物館の呼び物になることだろう。

 中国宋代の儒学者・朱熹(朱子)の詩とされるものに、「少年老い易く、学なり難し。一寸の光陰、軽んずべからず。いまだ覚めず、池塘春草の夢。階前の梧葉、すでに秋声」という作品がある。後段の二節を「油断大敵」と解釈し、現代の戒めとしたいものだ。マス・セールス(大量販売)マス・コンサンプション(大量消費)の時代は終わったのだ。現代は脱石油、脱マイカーの風潮を浸透させる時期、道路特定財源の確保など論外なのである。環境問題との整合性の上からも、富県富山市で実践されているLRTの導入などが、市民生活でも政治の場でも話題にならねばならぬ時機が到来したのだ。事の重大さを軽視する風潮を止めねばならないのである。【つづく】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資【 茨城県 】
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