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本が友達だった

【PJ 2008年05月20日】− 小学校の先生をしていて、この春、めでたく定年退職をした友人が遊びに来た。後期高齢者医療制度や世界の出来事などを語り合っているうちに、こんな会話になった。

 「ところでね、今の小学生って、友達はテレビとか、パソコンとかって言う子がいるのよ。問題だと思わない?」
 「私は子供のころ、本が友達だったわ」
 「へー、そうだったの? あなた見かけによらず寂しい子だったのね」
 「・・・」

 さて、友人が帰って、私はこの会話のことを考えた。『テレビやパソコンや本が友達って、そんなにネガティブにとらなきゃいけないかな?』と。

 たしかに私は寂しい子だった。実母を早くに亡くし、その後小学校三年の時、父が再婚して母親ができたが、その継母は、早産で生まれた赤ちゃんがすぐに死んだ後、入水自殺をしてしまい、それからしばらくの間、私は言葉をしゃべれなくなっていた。

 そのころ人と会うのを極力いやがり、どこにも出ず、ひたすら本を読むことに没頭していて、『本が友達』という感覚があるのはそのころのものだ。

 思えば、当時の私は、大人の誰からも、『かわいそうな子』と言われていたから、どのみちネガティブな印象で称されて当然かも知れない。

 でも、今、私は言い切る。本という友達がいたから、私は人間同士の間で心を開くことができるようになったのだ、と。要は、本であれ、パソコンであれ、テレビであれ、ひとときでも心がそのものを信頼し、楽しいと思い、面白いと感じ、夢中になるものがあるのは、次の成長の階段を上る力をくれるということだ。

 子供は、本能で、人間に必要な友達は人間であることを知っている。でも、そうなるに必要な時間を経なくてはいけない子もいるのだ。ここで言いたいのは、子供(人間)は友達がいなくてはならない、ということではなく、大人の一定の価値観で決め付けるほどやわではない、ということだ。

 たまたま友人が、”友達をつくれない子はだめだ”というニュアンスの価値観を持っているようだったので、友達、に限定したが、子供は何かに心を解放させていくことで、その子に必要な道を開いていく、ということを言いたいのだ。

 私は、言葉をしゃべろうとすると、胸の中に風船が入ってそれが膨らみ息をするのを抑え付けるように感じ、ついに何もしゃべれなくなったのだが、祖母が私が本を読むのを見守ってくれ、やがて、私は、祖母に本を読んであげる、ということができるようになった。祖母は、それは楽しそうに面白そうに幸せそうに、私が本を読むのを聴いてくれた。

 いつしか私は学校に戻り、近所やクラスの子供と話したり遊んだりできるようになった。私には、本が友達でいてくれることが必要だったのだ。祖母が公認してくれた本という友達は、私の心を自由にしてくれ、生きる力をくれた。【了】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 佐々木 和恵【 茨城県 】
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