日本で「白熱電球」が姿を消す可能性が出ている。大手照明メーカーの東芝ライテック(本社・東京都)が2010年までに白熱電球の製造を全面的に中止すると発表。さらに、松下電器産業(同・大阪府門真市)も蛍光ランプへの切り替えの検討を示唆しており、白熱電球製造の国内2大勢力が製造中止にかじを切り始めたのだ。背景には、経済産業省が地球温暖化防止策の一環として、白熱電球を蛍光ランプに替えるという目標を打ち出したことがある。

「落ち着いた光」「温かな光」のファンもいる

   甘利明経産相は08年4月初旬、北海道・洞爺湖で開かれた「地球温暖化問題に関する懇談会」で、「家庭などで使用される白熱電球を12年までにすべて、電力消費量の少ない蛍光ランプに切り替える」と表明した。蛍光ランプの消費電力は白熱電球の5分の1程度。国内の白熱電球のすべてが切り替われば、温室効果ガスの排出削減の効果はかなり大きいとみられている。

   経産省の動きに素早く反応したのが東芝ライテックだ。同社は年間約4000万個の白熱電球を製造しており、日本企業の製造実績では松下に次ぎ2位に位置する。そんな東芝ライテックは経産相の切り替え表明直後の4月中旬、「温暖化への対応が重視されているなか、率先して対応を決めた」として、蛍光ランプに置き換えることができない特殊なタイプなどを除き、白熱電球の生産を中止すると発表した。

   また首位の松下も「切り替えも含めて検討する」とし、白熱電球から蛍光ランプへの流れが一気に進む環境が整ってきた。

   蛍光ランプは白熱電球と比べて電力消費量が少ないうえ、寿命も長い。既に国内で使われている照明ランプのうち6割強は蛍光ランプというが、一般家庭までは浸透しにくい事情もある。最大の問題は価格の高さだ。蛍光ランプの店頭価格は白熱電球の数倍〜10倍程度。消費電力が低いため、電気料金を安く抑えられるとはいえ、消費者への理解を得るのは簡単ではない。

「落ち着いた光」「温かな光」

   こうした中、企業が白熱電球の生産をやめれば、消費者はいや応なく蛍光ランプの使用に傾くことになる。温室効果ガス削減に向けた動きが加速するという意味では評価されるべき動きだ。

   しかし、「困る」という声が少なくない。白熱電球は、蛍光ランプでは出すことのできない「落ち着いた光」「温かな光」が特色だ。食品などを鮮やかに、美しく見せる効果も高いとされ、白熱電球を愛するファンは少なくない。

   あらゆる手だてで温暖化対策を進めるのは、もはや後戻りできない時代の流れ。それだけに、価格上昇、消費電力量の減少を総合的にみて家計の負担はどうなるのか、さらにCO2排出量抑制の国民経済的なメリットなど、国民に分かりやすく説明し、理解を得る努力がいよいよ重要になってくる。

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