若者の活字離れが進み、学力低下が問題となっているが、映画の世界でも影響が出ている。洋画の字幕づくりの際に”文字数を減らす””漢字の使用は最小限”にするなどの気をつかっているというのだ。字だけでなく歴史事実を知らないというケースもあり、業界も知的レベルの低下に驚いている。

”おバカ”タレントが人気の昨今だが、笑ってばかりもいられない現実が、映画会社の洋画字幕づくりから見えてきた。

そもそも、字幕映画は昭和6年(1931年)公開の米作品「モロッコ」から始まる。吹き替え作業の設備などが不十分で字幕という苦肉の策をとったが、大ヒットしたため字幕も定着していったのだ。

字幕の文字数は戦前は最大縦13字で3行だったものが、戦後に10字2行と少なくなり(1秒に読めるのが4文字ということから)、1980年代半ばにビデオの普及でテレビでも見やすいように、最大13字で2行と増えて、定着していた。
しかし、最近になり13字の文字数では読み切れないという若者が増加しており、映画離れを食い止めようと映画業界では苦慮しているというわけだ。
字幕づくりでは、10字前後で区切って行を増やしたり、漢字を省いたり工夫をこらし、字幕を必要としない吹き替え版へシフトしていく動きもある。実際にアニメ、実写映画とも吹き替え版が急増しているという。

東宝東和では8月から10月の3カ月間で計3本のハリウッド大作を公開するが「吹き替え版を過去最大級の手厚さで用意する」と話す。ワーナー・ブラザーズ映画も「ハリー・ポッターシリーズの場合、吹き替えが6割で字幕版を上回っている。その他の作品でも吹き替えの比率は年々高まっている」と説明している。

字幕、吹き替えという文字認識以前の問題もでてきた。
ある映画会社の製作担当者は「スパイ系作品の試写会後『ソ連って何ですか?』、『ナチスって何ですか?』との感想が寄せられ、本当に驚いた」と打ち明ける。
テレビ番組の街頭インタビューを見て『日本が第二次世界大戦で戦ったことを知らない』『日本に原爆が落ちたことを知らない』若者がいることに愕然としたことがある。
中学生レベルの歴史的事実すら知らないというケースも珍しくないようだ。

「スパイダーマン」シリーズなど計約1000本の映画の字幕づくりを担当したこの道約30年のベテラン、菊池浩司さん(60)は「知っていて当然の日本語を知らない若者が増えているようだ」と話している。

おバカ人気が悪いとは思わない、現実を知り、それが学ぶことにつながればそれはそれで必要な現象だということになる。

(編集部:TAKESHI)