発表会に顔をそろえた3氏左から、ヤフーの喜多埜氏、ドワンゴの小林氏、ニワンゴの杉本氏

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 国内最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」とお騒がせ動画サービス「ニコニコ動画」。外部サービスを貪欲に取り込み、親しまれるサービスを生み出そうとする、この異色の顔合わせからどんなサービスが登場するだろうか?

予期せぬヤフーからの提案
 ヤフーとニワンゴは5月9日に協業を発表すると同時に、「Yahoo! JAPAN」と「ニコニコ動画」の連携がスタート。ニコニコ動画のショッピング機能「ニコニコ市場」で「Yahoo!ショッピング」対応が始まり、Yahoo! JAPANの動画検索サービスおよび「Yahoo!ツールバー」でもニコニコ動画に対応。今後も新サービスの提供を予定している両社はメディア向けの発表を行い、今回の協業の経緯を説明した。


発表会に顔をそろえた3氏
左から、ヤフーの喜多埜氏、ドワンゴの小林氏、ニワンゴの杉本氏

 サービス紹介ののち、「ヤフーとニワンゴの協業はどちらから提案されたものか」という問いが投げかけられると、ヤフー取締役COOの喜多埜裕明氏は「我々のほうから」と回答。2007年7月に、ヤフーからニコニコ動画を運営するニワンゴと親会社のドワンゴに打診したことを明らかにした。当時ニワンゴとドワンゴは、投稿動画の著作権侵害やトラフィックの負荷への対応に追われており、9月になってようやく本格的な協議に入り、サービス開発を進めていったという。

 ニコニコ動画は動画再生画面にコメントを字幕として投稿することができるユニークな機能によって、従来の動画サービスにはないユーザーどうしのコミュニケーションを実現。日本発の新しい動画サービスとして一大旋風を巻き起こした。しかし、2007年はYouTubeをはじめとする動画投稿サービスにとっては試練の年。著作権者や管理団体から、著作権を侵害する動画投稿への対応を迫られ、ニコニコ動画も例外ではなかった。

 ドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏は当時の状況を振り返り、著作権問題への対応を行いながら、ゲーム会社、音楽関係者、テレビ局など関係者の意見を聞いたところ、その答えは千差万別だったと語る。しかし「そんなサービスはやめろ」と言われたことは一度もなく、「やるならちゃんとやってくれ」という声が多かったという。

 門前払いを食わされることもあったが、ニコニコ動画は協議を積み重ね、技術的な対策によって信頼回復に努めた、その成果のひとつが予期せぬヤフーからの提案だった。ヤフー側も今回の協業提案にあたっては、著作権問題などについては十分検討したうえで提案に踏み切ったという。

アフィリエイト経由の売上アップに「ニコニコ市場」を活用
 ヤフーには独自の動画サービスとして、公式コンテンツを提供する「Yahoo!動画」とユーザー投稿型の「Yahoo!ビデオキャスト」という2つの動画サービスがある。しかし、今回のニコニコ動画との連携の中心は「動画サービス」ではない。むしろ、互いのコンテンツを利用したアフィリエイト収益や広告収益の拡大、「Yahoo!オークション」とニコニコ動画の連携によって生まれる新しいオークションサービスの可能性を追求するものとなっている。

 ニコニコ動画のショッピング機能「ニコニコ市場」は、アマゾンのアソシエイト・プログラムを採用したシンプルなもの。動画再生画面の下にある空きスペースに、ユーザーが選んだアマゾンの取扱商品が貼り付けられ、それをユーザーが購入する。ただし、商品を選んだユーザーもそれを買ったユーザーも報酬は得られないが、ニコニコ動画側にはアマゾンからアフィリエイト報酬が入るという点がニコニコ動画ならでは。現在、ニコニコ市場ではアマゾンの商品のほかに、ドワンゴの着うたや着メロなどのコンテンツも扱うことが可能となっており、ニコニコ市場の取扱金額は月に3億円、ここから来るアフィリエイト収入は、ニコニコ動画の収益の15%に達しているという。


動画とアフィリエイトが結びついた「ニコニコ市場」

 現在、ニコニコ動画ユーザーは、男性が71%、女性が29%。また、10代〜20代が75%で、30代は21%にとどまっており、ライトユーザーを幅広く集客するYahoo! JAPANのそれとは大きく異なっている。男性ユーザーが圧倒的に多いニコニコ動画では、ユーザーはアニメやアイドルなどへの関心が高いことから、DVDやCDなどの商品を扱うアマゾンのアソシエイト・プログラムは見事にフィットした。

 今回連携が始まったYahoo!ショッピングは、食品、インテリア、バイク用品など、さらに幅広いラインナップを持つ。Yahoo!ショッピングでは現在25%がアフィリエイト経由での取り扱いとなっており、ヤフーはアフィリエイト経由での売上アップの施策のひとつとしてニコニコ市場を活用したい考えだ。

 今後は「Yahoo!オークション」との連携も予定されており、ヤフーが提供するAPIを使って、ニコニコ動画で商品を入札・落札するだけでなく、ニコニコ市場へ商品を貼り付けることが可能になる。ニワンゴ代表取締役の杉本誠司氏は、ニコニコ動画に商品紹介動画を投稿するだけでなく、コメント投稿機能を使って、動画再生画面上でオークションを行う可能も示唆している。

動画をプラットフォームとした新たなサービスへ
 両者は今後、Yahoo!ブログでニコニコ動画の作品を貼り付けたり、Yahoo! JAPAN IDでのニコニコ動画ログインを可能にするほか、ニコニコ動画の検索機能に、オーバーチュアの検索連動型広告を連携させることも予定している。


異色の顔合わせだが、相性はよさそうだ

 ヤフーの喜多埜氏は「検索は外へ向かうサービス」と位置づけており、ユーザーが外へ向かうなら外部にあるサービスとヤフーが組むことによって、より良いサービスをユーザーに提供し、事業者も互いに利益を得ることが可能だとしている。自社サービスですべてをまかなうのではなく、貪欲に外部との連携を強化していくヤフーの動きはこれからも続きそうだ。



 ニワンゴ取締役の西村博之氏は3月に行われた「ニコニコ動画(SP1)」の発表会で、「ニコニコ動画はあさっての方向へ進化する」と発言している。高画質の追求や動画クリエイターへの広告収益の還元といった他社サービスの方向性とは異なり、ニコニコ動画はショッピングやオークションなど、一見動画とは関係のない方向に向かっている。しかし、ヤフーも注目するニコニコ動画ユーザーの滞在時間の長さは、このようなバラエティ感が生み出しているといっても過言ではない。

ヤフーが品揃え豊富な百貨店なら、ニコニコ動画はテレビやマンガ、お菓子や飲み物に手が届く、居心地のいい自分の部屋。ユーザーは両者を行き来しながら、ネットを楽しむ。この異色ともいえる顔あわせには、試すべきことは山ほどありそうだ。

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MarkeZine編集部 [著]

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