バラエティが腐らせたテレビ スポンサーはそっぽを向く芸能評論家の肥留間正明氏に聞く
2008年05月06日13時52分 / 提供:J-CASTニュース
芸能評論家の肥留間正明氏は、辛口のコメントでネットでも人気が高い。夕刊紙のコラムでも、テレビ業界、芸能界のホットな話題を縦横無尽に斬っている。そんな肥留間氏に、テレビはどうしてダメになったのか、を語ってもらった。
テレビ局は制作せずピンハネ
――ネットでは、日本テレビ系のドラマ「ごくせん」第3シリーズが初回視聴率26.4%に達しただけで騒いでいます。そんなに、テレビが面白くなくなったのですか。
肥留間 面白いコンテンツがなくなって、テレビ離れが進んでいます。テレビを一番ダメにしたのが、バラエティ番組です。吉本興業が東京進出を果たし、さんまや紳助、今田が自分の番組を持つようになって、関西のお笑いが定着しました。その結果、吉本の影響をモロに受けている東京のテレビ局のバラエティ番組は、どう見ても、大阪でやっていた番組作りなんですね。大阪のバラエティ番組は、お金がないので、後ろで笑う観客と関西のお笑いタレントを集めて、番組を作っていました。つまり、お茶の間の井戸端会議版を東京に連れてきたということです。今バラエティ番組に出ているお笑いタレントは、芸人ではなくひな壇タレント。例えば、「行列のできる法律相談所」なんかがそうです。若い人に向けて番組を作っていますが、陳腐な光景でみな飽き飽きしてしまったんですよ。
――なぜ、そんな安請け合いのような番組作りになってしまったのですか。
肥留間 テレビ局の社員に番組を作るノウハウがなくなってしまったからですよ。例えば、5000万円で1時間ドラマを作るとすると、テレビ局が2000万円を抜いて下請けに出す。さらに下請けが2000万を抜いて、結局孫請けが残りの1000万で番組を作る。そんなピンハネで、いい番組ができますか。だから、関西テレビの捏造番組のような例が出てくるんですよ。傘下にトンネル会社や孫請けがある今の官僚システムと同じです。孫請け会社のスタッフが年収200万円では、靴下も買えない。「ユニクロ、そんないいもの着ているのか」とスタッフ間で話題になった、という話すらあります。
――それで、番組が面白くなくなって視聴率が下がると、スポンサーもつかなくなる。こういう悪循環になるんですね。
肥留間 スポンサーも楽ではないので、数字が出ないとつきません。昔はテレビ局にCMの依頼が多く、「もう入らないよ」と依頼を断っていました。今は、テレビ局の系列会社の社長自らが、スポンサーにお願い行脚をしています。時々、テレビで自局の番組の宣伝をしているCMを見ますが、これは番組のスポット広告が埋まらないからですよ。視聴率は、5年前までは20%が合格ラインだった。それが15%になり今や12%になってしまって、2ケタだったらいいというプロデューサーすらいます。ごくせんの26%というのは奇跡に近いんです。それで、ジャニーズタレントのような人気者を引っ張ってきて、安易な番組作りをやってしまう。ますます、テレビ局は芸能プロダクションや制作会社の言いなりになる。せめて面白いのは朝のワイドショーぐらいですが、それにしてもテリー伊藤やデーブ・スペクターといった金太郎飴のような同じコメンテーターばかりですよ。
スポンサーが強い芸能プロと組む
――落ち目のテレビ業界に対して、芸能界はどうなんでしょうか。
肥留間 原油産油国と同じで、テレビ局に対して、芸能プロダクションの力が相対的に強くなっています。キムタクのジャニーズや上戸彩のオスカープロモーションは、やはり影響力があります。ジャニーズタレントは、子どものころから踊りや歌を鍛えているので、歌や踊りは、ぽっと出のタレントよりよほどうまい。クオリティが高いのですよ。吉本学校では芸人を育てており、オスカーではモデルが集まっている、といったようにますますタレント供給源として力をつけています。昔は、テレビ局が新日鉄だとすると芸能プロとは町工場ぐらいの差があり、局側は、タレントを自由に選べました。しかし、今は、大家に比べて店子が強くなっています。映画配給会社のように、テレビ局は、コンテンツを流すだけの会社になってしまったんです。
――ただ、ジャニーズ事務所は最近、影響力の低下をささやかれています。
肥留間 芸能プロというのは、基本的に一代限りで終わる仕事です。そして、新たな違う勢力が出てきます。産油国ではありますが、群雄割拠しているということだと思います。タレントを育てずに、引き抜いてばかりいるところは、いつまでもタレントを供給できない。当然、影響力は落ちます。強くなるのは無理ですね。
――とすると、大企業などのスポンサーもそちらの方を向くようになりますね。
肥留間 実際、スポンサーが芸能プロや制作会社と組むケースも見られるようになっています。そこに直接お金を流すわけです。例えば、「水戸黄門」は、スポンサーが直接、制作会社とともに番組を作り、TBSが流しています。著作権は、制作会社が持っているようです。将来的にみれば、例えば、「ごくせん」といった人気番組は、制作会社や芸能プロがスポンサーと直接番組作りをすることも考えられます。当然、テレビ局には著作権がなくなり、制作会社や芸能プロが持つことになる。プロダクションは、携帯の待ち受け画面の著作権を持つことも考えられます。
――最近は、違法なものも含めて番組がネット上で使われています。人気アニメ「コードギアス」が番組放送前にネット上に流れたとき、視聴率テコ入れのための意図的な話題作りではないか、といううがった見方もありました。
肥留間 歌手の倖田來未さんが 「35歳になるとお母さんの羊水が腐ってくる」と発言したことは、まずネットニュースが書きました。そして、新聞が書き、テレビが放送した。今は、ネットからネタが上がっており、巨大メディアのテレビがネットからネタを拾っている。テレビからネタを下ろす時代ではなくなっている。巨大メディアがネットのことを取り上げるようになったということです。そうすると、スポンサーサイドは、テレビばかりでなく、ウェブにもコンテンツを流そうとする。ものを作らないテレビ局は、ますます成り立たなくなります。
――芸能界では、どんなメディアが強くなりますか。
肥留間 優秀なコンテンツを持っているところが強いということです。しっかりしたものは、財産として残るんですよ。映画だって、見る人は減っていないんですから。
【肥留間正明氏プロフィール】
1949年、埼玉県生まれ。日本大学卒後、「女性自身」、「週刊宝石」などの記者を経て、出版社「音羽出版」(埼玉県)を設立。タレントのそのまんま東さん(現・東国原英夫宮崎県知事)の「どん底」などの本をプロデュースした。テレビ朝日「やじうまワイド」、TBS「アッコにおまかせ!」などテレビ番組の出演経験多数。
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