ニューヨークの地元紙「ニューヨーク・タイムズ紙」の電子版は、4日付けで、ソフトバンク王貞治監督の特集記事を掲載した。

 「サダハル・オーは、まだ、ゲームを実感し、考察している」の見出しで、「本塁打キングになった日本プロ野球で、22年間の現役生活を終えた後、サダハル・オーは、現在、福岡ソフトバンクの監督として、44年に渡ってユニフォームを着ている」という書き出し。5月20日に68歳の誕生日を迎える王監督は、癌のために胃の摘出手術を受けており、健康状態が懸念されていた中、勇退するかもしれないという憶測を、やんわりと一蹴している。

 「自分の将来を考えて、手術に踏み切った。そういう意味で、私は今年を特別な1年にしたいと思っているし、最高のものを出したいと思っている。でも、それは、最後のシーズンだという結論を出したからとは違う。そういう結論は出していないからね。ただ、今は、最後と結論付けないで、最後のシーズンに賭けたいと願っているんだ」と、王は独特の言い回しで“今”を強調する。

 野茂が95年にドジャーズに移籍して以来、今年の5選手を含めて、これまで、36人の日本人がメジャーにやってきた、と同記事。メジャー流出も叫ばれる現状だが、王は「日本の野球にとっても、大きくプラスになった。野茂に感謝しているし、高校や中学では、今、卒業後、すぐにでも米国に渡って、メジャーでやりたいと夢を描いている子供たちが一杯いる。それは、私の現役時代のようにメジャーの親善試合しかなかった頃より、ずっと選手のレベルを向上させることになる。今はまだ、日本の野球はアメリカより劣ってはいるけれど、その溝は埋まりつつある」と、メジャー志向に賛同している。

 また、同記事は日本人の長距離ヒッターについて、王の見識をインタビュー。「まだパワーはみせていないけど、単に、まだそこまで行ってないだけ。メジャーの球宴本塁打競争で、メジャーリーガーが、まるでゴルフのティーショットみたいに打球を飛ばすのは信じられない。日本人にはそんなパワーはない。食生活も関係しているんだろうけれど。でも、それも違ってきているからね」。日本人の食生活の変化で、体格も欧米人並みになってきたとも言われる。近い将来はメジャーで通用する日本人パワーヒッターが出てくるかもしれないと思わせる返答をしている。

 王は、現役時代、メジャーの通算本塁打記録「762本塁打」を放ったバリー・ボンズ以上の本塁打を日本で量産したが、「私は、相撲取りになれたほど、強い足を持っていたし、それを自分の武器にしてきたけれど、私の本塁打は、技術によるものだ。私はよくメジャーの親善試合で善戦することができたし、メジャーにいけたら年間30本近くは打てたんじゃないかと考えていた。でも、今言ったように、私は技術で打ってきたんだ」と、同紙のインタビューに答えている。

 最後に同記事は、現役時代、打ってから一塁に走る間に、暗算で打率を計算できたという王のエピソードを伝え、王は今でも、ベンチの中で、架空のそろばんを弾く習性があると報じている。「ボケないようにね」と、王は答えて、その記事は締めくくられている。