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デジタル化の衝撃〜日本の出版システムは生き残れるか(4)

【PJ 2008年05月04日】− (4)「紙かデジタルか」ではなく

(3)からのつづき。読書にも二通りがある。最初の植村氏は大学出版部に籍を置いていて「知る読書」を担当している。[魔法のiランド]は「楽しむ読書」の領分。雑誌はちょうどふたつの真ん中に位置するのだろうか。

 「知る読書」の領分で起きたこと、わかったことは、新奇性、情報の鮮度の観点でネットの情報の方に、相対的に軍配があがるということ。ただ、編集性、信頼性の点でネットには問題がある。

 しかし一方、「楽しむ読書」の領分で起きたこと、わかったことは、編集行為もネットでやれなくないということ。少なくも「面白い」「買って読む価値があるよ」という評価に関しては、一人の編集者が行うより、よほど説得性のある評価ができる。「知る読書」でも似たようなことがありうるのかもしれない。

 学術情報の世界では「査読」を経ているかが、評価に足るコンテンツかの前提条件だが、午後の部に行われた、特別シンポジウム「デジタル時代の図書館と出版」で、国立国会図書館長の長尾真氏は、国立国会図書館が査読部分をネットを介して行う「電子査読」の可能性に言及していた。

 問題はシステム構築の構想力と、構築、運営のコストをどう回収するかだが、この点に関しては今のところ学術分野で成功事例は見当たらない。「楽しむ読書」との違いはやはり残る。

 ただはっきりしていることがある。本の売り上げの減少には、さまざまな理由と背景があろうが、若い人の「文字離れ」「読書離れ」を憂えて「読書推進」運動だけやっても、おそらく事態は解決しない。憂えている人々が若かりし頃に読んだ量よりよほど多い、膨大な文字を読むケータイ世代の存在があり、変容をとげた「読書」の実態がある。その裏に、「読書」を変容させたデジタル化の衝撃がある。その事実に向き合うことからしか、日本の出版システムの生き残り策は出てこないだろう。

 例えば国語辞典と百科事典を兼ね備えた画期的な辞書として刊行された、大手出版社の書籍が今年10年ぶりの改訂を施され、この春から店頭に並んでいる。今回からケータイでも利用できるが、これまでもデジタル化に先鞭(せんべん)をつけてきた商品。実はこの辞書、紙の本の定価を支えるだけの売り部数を確保することは難しくなってきていた。その製造原価の引き当てになっているのが、デジタル版での収益。前の版のデジタル版収益が、新しい改訂版の紙の本の製作を支えている。「紙かデジタルか」ではなく、「紙とデジタルで何ができるか」を考える段階に、出版産業はさしかかっている。【おわり】

■関連情報
・日本出版学会 〈行事案内 ─08年 春季研究発表会─〉
・メディア・コンテンツ産業からクリエイティブ産業への再編成
メディアコンテンツ産業にある、付加価値構造の「歪み」を腑分けし、外部環境への適応方向を整理。

・プロフィール
WEBサイト『金融リテラシー』編集長:『情報社会生活マンスリーレポート』へクリップを提供中、またメルマガも配信しています。

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 神宮司 信也【 東京都 】
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