今週のお役立ち情報
デジタル化の衝撃〜日本の出版システムは生き残れるか(1)
2008年05月01日07時13分 / 提供:PJ
【PJ 2008年05月01日】−
日本出版学会の2008年春季研究発表会が4月26日、日本大学法学部三崎町本館で開催された。午前中は研究発表が、午後は学会の08年度総会と特別シンポジウム「デジタル時代の図書館と出版」が学会、出版産業界からの参加者の前で公開された。ここでは午前中の10の発表の中から、出版のデジタル化と産業の変容にかかわる3つをレポートしたい。
書籍と雑誌を合計した総販売額は1996年の2兆6000億円をピークに、基調としては低落傾向を続けている。その直接の理由ではないだろうが、くしくも前年の1995年はWindows 95が発売され、パソコン普及元年となった年であった。そこから10年以上を経た21世紀の今、デジタル化に、明らかに出版産業は揺さぶられている。
(1)知識の流通にかかわる2つのルート
東京電機大学出版会の植村八潮氏は「出版振興政策と著作権改正論議にみる出版社の役割」で、政策としては読書推進より出版産業振興を、と訴えた。情報とデータを編集することで、体系化された知識をパッケージにした一冊の本が生まれる。この知識は、消費者が本を購入することで社会に流通する。もうひとつ、公共図書館が購入し貸し出しすることで社会に流通する。前者は個人の財布が原資、後者は税金が原資。つまり購入ルートは「民」が支え、貸し出しルートは「公」が支えていることになる。
この「民」によるルートを確保することには、国民の「知る権利」「表現の自由」を、法律議論ではなく、社会制度として担保するという意味がある。このことにもっと目を向けるべきだ、というのが植村氏のポイント。「公」は例えば国、地方の財政事情に、その規模とさらには存立そのものが左右されてしまうことがあるから。
そして購入ルートが社会制度として保証されるには、出版を産業として振興する視点が必要。読書推進だけでは不十分。その観点からいうと著作権者の権利を強化することが本当に知識の流通に資することになるのか、再販制の墨守が産業の振興につながるのか、よくよく議論されるべきだということになる。加えてデジタル化は紙の本とは異なる知識のパッケージを社会に提供しつつあるが、この新しいパッケージは再販制の対象外。同じ知識の流通を担う、二つのパッケージの競争条件を調整してやった方が、産業の振興につながるのではないか。
一方、原資が「公」であるがゆえに、無償で行われる「貸し出し」、その主体である「公共図書館」には、デジタルアーカイブ構想がある。日本の知の底上げの視点から大車輪で作業が進む機運も。しかしこの活動も「民」のルートを細らせることのないようなバランス感覚が必要なのでは、というのがもうひとつのポイント。そもそも情報とデータが「知識」となるには編集力が必要で、その結果その「知識」に信頼性が付与される。この編集と信頼性付与にかかるコストを捻出(ねんしゅつ)する必要がある。公共図書館が本を購入し、デジタル化し、ネット上に無償公開することで、コストを回収する可能性を小さくし、「民」のルートを細らせては元も子もないのである。【つづく】
■関連情報
・日本出版学会 〈行事案内 ─08年 春季研究発表会─〉
・・学術情報流通システムの再構築に向けて大学出版部の役割-
・・今年の読書の秋は、「貸出の秋」そして「電子の秋」。(3)図書館購入率と図書館提供率。
・・国会図書館の本、全国で閲覧可能に 3000万冊をデジタル化
平行して、検索用途であれば著作権フリーの法律も準備中。09年あたりが日本の全文検索、ひいては「知」の生産性にとって画期。
・プロフィール
WEBサイト『金融リテラシー』編集長:『情報社会生活マンスリーレポート』へクリップを提供中、またメルマガも配信しています。
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 神宮司 信也【 東京都 】
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書籍と雑誌を合計した総販売額は1996年の2兆6000億円をピークに、基調としては低落傾向を続けている。その直接の理由ではないだろうが、くしくも前年の1995年はWindows 95が発売され、パソコン普及元年となった年であった。そこから10年以上を経た21世紀の今、デジタル化に、明らかに出版産業は揺さぶられている。
(1)知識の流通にかかわる2つのルート
東京電機大学出版会の植村八潮氏は「出版振興政策と著作権改正論議にみる出版社の役割」で、政策としては読書推進より出版産業振興を、と訴えた。情報とデータを編集することで、体系化された知識をパッケージにした一冊の本が生まれる。この知識は、消費者が本を購入することで社会に流通する。もうひとつ、公共図書館が購入し貸し出しすることで社会に流通する。前者は個人の財布が原資、後者は税金が原資。つまり購入ルートは「民」が支え、貸し出しルートは「公」が支えていることになる。
この「民」によるルートを確保することには、国民の「知る権利」「表現の自由」を、法律議論ではなく、社会制度として担保するという意味がある。このことにもっと目を向けるべきだ、というのが植村氏のポイント。「公」は例えば国、地方の財政事情に、その規模とさらには存立そのものが左右されてしまうことがあるから。
そして購入ルートが社会制度として保証されるには、出版を産業として振興する視点が必要。読書推進だけでは不十分。その観点からいうと著作権者の権利を強化することが本当に知識の流通に資することになるのか、再販制の墨守が産業の振興につながるのか、よくよく議論されるべきだということになる。加えてデジタル化は紙の本とは異なる知識のパッケージを社会に提供しつつあるが、この新しいパッケージは再販制の対象外。同じ知識の流通を担う、二つのパッケージの競争条件を調整してやった方が、産業の振興につながるのではないか。
一方、原資が「公」であるがゆえに、無償で行われる「貸し出し」、その主体である「公共図書館」には、デジタルアーカイブ構想がある。日本の知の底上げの視点から大車輪で作業が進む機運も。しかしこの活動も「民」のルートを細らせることのないようなバランス感覚が必要なのでは、というのがもうひとつのポイント。そもそも情報とデータが「知識」となるには編集力が必要で、その結果その「知識」に信頼性が付与される。この編集と信頼性付与にかかるコストを捻出(ねんしゅつ)する必要がある。公共図書館が本を購入し、デジタル化し、ネット上に無償公開することで、コストを回収する可能性を小さくし、「民」のルートを細らせては元も子もないのである。【つづく】
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・・学術情報流通システムの再構築に向けて大学出版部の役割-
・・今年の読書の秋は、「貸出の秋」そして「電子の秋」。(3)図書館購入率と図書館提供率。
・・国会図書館の本、全国で閲覧可能に 3000万冊をデジタル化
平行して、検索用途であれば著作権フリーの法律も準備中。09年あたりが日本の全文検索、ひいては「知」の生産性にとって画期。
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