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宮崎あおいとエンポリオ・アルマーニ

宮崎あおいとエンポリオ・アルマーニ
一昔前は、日本における海外ブランドの位置づけがもっとわかりやすかったといえる。日本の消費者には“海外ブランド”であることを伝えるだけで、高級、最先端、洗練されているというイメージを抱かせることができたからだ。

ところが、日本はここ30年間で国内ブランドに対する自信を積み上げてきた。そのため、ヨーロッパや北米のブランドは、日本の消費者を引き寄せるために、今まで日本にあった劣等感に頼ることができなくなっている。

だからといって、今の日本の消費者が欧米のものに比べて、国内ブランドを無条件に好んでいるとは限らない。今の市場は複雑なうえめまぐるしく状況が変わり、誰もが正確に予測できないため、消費者は自分の嗜好にあったブランドをより念入りに判断しているためだ。

前回のエッセー“ファッション表現者という人種” で説明したように、『CanCam』や『ViVi』のような“リアル・クローズ”雑誌は、特集している服を説得力のあるものに見せるために、日本人とハーフのモデルしか起用していない。一方、『Spur』や『Ginza』のような高級ファッション誌は、正当な高級ファッション界の中心は“海外”にあることを主張するかのように、外国人(白人)モデルを起用している。そのため、海外の高級ブランドは日本のファッション誌でも、あえてグローバルキャンペーンの広告(日本人以外のモデルを起用した広告)を採用しているのだ。記事体広告(“タイアップ”)は、人気モデルが最新シーズンの服を着て登場するのによく使われるが、海外の高級ブランドが中心にあるという正当性は堅く守っている。基本的には海外の高級ブランドが、日本で親しまれているモデルを起用して日本のカルチャーのレベルまで“降りて”くることはないのだ。

そんな状況の中、エンポリオ・アルマーニは今までのルールを破って、日本人の女優である宮崎あおいを新しい広告に起用するという目立った動きにでた。確かに、宮崎は今の日本で“旬の人”である。ただ、彼女は日本において有名な女優であり、海外で知られている顔ではないと考えるべきだ。シャネルは去年のキャンペーンに、女優でありバベルのスター、菊地凛子起用していた。宮崎と異なるのは、日本人とはいえ彼女はオスカーにもノミネートされたほどの“国際的”な女性という点だ。宮崎を起用した理由は、必ずしも“国際的”とは言えないが、日本の女の子達が毎日着られるブランドを伝えるために彼女を使う効果があると考たからだろう。“スター”に服を着てもらうことで華々しさを保ちながらも、宮崎によってエンポリオ・アルマーニを“日本のレベル”まで持ってきている。彼女は、どちらかといえば“等身大”であり、“現実感”がある。

エンポリオ・アルマーニというブランド、と宮崎が持つセレブとしての特徴との間には完璧なバランスがあるようだが、それはこのブランドが“ブリッジライン”としての位置づけがされているからだ。戦略的なゴールということで考えれば、彼女は日本の消費者と一流海外ブランドの“橋渡し”をする役割を担っている。しかし、アルマーニとしては、日本のスターを最高級ブランド、ジョルジオ・アルマーニの広告にまで使うことは避けるだろう。もしかしたら、日本のファッション界において、人種的な階層は極端な部分(欧米が高い、東は低い)では安定しているのかもしれない。こうしたルールを曲げるような、枠組みの絶え間ない変更や、折り合いをつけたりする面白くも新しい動きは、欧米と東洋2つの世界が交差する市場では存在するものである。

他にも思いつくような例があるかもしれないが、それほど一般的ではない。

■著者プロフィール:W・デーヴィッド・マークス
米国出身。ハーバード大学東洋学部、慶應義塾大学大学院商学研究科卒業。
在学中よりGQ, Harper's, Nylonなどの米国の雑誌に寄稿し、
2006年から東京の広告代理店ダイヤモンドエージェンシーでプランナーとして活躍中。

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