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卯月四月、日本東西花行脚(2)

2008年04月27日05時34分 / 提供:PJ

pj
卯月四月、日本東西花行脚(2)
高遠のサクラは城内にある美術館の喫茶室からの眺めが最高。眼前の桜樹は、根元を観光客に踏みつけられないため、幹が巨大で華やかなのである。(12日午後撮影:今藤泰資) 写真一覧(6件)
(1)からのつづき。長野県に「高遠」というマチがあって、サクラが有名だと知ったのはごく最近のことである。筑波に住んでいた友人の画家夫妻が、「サクラを描くので」と言い残して高遠に去ったのは数年前のこと。それ以来、「たかとう」という響きのよい地名と、この地のサクラは「天下第一品」という名につられて、一度は行きたいと思っていた。だが高遠は極めて交通不便の地であり、マストラは未発達である。信州大好き人間のわたしさえ、ながらく躊躇(ちゅうちょ)していた土地だ。

 なんせ、飯田線の伊那市駅から30分ほどかけてバスで行くか、中央本線の茅野駅から、クルマで1時間もかかる陸の孤島。そのため桜花の時季には、マチ全体の交通規制が強化され、不便この上もないと知った。有料化にしてからの入園者数は計約675万人。市観光協会では今期中の700万人到達を見込んでいるとあって、混雑を避けたいわたしには、元来不向きな場所なのであった。

  たまたま見かけた神山純一さんという方のブログに、「江戸時代の話でストーリーは正確ではないかもしれませんが、愛し合った二人が殿様の怒りをかい、一人は八丈島に、一人は高遠に連れて行かれた、という話を聞いたような気がします。ということは八丈島と同じくらい行くのも帰るのも難しい所、という事になります。確かに高くて遠い所だったでしょう、その時代には」とあった。また伊那市内の弘妙寺は、高遠という地名が「より高く」「より遠く」とゴルフに通じることからプロゴルファーたちが訪れる土地だともいう。なるほど、なるほど、出掛けたい気にさせるマチだ。

 さらにまた、藤原範兼が選んだ「中古三十六歌仙」には、藤原高遠(ふじわらのたかとう)という歌人がいた。「うちなびき 春は来にけり青柳の 影ふむ道に 人のやすろふ」と詠んだ歌人高遠は、信濃とは無縁の人物らしかったが、平安時代の公家に生まれた男子になぜ「高遠」と名づけたのか知りたくなる。あわせて高遠の名を上げたのは、正徳4年(1714)、7代将軍家継の生母・月光院に仕えた大奥大年寄・絵島であった。当時、人気役者だった生島新五郎との度重なる密会は、連坐者1500名に及ぶ「絵島・生島事件」に発展。34歳のときに高遠藩にお預けとなったが、事実上の流刑であるとされ、信州遠山郷には、61歳まで生き延びて高遠で亡くなった絵島を偲ぶ盆踊り歌「絵島節」が今も伝えられているという。先の神山さんの記憶は、「絵島生島」のことのようだ。とまあ、ここまで知れば、出掛けるしかあるまい。急きょ思い立って出掛けたのは、12日の早朝であった。

 高遠城(兜山城)は、戦国時代武田信玄の家臣山本勘助が築城し、代々武田一族が城主としていたが、天正10年(1582)、信玄の五男仁科盛信の時に落城。当時籠城中であった松姫(信玄の娘)と、攻城の総大将織田信忠は元婚約者同士として知られている。やはりこの地でも、花にまつわる悲しい話題が残されていたのだ。明治維新になって城は取り壊しとなったが、その後あまりの荒廃を見かねた旧藩士たちが城跡に桜を植樹、公園として整備したという。大小約1500本のコヒガンザクラと、桜越しの中央アルプス連峰は残雪が輝き、薄紅色に染まった公園を大勢の花見客が訪れ賑(にぎ)わう。 4月12日は幸いにも「高遠さくら祭り」の真最中であった。 城跡は昭和53年より花見シーズンのみ有料(500円)となったが、半券があれば出入り自由のためか、チェックはさほど厳しくなく、実におおらかだ。

 それにしても駐車場と会場の混雑は、目を覆うばかり。城下町の狭い道路をようやく通り抜け、折からの好天と週末、それに満開のサクラに群がる一人となって多少後悔した。城とサクラの組み合わせも、数々の歴史上のエピソードも、安普請の城郭が足を引っ張り興ざめなのである。各地のナンバープレートを付けた観光バスの多さからして、どうやらマストラの未整備を逆手に取った旅行代理店の優れた企画商品になっているようだ。

 つまりは北海道旭山動物園の人気と同じと見るべきだろう。そうそう悪くはないが、一度出掛ければそれで充分。絢爛豪華な吉野山の故事来歴などと競わせることは無理なのだ。むしろ、駐車場に連接する土産品のテント脇に翻っていた「真田六文銭」の旗指物が目についた。地蔵信仰による「真田六文銭」は、死後おもむく六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上)で救済に現れる地蔵への六文の賽銭がその由来だという。「真田十勇士」の世界で育ったわたしには、サクラと城郭を盛り上げる大仕掛けに見え、爽快であった。「百聞は一見にしかず、高遠のサクラ」というところか。【つづく】

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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資

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