神奈川県の「禁煙条例」に賛否両論が寄せられている

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   不特定多数が利用する場所での喫煙を禁止する「禁煙条例」の検討を神奈川県が進めている。公共交通機関だけではなく、居酒屋・マージャン屋なども「禁煙対象」に含まれることから批判も根強く、賛否両論が県庁に多数寄せられている。複数の新聞が、この問題を社説に取り上げ、こちらでも賛否が割れていて「混戦模様」だ。

マージャン店や野球場、駅なども対象に含まれる

   神奈川県の松沢成文知事は2008年4月15日の定例会見で、「公共的施設における禁煙条例(仮称)」の基本的な考え方を素案にして発表した。不特定多数が利用する県内の全ての施設を禁煙にするというもので、学校、病院、公共交通機関以外にも、飲食店、マージャン店などの娯楽施設、さらには野球場や駅なども対象に含まれる。一方で、健康増進法で受動喫煙防止の努力義務が課せられている工場やオフィスについては、不特定多数が利用する訳ではないとして対象から外された。違反者には立ち入り調査の上で、罰則も検討されている。

   成立すれば、全国初の条例となるが、決して「突然出てきた案」という訳ではない。松沢知事が07年に再選を果たしたときのマニフェスト(政権公約集)では「11本の全国初あるいは先進的な条例の制定をめざす」との宣言があるのだが、その筆頭に挙げられているのが、この「禁煙条例」なのだ。07年11月に検討委員会が立ち上がり、4回の会合を重ねて、今回の素案が作られた。

   ただ、条例の成立までには、色々とハードルがありそうだ。県が07年10月に行った、受動喫煙に関する意識調査の結果によると、公共施設での禁煙に「賛成」との声が88.5%を占めた。ところが、規制の対象として望ましい施設を複数回答で聞いたところ、「病院・診療所」(86.4%)「学校」(82.3%)などが上位にランクインしているが、「飲食店」は55.8%、「ホテル・旅館」は48.6%、「ゲームセンター・パチンコ店等娯楽施設」は32.3%と、かなりの「低支持率」。「居酒屋で喫煙NG」というのは、かなりの抵抗にあいそうだ。

県庁に寄せられた意見では「条例反対側がやや優勢」

   知事が禁煙条例の素案を発表して以来、県庁には意見が殺到。4月16日から23日にかけて、実に549件の意見や質問が寄せられた、県の健康増進課に内訳を聞いてみると、

「反対意見が半分で、残りの半分が賛成意見や質問」

とのことで、現状は「反対側がやや優勢」といったところのようだ。

   メディアの側でも賛否が割れている。朝日新聞は4月20日社説に「松沢知事、頑張れ」との見出しを掲げて「日本でいま、若い世代の喫煙率がじわじわ上がっている。気がかりだ。神奈川から、脱たばこ社会に向けての着実な一歩を踏み出していきたい」と、半ばもろ手をあげて賛成している。一方、地元紙の神奈川新聞は4月17日の社説では

「懸念されるのは、この条例が一方的な『喫煙者追放』や『愛煙者たたき』の道具にもなりかねない点だ。たばこは今日に至るまで嗜好品として認められ、税収の一つともなってきている」

と、やや慎重な論調だ。

   県では、4月24日から5月23日にかけて、県民からの意見(パブリックコメント=パブコメ)募集を実施しており、それを踏まえて6月に条例案の骨子を県議会に提出。08年度中の成立を目指したい考えだ。

   パブコメ募集を開始した4月24日には、早速50件のコメントが寄せられたという。

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