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「青少年インターネット規制法案」が成立すると、日本のネットは完全に死ぬ

2008年04月23日18時26分 / 提供:GIGAZINE

GIGAZINE


ヤフーやマイクロソフトなどのネット関連5社が「青少年インターネット規制法案に反対」の姿勢を示したわけですが、この「青少年インターネット規制法案」とはどのようなものなのでしょうか?わかりやすく言うと、この法案が通れば日本のネットは完全に死ぬということです。これは誇張でも何でもなく、だからこそヤフーやマイクロソフトなどがわざわざ記者会見を開いているわけです。法案名に「青少年」と書いてありますが、実際には青少年ではなく、日本でネットを利用するあらゆる人々が被害を受けるというとんでもない法案です。従わない場合には懲役か罰金まであります。

というわけで、ネットの根幹をも揺るがす「青少年インターネット規制法案」について、まとめてみました。

〜目次〜
■あなたのブログやページは青少年に悪影響を及ぼすので削除します
■いくらでも好き勝手に規制できるとんでもない法案の中身
■バカなネット規制を推進する議員は落とすべき時に来ている
■規制するより先にすべきことがある

■あなたのブログやページは青少年に悪影響を及ぼすので削除します


この「青少年インターネット規制法案」、成立するとどのようなことが義務づけられるのか?以下のページで簡単に解説しています。

osakana.factory - 日本の子供たちからインターネットが消える日
個人も含む全てのウェブサイトの管理者は、上記の有害コンテンツの基準に合致した場合、サイトを丸ごと未成年が入れない会員制にするか、フィルタリングソフトへ自らのサイトをフィルタ対象として申請することなどが、求められます。(3条1項)
全てのISP、ASP事業者などには、有害コンテンツの削除やサービスの停止が求められ、従わない場合の罰則も設けられます。結果としてウェブコンテンツの削除は行われることになります。(3条)

つまり、フィルタリングによる有害コンテンツに合致しそうな場合は、パスワードを持っていないと閲覧できない会員制にするか、自分のサイトを「有害サイト」として申請しろ、そうしないと削除するよ、従わない場合には「6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金」だよ、ということ。

当然ながらあらゆるページ、あらゆるブログ、あらゆるネットサービスについてこの法案が適用されますので、ネット上でビジネスを行っている企業から、趣味のページを作っている個人に至るまで、有害であると見なされればすべてが規制されます。裁判所で時間と金をかけていくらでも戦ってやるよ、という気骨のある人であれば問題ないかもしれませんが、大半の人はそのような犠牲を払うことはできないはずです。つまり、法律に引っかからないようにあらゆる表現を自粛、ネット上のあらゆるサービスやコンテンツは萎縮していき、衰退するのが自明の理というわけです。

■いくらでも好き勝手に規制できるとんでもない法案の中身


法案自体の中身は下記ページにて詳しく紹介されています。とにかく「青少年に害があるものはなんでもかんでも禁止!!」と叫んでおり、非常に範囲が広い、というか広すぎる。

ネット規制を競う自民・民主・総務省 - 池田信夫 blog
第2条の2(青少年有害情報の定義) この法律において「青少年有害情報」とは、次のいずれかの情報であって、青少年健全育成推進委員会規則で定める基準に該当するものをいう。

1. 青少年に対し性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼすもの
2. 青少年に対し著しく残虐性を助長するもの
3. 青少年に対し著しく犯罪、自殺又は売春等を誘発するもの
4. 青少年に対し著しく自らの心身の健康を害する行為を誘発するもの
5. 青少年に対するいじめに当たる情報であって、当該青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの
6. 青少年の非行又は児童買春等の犯罪を著しく誘発するもの

問題となるのは、一体どういう基準でどこの誰が「有害」であると定義するのか?という点。ここに最大の問題があります。誰もが納得するようなものであればいいのですが、そうではないからこれだけの騒ぎに発展しているわけでして……。

osakana.factory - 日本の子供たちからインターネットが消える日
内閣府に設置される少人数の青少年健全育成推進委員会(最大数5人)っていう組織が、インターネット上の全てのコンテンツについて、青少年に有害か無害かについての判断基準を作成します。ちなみにその基準への異議申し立ては、多分無理。(法案19条から31条)

つまり、青少年健全育成推進委員会というどこの誰だか知らない5人が作った判断基準が適用されるというわけ。結局、どういう判断基準になるのかはまだ具体的に何も決まっていないのに、なぜか先に法律から決めようという、順番がめちゃくちゃな状態。しかも、法律になるとこの5人が決めた内容が基準になるため、既存の法律を変えることなく、いくらでもあとからどんどん規制する中身を自由自在に増やしたり変えたりができるわけです。やりたい放題ですね。

極端な話、この5人のメンバーの誰か一人として、どこかのネット企業と癒着している人が着任、ライバル企業をボコボコにするために特殊な定義を行っても、もう誰も止められないのです。それぐらいならまだしも、「自分はネットなんて無くても困らない、むしろネットがあると邪魔だから、消えろ」とか思っている人がこの5人に含まれてしまった場合、日本のネットを即死に追い込むような定義を打ち出す可能性も冗談抜きであり得る話なのです。当然ながらそれを止める方法はありません、どんなに理不尽であっても「法律」だから従わないと懲役か罰金です。裁判を起こせばいいのかもしれませんが、いつ終わるともしれない戦いに巻き込まれるだけです。そう、法案が法律になってからではもう手遅れなのです。

なお、このような内容の法案はほかにもいくつか計画されているのですが、今回問題となっている案を作ったのはこの人、高市早苗議員。

「自主規制では不十分」青少年ネット規制自民法案、高市早苗議員に聞く モバイル-最新ニュース:IT-PLUS
自民党内でも自主的な取り組みに任せるべきだという意見もあるのは確かです。ただ、実際に携帯サイトをきっかけとした犯罪が後を絶たず、昨年の内閣府の世論調査でも9割以上が有害情報を規制すべきと考えているとの結果が出ています。自主的な取り組みだけで100%効果があるならば、こういった結果にならないはずです。

100%の効果を目指すのはいいのですが、100%安全なインターネットを無理矢理にでも実現するために法規制しようとするからおかしなことになるわけです。現実の世界から犯罪者をゼロ人にしよう!というのと同じことをインターネットで行おうとしており、あまりにも非現実的。わかりやすい例で言えば「禁酒法」などが過去における世界の悪法の例であり、法律にしてしまえば何もかもが正しく運用されるわけではなく、余計に治安が悪化することもあり得るのです。このことは既に東大教授からも指摘されています。

青少年のネット規制法、「目的は正当でも手段が大まかすぎる」--東大教授が苦言:ニュース - CNET Japan
法的な規制でもって悪いものを排除しようという方向を進めると、何とかして網の目をかいくぐろうという方向にインセンティブを与えてしまうことになりかねません。そうすると、規制する側といたちごっこになり、どちらにしても社会的なコストがどんどんかかっていく可能性があります。

規制法案が法律になり、結果的に思ったほどの効果が出なかった場合、誰が責任を取ってくれるのでしょうか?そこまでのリスクを負う価値があるのでしょうか?誰も得をしない法案に価値はありません。不名誉な悪法の歴史に自分の名を刻みたいのであれば別ですが。

■バカなネット規制を推進する議員は落とすべき時に来ている


この法案、自民党と民主党の両方から提出されようとしており、放置しておくとほぼ確実に成立してしまう状況です。自民党案によると以下のように書かれています。

日本のインターネット産業に大きな節目?--自民と民主が重要法案を準備:ニュース - CNET Japan
この法律は、インターネットにおいて青少年の健全な成長を阻害するおそれがある情報が流通し、青少年のインターネット利用の良好な環境を整備する必要性が生じていることにかんがみ、インターネットを利用して青少年により青少年有害情報が閲覧されることを防止するための措置等を講じ、もって青少年健全な育成に資することを目的とすること。

目的自体は正しくても、その手段に問題があるというわけです。

いくらでも恣意的な規制をかけることができる内容であるため、様々な反対意見がネット上では続出し、声明文も多く出されています。

MIAU : 青少年ネット規制法案についてのプレスリリース

「青少年ネット規制法、断固反対」――古川享氏、中村伊知哉氏など共同声明 - ITmedia News
「法案は、あるべき施策からまったく逆方向を目指したもので、とうてい賛成することはできない」――元米Microsoft副社長の古川享氏や、慶応義塾大学教授の中村伊知哉氏など10人が呼びかけ人となり、自民党が今国会への提出を目指している、青少年に有害な内容のサイトの閲覧を規制する法案(青少年の健全な育成のためのインターネットの利用による青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案)に反対する声明を、4月18日付けで公表した

また、このような法案は今まで各種メディアを対象として過去に何度も出されてきましたが、すべて強い反対にあって挫折しており、今回のネット規制法案は「ネットなら何も言わないだろう」という感じで出されたようです。つまり、ネットを利用しているユーザーは政治に対して何の意見も持っていないだろう、ということで、なめられているわけですね。そのことは以下の記事を読むとよくわかります。

津田大介:「青少年ネット規制法」成立はほぼ確実 その背景と問題点 (1/3) - ITmedia News
青少年保護の名を借りたメディア規制は、数年前からさまざまな形で自民党内からも提起されてきた。だが、放送や新聞といった既存のマスメディアも含む規制はマスメディアからの反対が根強く、実際の法案として提出されるまでには至らず、葬られてきた。だが、インターネットについてはここ数年「フィルタリング」技術を提供する業者が成長してきたこともあり、完璧ではないにせよ、ある程度機械的な対応で規制することが可能になってきた。そこでまずうるさ型の既存マスメディアを対象外にして、ネット規制から始めるということが今回の法案提出の背景にあるといえる。

今回、この意味不明なネット規制法案を出した議員たちについても、実はどういう背景でこのようなことになったのかが詳しくはわからないというのが実情です。

ネットユーザーに何ができる? - コデラノブログ 3
例えばネット規制推進派と反対派の議員には、どんな人たちが居るのか、我々はちゃんと把握できていない。推進派は自民党では高市早苗議員、民主党では高井美穂議員というのだけはわかっているが、それを支持している議員は誰なのか。こういうことをきちんと把握して、次の選挙では確実に落とさなければならないわけである。

逆にネット規制反対派は誰なのか、という情報も、我々には少なすぎる。例えばPSE法問題のときは、民主党の川内博史議員がずいぶん動いてくれたわけだが、ネットに強くて情報を吸い上げてくれて、国会の場で活動してくれそうな人は誰なのか。こういう情報をシェアしたい。

ちなみに高市早苗議員は奈良 2区選出、高井美穂議員は徳島2区選出である。ネット規制には反対の意識を持っている方の中で、実は自分の地元議員だった、ということを今知った人もいるのではないだろうか。やはりそれは、これまで政治に無関心すぎた我々の反省点である。

中でも、先の引用でも出てきた高市早苗議員はやり方がむちゃくちゃで、このネット規制法案が誰の目から見ても不備があるにもかかわらず、強引に押し切ってとりまとめてしまったそうです。つまり、実際のネットユーザーのことなど何も考えておらず、功を焦っているだけ。

ネット規制にばく進する自民党 「有害情報」を流せば懲役刑も|経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”|ダイヤモンド・オンライン
しかし、萩生田光一内閣部会部会長代理が「基本的には、この法案が自民党の考え方である」「民主党の出方にもよるが、ゴールデンウィーク前までには法案を提出したい。民主党が早めに提出すれば、案が生煮えでも提出する。後塵を拝することはできない」と、野党への対抗上、法案が不備であっても、早期に国会に議員立法として提出するべきだと発言。これを引き取る形で、高市早苗青少年特別委員会委員長が「条文は直す必要がないとわかった。今国会での提出・成立を目指す」と押し切って、同法案をとりまとめてしまったという。

こうした高市委員長らの強引なとりまとめの背景には、福田康夫首相が今国会の施政方針演説の中で、「安全・安心の確保」を目玉のひとつに掲げて「安全で安心な暮らしには治安に対する信頼が欠かせません。インターネットの有害情報の排除や組織犯罪の資金の監視・取締りを強化するとともに、銃器の規制の厳格化に向けた取組を進めます」と強調したことが、「錦の御旗になっている。それゆえ、町村信孝官房長官が強く後押ししているとの噂もある」(霞が関関係者)とされる。

最新の情報として、4月23日付で報道された内容によると、以下のようになっています。

違法有害ネット情報:「有害」判断は外部で−−自民党総務部会 - 毎日jp(毎日新聞)
自民党総務部会は22日、インターネット上の違法有害情報対策の骨子案をまとめた。焦点となっている有害情報の定義については「線引きが困難」「憲法で認める表現の自由との兼ね合いが微妙」−−などの理由で見送り、判断は第三者機関に任せるべきだとの考えを盛り込んだ。

いくらかマシになったように見受けられますが、この法案が通ると下記のような事態が発生してネットは死にます。

小寺信良:臭いものにフタをしても、何一つ解決しない (1/3) - ITmedia +D LifeStyle
 この法案の巧みなところは、サイト管理者やプロバイダに、書き込まれた情報の削除義務を課していない点だ。なぜならばそれは、表現の自由を規制することになるからである。しかし上記のような面倒くささを考えれば、個人の管理者は自主的に、書き込まれた情報を削除する道を選ぶだろう。そして事実上、自分のサイトの書き込みを念入りに監視していなければならないことになる。

 プロバイダ側も自分の管理下のサイトに有害情報が含まれていたら、サイト管理者に何らかの措置を行なうよう求めなければならないので、常時巡回してコンテンツを精査する責任が発生する。大きなサービスプロバイダにとってはとてつもない費用になるだろうし、零細なところは手が回らず、サービス自体を停止しなければならなくなるだろう。

 いずれにしてもネット全体の情報量と自由度は激減し、有害情報があってもなくてもその監視責任だけで疲弊し、今のネットの形は破壊される。

もういい加減に、ネットについての知識が偏っていたり、ネットについて詳しくないような議員個人と関係する各種利権を満足させる、あるいは新たな利権や天下り先を作るために法律を通そうとする行為をやめさせなくてはならない時期に来ていると考えるべきでしょう。選挙カーに乗って名前を連呼するだけの議員やバックにいる利権団体に有利になる法律を通すためだけにがんばる議員、国民の不利益になることを平然と行う議員、そしてネットを規制することに熱心な議員、こういった議員は政治家になるべきではありませんし、立候補しても票を投じるべきではないのです。

■規制するより先にすべきことがある


これまでの流れを見てくると、そもそもの問題はインターネットが今もなお「無法地帯」と見られていることに原因があるわけです。いわく、インターネットは匿名であり、自分がどこの誰かを隠して誹謗中傷が可能で、なおかつ悪性情報に誰でも簡単にアクセスできる、だから有害だ、と。しかし、それは間違いです。インターネットは正体を完全に隠して悪事ができる無法地帯ではないのです。

例えば、学校や社内のいじめでは物的証拠が残らないケースが大半なので、加害者側が自分の責任を認めない場合が多々あるのですが、掲示板などで誹謗中傷を行えばその書き込みが記録されるだけでなく、IPアドレスも記録されます。つまり、物的証拠がちゃんと残ります。しかるべき手続きを行えば、そのIPアドレスからどこの誰が加害者かを特定することも可能です。悪性情報をネット上に提示している場合でも同じで、現実の社会よりも容易に特定することが今は可能となっています。

つまり、今、必要なのは「教育」というわけです。

asahi.com:有害サイト規制綱引き 青少年保護か表現の自由か - 社会
 同機構の審査・運用監視委員に就く東京大大学院の長谷部恭男教授は、「インターネットはコミュニケーションや表現の場として重要な役割を果たしている。有害情報対策は、通信の秘密や表現の自由にかかわるため、公権力による規制は最後の手段であるべきだ。青少年保護は重要な目的だが、まずは民間の工夫でどこまでできるか見守ることが大切」と話す。

 また、子どもを有害情報に触れない「無菌状態」に置くのではなく、それに対応できる知恵を養う必要があると指摘する。

今回、「青少年インターネット規制法案」にヤフーとマイクロソフトと楽天などが共同で「反対」を表明しましたが、その中でも以下のように意見を出しています。

1. 保護者および学校関係者とともに、保護者が手軽に子どもに子どものインターネットの安全な利用環境の確保やリテラシー向上に関する教育ができるよう、保護者の視点に立ったわかりやすい教材を制作し、提供する

2. 保護者や学校関係者との協力関係の下、講師を派遣して保護者向けの勉強会を開催する。また、子どもを取巻くインターネット事情や利用方法に関し、定期的な情報提供を行う。

3. これまで保護者による指導の障害となっていた「保護者と子どもの知識の逆転」状況を保護者向けに情報提供等を行うことで改善をはかり、保護者が手軽に子どもを指導できる環境作りをお手伝いする。


なんでもかんでも犯罪につながるとして法律で規制するよりも先に、学校と家庭で教えるべきことを教えるのが先であり、そういう努力を放棄して、法律に頼ろうとすることが間違いなのです。法律で規制するのはあくまでも最低限の範囲にとどめていないと、どんどん拡大解釈され、最終的には自分で自分の首を絞めてしまい、どうしようもない状態になるのが目に見えています。

それでもなお教育より、今すぐネットを規制すべきだ、そう言うのであれば、ブルース・シュナイアー著「セキュリティはなぜやぶられたのか」に引用されている、ベンジャミン・フランクリンの以下の言葉を肝に銘じるべきでしょう。

「ほんの少しの安心と引き換えにいちばん大切な自由を手放す人は、自由も安全も享受する資格がない」

おそらく今年、2008年はインターネットを巡るさまざまな攻防、特に政治と法律に関しての攻防が極限まで激化するその最初の年になると思われます。携帯電話の規制、児童ポルノ関連、青少年ネット規制……さらにこの先、一体何が起きるのでしょうか……。

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