映画『靖国』緊急会見の他誌が報じない裏話
2008年04月16日11時46分 / 提供:日刊サイゾー
ドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』の上映中止問題を巡り、4月10日参議院会館でジャーナリスト、映画監督、メディア関係者たちによる緊急記者会見が開かれた。映画『靖国』の李纓(リ・イン)監督本人のほか、田原総一朗氏、「一水会」顧問・鈴木邦男氏、月刊誌「創」編集長・篠田博之氏、フォトジャーナリスト・広河隆一氏、漫画家・石坂啓氏、映画監督・是枝裕和氏ほか錚々たるオピニオンリーダーたちが出席した。1本の映画を権力の圧力や自主規制の波から守れ、と各氏が熱く訴えかける光景は、84年のバンドエイド、85年のU.S.A. for Africaを彷彿させるものがあった。
自民党の有森治子議員が『靖国』に出演している刀匠に確認を取り、「刀匠は出演シーンの削除を求めている」と主張していること対して、李監督は「映画完成後の昨年4月と今年2月に刀匠ご夫婦に会い、内容について不安がっていたので話し合い、了承してもらった。国会議員が出演者に直接連絡を取っていいものなのか。何が起きたのか不思議に思います」と冒頭で反論。この件は新聞各紙がすでに報道しているので、本稿では報道から漏れてしまった参加者たちのコメントを伝えたい。
まず口火を切ったのは、『靖国』を高く評価している田原氏。
「上映を取り止めた映画館が悪いという声もあるが、映画館は悪くない。親会社のさらに上の親会社の役員たちが『波風立つから、やめろ』と決めたんです。会社名は言うなと言われているので伏せるが、みなさんの知っている会社です。映画館を責めるのではなく、日本の構造的な問題を考えなくちゃいけない」
漫画家の石坂氏、映画監督の是枝氏は表現者の立場から発言。
「10年前はギリギリできていたのに、南京虐殺、従軍慰安婦問題、集団自決問題など、今は漫画として雑誌に掲載できなくなっている。10年前には私たちが見ることができた写真や映像、言葉が次々と消えているんです。海外で上映された『靖国』が、日本で観ることができないのは由々しき問題。国会議員もプロなら、自分たちの発言がどれだけ社会的影響力を持つのか自覚してほしい」(石坂氏)
「こういう集まりに参加するのは初めて。内容が偏っていると言われているが、もし偏っていても、それは上映後に起きるべきリアクション。上映後なら、どんなリアクションが起きてもいい。そこで多様な意見を交換し合い、“靖国”について理解を深めればいい。テレビの仕事もしているが、テレビでは非常に企画が通りにくくなっている。権力に都合の悪い企画を出すと、『免許事業なんで』と逃げられてしまう。公共的であることが、表現の自由を狭めている。根本的な考え方を変えていかないと、表現の場が失われてしまう」(是枝氏)
さらに、83歳になる、元共同通信記者であるジャーナリストの原寿雄氏は、「満州事変をきっかけに日本のマスコミは足並みを揃え、軍部に協力し、戦争を煽った。私はどうも満州事件の2〜3年前くらいの状況に近いものを感じる」と発言。
中東の紛争地帯やチェルノブイリの取材で知られる広河氏は「表現の自由、言論の自由は、人々の知る権利に基づくもの。この知る権利とは、人間の生存権、人間らしく生きる権利に基づいている。だから、作品を発表する場、メディアは外圧に対して不可侵なものでなくてはならない。政治家は人々の知る権利を守るのが仕事のはず」と訴えた。
立教大学社会学部教授・服部孝章氏の「稲田朋美議員は『上映中止までは求めていなかった』と言っているが、言論の自由・表現の自由は行動で示さなくては意味がない」という言葉も、印象に残った。
発言者の中で、ひときわ異彩を放ったのは新右翼の論客・鈴木氏。
「すべては、僕の責任です。右翼活動を40年やってきて、まったく無力だった。僕を殴ってください。上映中止と聞いて、悔しくて涙が出ました。僕が悪いのと同時に、みんな少しずつ悪い。右翼は純粋だから週刊誌に『反日映画』と書かれれば、素直に信じてしまうんです。彼らには街宣しか発言の場がない。上映を止めた映画館がだらしないと言うのはかわいそう。右翼は怖いですよ。それから守ってあげるのがマスコミです。芸能人を追っかける余力があるなら、映画館で待機して、街宣車が来たらマイクを突き付ければいいんです。信念がある右翼なら喜んで話すし、ただの嫌がらせに来ているのなら帰っていきます。百歩譲って、『靖国』が反日映画だとしたら、そんな映画に対して助成金を出していることは日本の寛容さを示していること。日本の誇りだし、愛国心が持てることですよ」
この日の会見は報道陣が大挙詰め掛け、5月の公開に向けて大きな弾みになるかと思われたが、会見終了直後にCS放送「日本文化チャンネル桜」の水島総社長が、「ポスターとチラシに使われている自衛官は、商業映画の宣材に自分が使われていることを了承していない。肖像権を侵害している」など異議を唱える一幕があった。また、4月11日には靖国神社側が、『靖国』に対して「事実を誤認させるような映像等が含まれている」とホームページ上で見解を表明。同月18日には、右翼による『靖国』試写および会見が行なわれる予定で、右翼側の言動も注目される。
映画『靖国』が無事に一般公開されるのか、まだまだ予断を許さない状況だ。
(長野辰次/写真©2007 Dragon Films Inc. Beijing Film Academy’s Youth Studio Beijing Zhongkun Film Inc)
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まず口火を切ったのは、『靖国』を高く評価している田原氏。
「上映を取り止めた映画館が悪いという声もあるが、映画館は悪くない。親会社のさらに上の親会社の役員たちが『波風立つから、やめろ』と決めたんです。会社名は言うなと言われているので伏せるが、みなさんの知っている会社です。映画館を責めるのではなく、日本の構造的な問題を考えなくちゃいけない」
漫画家の石坂氏、映画監督の是枝氏は表現者の立場から発言。
「10年前はギリギリできていたのに、南京虐殺、従軍慰安婦問題、集団自決問題など、今は漫画として雑誌に掲載できなくなっている。10年前には私たちが見ることができた写真や映像、言葉が次々と消えているんです。海外で上映された『靖国』が、日本で観ることができないのは由々しき問題。国会議員もプロなら、自分たちの発言がどれだけ社会的影響力を持つのか自覚してほしい」(石坂氏)
「こういう集まりに参加するのは初めて。内容が偏っていると言われているが、もし偏っていても、それは上映後に起きるべきリアクション。上映後なら、どんなリアクションが起きてもいい。そこで多様な意見を交換し合い、“靖国”について理解を深めればいい。テレビの仕事もしているが、テレビでは非常に企画が通りにくくなっている。権力に都合の悪い企画を出すと、『免許事業なんで』と逃げられてしまう。公共的であることが、表現の自由を狭めている。根本的な考え方を変えていかないと、表現の場が失われてしまう」(是枝氏)
さらに、83歳になる、元共同通信記者であるジャーナリストの原寿雄氏は、「満州事変をきっかけに日本のマスコミは足並みを揃え、軍部に協力し、戦争を煽った。私はどうも満州事件の2〜3年前くらいの状況に近いものを感じる」と発言。
中東の紛争地帯やチェルノブイリの取材で知られる広河氏は「表現の自由、言論の自由は、人々の知る権利に基づくもの。この知る権利とは、人間の生存権、人間らしく生きる権利に基づいている。だから、作品を発表する場、メディアは外圧に対して不可侵なものでなくてはならない。政治家は人々の知る権利を守るのが仕事のはず」と訴えた。
立教大学社会学部教授・服部孝章氏の「稲田朋美議員は『上映中止までは求めていなかった』と言っているが、言論の自由・表現の自由は行動で示さなくては意味がない」という言葉も、印象に残った。
発言者の中で、ひときわ異彩を放ったのは新右翼の論客・鈴木氏。
「すべては、僕の責任です。右翼活動を40年やってきて、まったく無力だった。僕を殴ってください。上映中止と聞いて、悔しくて涙が出ました。僕が悪いのと同時に、みんな少しずつ悪い。右翼は純粋だから週刊誌に『反日映画』と書かれれば、素直に信じてしまうんです。彼らには街宣しか発言の場がない。上映を止めた映画館がだらしないと言うのはかわいそう。右翼は怖いですよ。それから守ってあげるのがマスコミです。芸能人を追っかける余力があるなら、映画館で待機して、街宣車が来たらマイクを突き付ければいいんです。信念がある右翼なら喜んで話すし、ただの嫌がらせに来ているのなら帰っていきます。百歩譲って、『靖国』が反日映画だとしたら、そんな映画に対して助成金を出していることは日本の寛容さを示していること。日本の誇りだし、愛国心が持てることですよ」
この日の会見は報道陣が大挙詰め掛け、5月の公開に向けて大きな弾みになるかと思われたが、会見終了直後にCS放送「日本文化チャンネル桜」の水島総社長が、「ポスターとチラシに使われている自衛官は、商業映画の宣材に自分が使われていることを了承していない。肖像権を侵害している」など異議を唱える一幕があった。また、4月11日には靖国神社側が、『靖国』に対して「事実を誤認させるような映像等が含まれている」とホームページ上で見解を表明。同月18日には、右翼による『靖国』試写および会見が行なわれる予定で、右翼側の言動も注目される。
映画『靖国』が無事に一般公開されるのか、まだまだ予断を許さない状況だ。
(長野辰次/写真©2007 Dragon Films Inc. Beijing Film Academy’s Youth Studio Beijing Zhongkun Film Inc)
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