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坪井慶介 「笑顔に隠された決意」

坪井慶介 「笑顔に隠された決意」

文●島崎英純
写真●足立雅史

これでレッズに全力投球できる。もう逃げられないですからね。

「浦和レッズマガジン4月号(3月12日発売)より」

 昨季は日本代表での境遇に思い悩み、クラブでもパフォーマンスを落とした。その悔恨の念は大きな悩みとなり、坪井慶介の心を揺れ動かした。
 そんな中、普段は本心を胸の奥に眠らせる男が心のふたを取り払い、下した決断─。
 生え抜きの快足DFは、レッズに全身全霊を注ぐ覚悟で新たな一歩を踏み出した。


 優しげな顔の裏には鉄の意志がある。

 2月9日、2010年のW杯南アフリカ大会出場を目指すアジア3次予選がスタート。日本代表は埼玉スタジアムでタイ代表と対戦し、4─1で勝利を果たした。その試合前、坪井は日本代表の指揮官である岡田武史監督に代表引退の意思を告げていた。
「去年はあまりストレスを表に出すもんじゃないなと思っていた。個人的なことだからね。でも今年になって、代表で試合に出られないという思いが大きくなってしまった」

 昨年8月、ベトナム・ハノイで開催されたアジアカップ。坪井は試合出場がかなわず常にベンチを温め続けた。しかし練習や試合中の彼は、その忸怩(じくじ)たる思いを一切表に出さずに裏方に徹した。ある選手は「控え選手のサポートがあったから、チームの雰囲気が良かった」と語ったが、それは坪井を含めた控え選手が、本心を奥底に封じ込めた結果である。

 浦和レッズの先達、福田正博コーチは現役引退後に選手生活を振り返ってこう語ったことがある。

「おれ、選手時代の最後の方まで、控え選手たちの気持ちなんて分からなかった。常に試合に出ていたし、それが当たり前だったから。でも30歳を過ぎてベンチに回されることが多くなって、ようやく控えの選手が感じていた気持ちを共有することができるようになったんだ」

 坪井は代表での失意を引きずり、「サッカーから離れたくなった」と言う。その心の揺れ動きは当然所属チームでのパフォーマンスにも波及した。彼は昨年、けがや累積警告などの理由ではなく、純粋に先発をはく奪されてホルガー・オジェック監督からベンチ行きを命ぜられたことがあった。それは02年に福岡大からレッズへ加入して以降、坪井が味わった初めての屈辱だった。当時、彼はこう述べている。

「頑張んなきゃね。レッズでもライバルが多いから。うかうかしていたら、ホリ(堀之内聖)や阿部ちゃんに負けちゃうからね」冗談めかして話したが、実は本心だった。

 2月のグアムキャンプ。坪井は底抜けに明るい表情で語りかけてきた。「浦和レッズの坪井慶介でーす」

 そしてこう言葉をつなげる。

「代表のこと、ついに言っちゃった。でも後悔してないですよ。スッキリしたもん。これでレッズに全力投球できる。もう逃げられないですからね。気力? 充実してるよ」

 坪井は自身を決して美化しない。サッカーを下手だと思っている。だからこそ努力が必要だとも認識している。しかし、その内面には彼の中で明確に線引きした、譲れないプライドも備わっている。
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