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タイガー完敗。「子供」が「大人」を凌駕した!〜〜マスターズ最終日

舩越園子の生ゴルUSA

今年のマスターズは、まるでタイガー・ウッズが年を取って見えるような展開だった。優勝をもぎ取ったのは南ア出身の28歳、トレバー・イメルマン。そのイメルマンとともに最終日最終組を回り、必死の戦いの末、終盤に崩れて3位タイに甘んじたのは27歳のブレント・スネデカー。イメルマンとの6打差を縮めて大逆転優勝が期待された32歳のタイガーは、結果的には3打差の単独2位に落ち着いたけれど、タイガーがチャージをかけた感はまったくない。そんな展開を振り返ると、米プロゴルフ界には着実に世代交代が起こりつつあるといえるだろう。

タイガーと優勝争いをしたら、あるいはタイガーが猛追をかけてきたら、他の選手は必ずビビって崩れるという時代は、もはや過ぎ去った。ゴルフが世界的に盛んになった昨今、幼いころからゴルフを始め、優れたジュニア教育を受け、アマチュアのビッグ大会に出場したり、若いころから世界各地を転戦したりという経験を抱くヤング世代は、度胸が据わっているし、試合で戦うという意味での経験値が高い。イメルマンもスネデカーも、アマチュア時代に全米アマチュアパブリックリンクスで優勝しており、その資格でアマチュア時代にマスターズを経験している。さらに、最近の若い世代は近代設備を駆使して「学ぶ」ことが可能な時代を生きており、イメルマンが1984年以降の全メジャーのビデオを所有して研究を重ねてきたことは、まさに若い世代ならではの学び方だ。

そもそも、イメルマンが最終日にプレッシャーから崩れることは、おそらくないだろうと予想していた。なぜなら、彼は06年のウエスタンオープンでタイガーの追撃をかわし、優勝した経験をすでに持っていたからだ。「相手がタイガーだからって怖がることはない」と心底思えるかどうかは、サンデーアフタヌーンで優勝を争う選手にとっては、きわめて重要な要素だったと思う。

もう1つ、イメルマンの強さを最終ラウンド開始前から感じ取っていた理由は、彼が病からカンバックした状態であったこと。昨年のマスターズで吐き気や下痢が発症し、なんとか4日間を戦ったものの、体調は原因不明のまま悪化を繰り返し、肋骨下に腫瘍が発見されて年末に手術を受けた。がんではないかと疑われたほどの病気だった。一度でも命の危険を感じた人間が、命を救われ、生き延びたとき、その心境や精神力はガラリと変わる。新たな命を授かり、生まれ変わったような気分で今年のマスターズを迎えたイメルマンは、だからこそ、たとえミスショットしたって死ぬわけではないと思うことで、我慢と集中力を人一倍発揮することができたのだろう。

一方、タイガーの不振は、イメルマンとは正反対で、勢いや結果を求めすぎたがゆえに我慢と集中力を欠いた。昨年から今年にかけて米ツアー出場5連勝、通算64勝とノリにノッていたタイガー。今年こそ年間グランドスラムを達成してほしいとの期待をかけられ、タイガー自身は「すでにタイガースラムをやってるんだから、それでいいだろう?」とかわしたものの、やっぱり王者も人間だ。グランドスラムも気になるし、メジャー14勝目も気になる。3年ぶり5度目のグリーンジャケットも欲しい。ノリノリ状態の勢いのまま、勝利を意識したタイガーは、悪天候になってコンディションがタフになることばかりを望み、そうなったとき自分ならパワーで他選手たちをねじ伏せることができると踏んでいた。そんな欲と過信が邪魔をして、一番大切なパットのタッチとフィーリングを最後までつかめず、勢いを失ってしまった。

病身から生まれ変わり、新たな人生とキャリアを踏み出した若者イメルマンを前にして、数々の栄光とノリノリ状態のまま走り抜こうとしたタイガーが敗れ去った。実年齢差は、たった4つしかない。だが、世界のゴルフ界におけるポジションや戦績、ツアー歴などを考慮すれば、タイガーとイメルマンは、いわば大人と子供だ。しかし、その「子供」が「大人」を凌駕した――今年のマスターズは、そんな世代交代劇で幕を閉じた。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)

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