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極端な偏食人間が深く静かに増殖中
若者を中心に魚離れが加速しているという。焼き魚は食べるのが面倒くさい、小骨がうざったい、おいしくない、生臭い……理由はそれぞれだが確実に魚の消費量は減っている。もちろん若者が敬遠するのは魚ばかりではない。肉、野菜、豆腐などの加工品、それにコメも食べたがらない。なんでも好き嫌いなく食べなくてはいけない、と教え込まれてきたのはもはや時代遅れなのか。日本人の偏食の実態を取材してみた。
ある月刊誌のフリー記者、前田陽子さん(30歳・仮名)は、子どものころから偏食が激しく、魚介類はほとんど食べたことがなく、肉類も食べられるのは牛肉だけ。野菜もピーマンやニンジン、アスパラなどは大嫌い。
「牛肉以外の肉や魚介類は子どものころから大嫌いでした。というかほとんど食べた記憶がないんです。一種の食わず嫌いかもしれません。大人になってからいろいろ食べなきゃいけないと思って挑戦するんですけどダメ。全然食べられない。いつだったか取材でカキフライを食べなくちゃいけなくて、無理して食べたんですけど全然喉を通らなくて、すごく辛い体験でした。カキフライの、噛んだ瞬間の『グニュッ』という感触がダメですね」。
事務機メーカーの営業マン、石田大介さん(28歳)も極端な偏食家だ。朝食べるのはコーヒーとあんパン、昼は立ち食いそば屋できつねそば、夜は牛丼という生活をもう10年近く続けている。「僕の場合、基本的にこれ以外のものは食べたくないんです。別に飽きることもないし、おなかが空くわけでもないし。たまにコンビニで野菜サラダを買って食べますけどそれも月に1回ぐらい。魚はもともと食べないから買いません」
石田さんは小学生のころは何でも好き嫌いなく食べたという。給食も残らず食べた。それがなぜ大人になって食べられなくなってしまったのか。もちろん本人にも原因は思い当たらない。「僕は子どものころから嗅覚が鋭かったので、そのせいかもしれないですね。特に生臭いものは全部ダメ。魚を食べる人の気が知れません。仕事が終わって同僚と一杯やるのは嫌いじゃないんですけど、酒のつまみや料理のことを考えるとついつい面倒くさくなって誘いを断っちゃいます」と石田さん。
人はなぜ偏食をするのか。理由はさまざまだが、親の食生活が子どもに影響するという説がある。たとえば野菜が嫌いな両親に育てられた場合、日々の食卓に野菜料理が乗る割合は当然低くなり、その子どもも野菜が嫌いになる。それが補うのが学校給食だが、最近は学校の先生自身にも偏食が多く、たとえばピーマンを料理から一つ一つつまみ出す、おいしくないからと、牛乳は絶対に飲まない先生もいるという。
専業主婦の小川奈緒さん(仮名・33歳)は小学校に通う二人の子どもを持つ母親。子どもたちは二人とも、かなりの偏食だという。「野菜はほとんど食べないし、魚もだめ。喜んで食べるのは肉料理とお菓子だけ」と一応は困惑した表情だが、よくよく聞いてみると奈緒さん自身、野菜や魚が好きではない。だから彼女の好みがそのまんま子どもたちの好みとなっている。
母親として、子どもたちの偏食は心配じゃないんですか? と、聞いてみると「ふだんの食事で足りない栄養とかビタミンは、学校の給食で補えばいいし、サプリメントとかもたくさん出てるから、子どもたちにはそれを与えればいいと思ってます。嫌いなものを無理やり食べさせるのはストレスになってかわいそう」……と、いうようなコメントが返ってきた。
大リーグ、シアトルマリナーズのイチロー選手は若いころから偏食で知られている。今でもその傾向はあって、毎日朝昼兼用のブランチは毎日、弓子夫人手作りのカレーライス。アメリカに渡って7年、毎日食べていても飽きないという。もちろん野球の試合が終わったあとの食事はカレーではないだろうが、栄養の偏りとかはないのか、それが心配だ。またこのエピソードが一般的になり、子どもたちが「だってイチローだってそうだもん」と言い出すのではないかと、そちらのほうも心配だ。
OLの佐伯利香さん(27歳)は、朝昼夜の三食、毎日トリのから揚げでもいいという。「以前は肉、野菜、魚介類いろんなものを食べてたんですが、今はあまりいろいろ食べなくなりましたね。誤解のないように言っておきますけど、私はトリのから揚げしか食べないわけじゃなくて、ごはんとかパンも食べるようにしてます。ただ、から揚げはほぼ毎日食べてるというだけです。私の主食かな」
油で揚げたものをほとんど毎日食べ続けるのはどうだろうか。栄養士の勝沼とし子さんは「毎日から揚げだけ……というのは問題ですね。これを続けていると心臓病や糖尿病、肥満など成人病の温床となります。トリ肉自体は問題ありませんので、煮る、焼く、蒸す、炒める……いろんな調理法で試してみてはいかがですか。それと栄養バランスも考えて、脂肪やタンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどもきちんと食べなくてはなりません」と言う。
偏食についていろいろな人に取材をしたが、「えっ」と思うような人は少なくない。朝と夜はお茶漬け、昼はマクドナルドのハンバーガーしか食べないという、30歳のサラリーマン、穀類と野菜しか食べないという本格ベジタリアンの女性美容師、1日にバナナを5本以上食べないと元気が出ない主婦……。
ある調査によると、アルツハイマー病の原因として、偏食も大きな原因とされているそうだ。たとえば肉類が好きでブロッコリーやニンジン、ほうれん草などの緑黄色野菜や魚はあまり食べない人は要注意。そのほかアルコールはグラス3杯、バナナは1日3分の1本までなら発病リスクは低くなるという。
いずれにしても、昔の日本人は、これほど偏食が多くはなかったような気がする。飽食の時代、あまりにも満たされたことにより、食生活が歪められているのかもしれない。噂には聞いていたが、日本は想像以上の偏食大国である事実。現在、偏食の子どもたちが将来子育てをする頃、日本はどうなっているのだろうか。(XIXOX/中林晃子)
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