「政治のツケを、国民のみなさんに回す結果となったことについて、心からお詫び申し上げます」

 3月31日、福田首相は記者会見に臨み、揮発油税を主とした税制改正法案の年度内成立に至らなかったことについて謝罪した。

 その会見の中で、さらに福田首相は、「街のガソリンスタンドでは、大きな混乱が懸念されますし、その他にも、国、地方の議会では予算に大きな穴が生じます」と述べ、今後、起こり得る「混乱」を憂いた。

 だが、果たして、それは杞憂に過ぎなかったようだ。

 翌4月1日から、ガソリンスタンドに並びはじめたドライバーたちの顔は、どれもが嬉々としている。レギュラーで一リッターあたり約25円、実質上の「値下げ」となればそれも当然のことだろう。

 ではいったい福田首相は、誰に対して詫びていたのだろうか。

 ガソリン暫定税率が廃止されて困るのは、政府・自民党、地方議会、首長、および役人、そして石油関連業界に従事する者だけである。つまり、首相の憂いた「混乱」とはそうした特定の国民を対象とした言葉なのだ。

 約1億3千万人の日本国民の大半は、今回の「値下げ」を率直に喜んでいる。17年間ものサラリーマン生活を経験した政治家にしては、世論の感覚からずいぶんと遊離してはいないだろうか。だが、思い返せばそれも無理もない。なにしろ福田首相がかつて働いていた企業とは「丸善石油」なのだから……。

 さて、その福田首相の無感覚ぶりは措くとして、注目すべきは謝罪会見の3日前、3月27日の緊急記者会見の内容だ。

 その会見の中で福田首相は、2009年度予算からの道路特定財源の一般財源化を約束し、10年で59兆円の道路建設費を謳う道路中期計画を5年に半減させると宣言したのだ。首相の意外な「新提案」は、自民党道路族のみならず、マスコミをも驚かせたようだ。


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