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To Be or Not to Be - 書評 - 限界自治夕張検証

梧桐書院代表取締役能登様より献本御礼。



404 Blog Not Found:日本はヤバくても、東京はヤバくないかも
夕張市の赤字は360億円。これを住民数12,203人で割ると、295万円になる。無理矢理夕張市を再建するより、移住支援をした方が安上がりに思えるのは私だけだろうか。

読了後、この考えがますます正しいように思えるようになった。



本書「限界自治夕張検証」は、副題に「女性記者が追った600日」とあるように、読売新聞の酒井麻理子記者が、夕張市の財政再建団体の転落から、支社開設、そして今年1月1日付けで同記者が札幌に転勤になるまでの動きを、過去の夕張市の状況を振り返りながら追った軌跡を一冊にまとめたものである。

目次 - 限界自治 夕張検証−梧桐書院にないので手入力
刊行によせて さらなる「夕張報道」に取り組む
読売新聞北海道支社長 浅海保
序章 抜かれから始まった
第一章 ついに財政再建団体へ
第二章 破綻の構図
第三章 再生へのもがき
夕張に「春」が訪れるまで
37人に聞いた18年後の夕張
あとがき
夕張市年表
本題でないので手身近に書くが、まず読売新聞という会社にあきれた。

あとがき p. 131
1部と3部のドキュメントは、ほとんどを酒井記者が新たに書き下ろした。2部は、支社編集部、東京本社地方部、社会部なども参加して連載した記事を主体にした。
にも関わらず、酒井記者の名前は著者欄はおろか、写真のキャプションを除けばここではじめて登場するのだ。せめて目次に章ごとの執筆者を書くべきではないのか。本書に限らず、読売新聞の記者が書いた本にはこの手の没個人化が多いのは一読者として極めて不快である。

ただし、夕張問題の書としては、現時点において最も包括的な一冊であることもまた事実だと思われる。なにしろ読売新聞は、この問題を取材するためにかつて閉鎖していた夕張支局を復活させたのだ。この支局復活のエピソードもまた、夕張市の変遷を色濃く反映していて実に読み応えがあった。

それでは、夕張市はなぜこんな風になってしまったのだろうか?

借金に関しては主犯ははっきりしている。中田鉄治元市長の放漫経営である。「ヤミ起債」までしてためた債務、632億円。うち地方債残高を除いた360億円を18年で返済するというのが財政再建計画である。

しかし、この事件は主犯だけで成立したものではない。24年にもわたって彼を市長に選出しつづけた市民も共犯者なら、中田の放漫経営を知りながら放置した道も共犯者なら、それを見過ごした国も共犯者である。

しかし、ここで重要なのは犯人探しではない。仮にそうだとしても「主犯」はすでに故人である。より重要なのは、市民をどうするか、のはずなのである。市民は主犯を公選したという意味では共犯者であるが、財務に関してはむしろ詐欺の被害者であることは本書を読めばよくわかる。

にも関わらず、財政再建計画はあたかも市民の罪を罰しているかのごとくである。その詳細は本書をお読み頂くとして、財政再建計画には市民が懲役18年の刑を命じられたような圧迫感がある。ところが、市民は別に刑務所に閉じ込められているわけではない。転居の自由はもちろんある。実際財政再建計画発動後の1年で、900人以上がそうした。そのまま行くと、夕張市は財政再建計画完了予定の2024年を待たずして無人になる。ところが、財政再建計画では、終了後の人口を7000人と見積もっている。市民に厳しいくせに、市民の地元に残ろうという気持ちに甘えているとしかいいようがない。

それでは、夕張市はどうすべきだったのだろうか?

本書には、まさにその夕張市の「中の夕張市」である、「大夕張」の事例も紹介されている。

P.133
今でこそ同じ夕張市だが、大夕張・南部地域とそれ以外では、異なる企業の城下町として別々の文化をはぐくんだのだ。
この大夕張は三菱が、それ以外では三井系の北炭が炭坑を経営していたのだが、炭坑が駄目になったときの両社の対応は両極端であった。

P. 134
撤退の仕方も違った。北炭が倒産して借金を踏み倒して出て行ったのに対し、三菱は計画的な撤退だった。三菱は、閉山にあたり、希望者全員の雇用先を確保しただけではなく、市に10億円を寄付した。
そう。会社に解散があるように、街が解散したっていいのである。この時夕張市がそうしていたら、傷はずっと浅くて済んだのだ。しかし、市民が選んだのは、「炭坑を観光に」をスローガンにした中田であった。あまり上品なたとえではないが、とーちゃんに先立たれたかーちゃんが、よりによってヒモと再婚したようなものである。

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