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内海孚インタビュー「『強いドル』信認で協調介入へ」


 プラザ合意、中南米危機、日米構造協議に際し、日本側交渉代表者を務めた大物財務官が、国際的ネットワークを背景にした情報力で予見する。

 この数年間は、金利相場といっていいほど、為替は金利に左右された。インフレ抑制こそ中央銀行の存在意義であると明言する欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を現在の3%台より下げることを視野に入れておらず、できれば上げたいが金融市場の混乱に配慮し、とどめているというスタンスだ。一方、米国のそれは急激に下げられており、相対的なドル安の流れとなっている。

 もう少々長いレンジで見ると、米国の経常収支の赤字が継続しているという構造的問題も影響している。

 ただし、今回の急激なドル安の理由をそれだけで説明するのは難しい。ある“イベント”に反応して投機的な資金が動き、市場が変化したのだ。

 2月末、FRBのバーナンキ議長が議会証言のなかの質疑応答で、「ドル下落は貿易赤字縮小につながる前向きな動き」とのドル安を歓迎するかのような発言を行なったことで、一気にドルが売られた。米国のドルの信認に対する疑念が生じたのだ。

 クリントン政権の後期、ルービン財務長官は「強いドルは米国の国益」と明示し、協調介入まで行なって、それを立証した。ところが、ブッシュ政権の歴代財務長官は、マーケット・ファンダメンタリスト(市場原理主義者)とでもいうのか、介入には手を染めない、強いドルは市場が決めるもの、との姿勢を貫いてきた。

 こうした状況下、バーナンキを含むFRBの幹部が、ドルの下落を懸念している、と伝え聞いていた。それなのに、FRBは放置するのか、という市場心理が生まれる。

 それをどう立て直すか。まずはドルの信認が大事との米国の真剣な態度を示さない限り、この投機的なドル売りの動きは沈静化しない。弱いドルのために、商品価格は上がり、株安、債券安を加速させている。

 トリシエECB総裁は発言のなかで、「強いドルは米国にとって重要である」というシグナルを送っており、ブッシュ大統領自らも、強いドルが必要だと強調し始めている。

 今こそ、米国とユーロ圏の協調介入が行なわれるときにきている。投機的なドルショート(売り)、ユーロロング(買い)の先物のポジションに対して、米国はドル安を望んでいないことを行動で示すことは予想以上のインパクトがあるだろう。

 円高については、さほどの影響はないだろう。円の適正レートは、日本経済の実力から見て、1ドル110円プラスマイナス5円だと考える。だが、それを超える円高でも、ユーロに対しては円安を維持しており、ユーロ建て輸出も増加しているので、以前ほどのダメージはない。逆にエネルギーや原材料が安く手に入るなど、長期的に見れば輸入のコスト削減につながるメリットもある。(談)


(聞き手:『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)


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