【眼光紙背】ドイツが導入した「セックス税」とは?
2008年03月26日11時00分 / 提供:眼光紙背
門倉貴史の眼光紙背:第26回
現在、日本はセックス関連産業への規制を強化しているが、世界を広く見渡すと、日本とは逆に、セックス関連産業への規制を緩和している国もある。どちらが正しい政策であるかを断定することはできないが、各国の取り組みの状況やその効果を見る限り、ドイツやギリシャ、イタリアなどのようにセックス産業に対する規制を緩和している国のほうが、規制を強化している国よりも、社会的・経済的にうまく機能しているように思える。人間の本能的な欲望を満たすセックス産業への規制を強化すれば、それらの産業がアングラ化してしまって、かえって社会に望ましくない結果を生み出すのではないだろうか。
今回のコラムでは、セックス関連産業への規制緩和が成功した事例としてドイツの規制緩和について紹介したい。
かつてドイツでは売春は違法行為であったが、2002年に合法化された。合法化の目的は、売春が組織犯罪と結びついて、アンダーグラウンド化することを防ぐことが狙いだ。
現在、ベルリンだけでも700の売春宿があり、売春婦支援団体である「HYDRA」の推計によると、ドイツ全体では約40万人の売春婦が働いているという。売春宿で遊ぶ男性の数も多く、あるアンケート調査では、ドイツの成人男性の10%から30%が買春をした経験があると回答している。
売春が合法化されたことによって、売春婦たちは堂々と社会保障を受けられるようになったほか、晴れて労働組合への参加も認められるようになった。売春婦たちは、ドイツの2大労組のひとつである「統一サービス産業労組」に加盟している。
また、売春産業から税を徴収することによって、税収の増加という効果も出てくるようになった。
ドイツでは、世界でもめずらしい「セックス税」が導入されている。この税金は1人1人の売春婦から直接一定額が徴収される仕組みだ。
たとえば、財政難に苦しむケルン市は、2004年からこの税金を導入した。セックス税によって、ケルン市は2005年に79万ユーロ(2005年平均の1ユーロ=137.1円で換算すると約1億831万円)、2006年には82万8000ユーロ(同約1億1352万円)の税収を得た。ケルン市は当初、売春婦1人につき毎月150ユーロ(約2万565円)の支払いを義務付けたが、売春婦たちから一律に150ユーロを徴収するのは不公平だとの抗議が殺到したため、パートタイムで働く売春婦については、活動をした日だけ1日6ユーロ(822.6円)を支払うよう制度変更を実施した。
一般に、セックス産業は、大規模なイベントが開催されて、人の流れが活発になると活況を呈するという特徴がある。
ドイツも同様で、2006年にサッカーのワールドカップがドイツで開催された際には、観戦客の一部が売春宿を訪れたことから、各地の売春産業の売上高が大きく伸びたといわれる。W杯開催直前には、観光客狙いでベルリンやケルン、ドルトムントなどの競技場の近くに、新規の売春宿が多数建設された。
このようにドイツでは売春を合法化したことによって、売春婦の社会的地位の向上、税収の増加といったメリットが生まれている。
プロフィール:
門倉貴史(かどくら・たかし) 1971年生まれ。エコノミスト。BRICs経済研究所代表。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。オフィシャルサイト:門倉貴史のBRICs経済研究所
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。バックナンバー一覧
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